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hakuunの未来ノート

将来のため、人生やビジネスに関して、考えたこと、感じたことを綴ります。

サイバーエージェントと未来工業

2012-10-17 | 企業経営

●サイバーエージェント社長藤田晋氏

アイデアの出す仕組みについて、
日経新聞(2012年10月16日付)に、サイバーエージェントの社長藤田晋氏の記事があった。

アイデアを出すには、アイデアを生む仕組みの整備が必要である。
新たなサービスを次々に生み出すには、多くのアイデアが必要である。
多くの人の頭の中にあるかもしれないが、自然にわいてくるものではない。
社員が知恵を絞り出し、それを新事業につなげる仕組みが、求められている。

その一つの方法が合宿である。
「詰めきりセンター試験」といネーミングで年2回開かれる。
数人を一つのチームとして、1泊2日で宿泊施設に缶詰状態にして行うのである。
一つのテーマに対して、事業案を考えるのである。

そうすると、いくつかの斬新なアイデアが出てくる。
その提案に対しては、経営幹部チームが採点を行い、優秀なアイデアは、事業化を図るのである。
最大のポイントがある。
アイデアは、単純にヒラメキとしては、頭の中からでてこないということである。
訓練が必要である。
試行錯誤を繰り返しながら、「生みの苦しみ」を味わうことでセンスが磨かれる。
iPSの山中先生も言っているが、たくさんの失敗をすることで、いいものが生まれてくる。


●アイデアはスキルである

アイデアや知恵の創出は、スキルと考えると、辻褄が合う。

これを実践しているのが、『未来工業』である。
岐阜県大垣市の近くにある中小企業である。
電機設備資材・給排水設備の製造販売業である。
従業員780名(平成24年3月現在)。全員正社員
売上高284億円(平成24年3月期)
経常利益約26億円

未来工業はユニークな企業として、新聞やメディアに紹介されている。
その一例が、社長がドケチ。
年間休日140日、年末年始19連休、7時間15分勤務、
5年に一度社員海外旅行、社内ホウレンソウ禁止、
携帯電話禁止、定年70才等などである。

私が注目するのは、経営理念である。
未来工業の経営理念は『常に考える』というのである。
この経営理念を見たとき、創業者の山田氏の洞察力はすごい、の一言につきた。

『常に考える』ということが、企業の原点にある。
社員が自主的に考えて、企業を運営している。
経営者は、社員が『常に考える』環境を整えているに他ならない。
多くの休や旅行をすることで、常にリフレッシュを行い、斬新なアイデアが出る下準備をしている。
さらに「提案制度」では1件につき500円ということである。
例えば、食堂のメニュー変更でもOKということである。
封筒を開ける前に500円ということである。
年間9000件のアイデアが集まるということである。
さらに、そこから数多くの特許が生まれ、企業基盤を築いている。

未来工業のこれらの仕組みは、アイデア抽出のためのトレーニングである。
簡単に言えば、『常に考える』ことでアイデアが出やすくなる。

野球で言えば、たくさんの素振りを行い、凡打を繰り返す中で、ヒットが生まれる。
3割打てれば一流打者である。
さらにホームランは、25打席に1本打てば、年間20本打つことができ、大打者である。

リトルリーグから何千回、何万回と素振りを行い、凡打を繰り返していたことが、トレーニングなのである。

野球もゴルフもスキルである。
アイデアも知恵もスキルである。
これらのスキルを向上させる仕組みを創るのが経営者の役目である。

未来工業では、『常に考える』仕組みを、『企業理念』として掲げていることがすばらしい、ことである。


●他社との差別化


この『常に考える』ということが、事業のベースになっている。
未来工業では、顧客先の問題点を改善して、付加価値の高い新製品を提供している。
お客様も自分が困っていることを解決してくれるのであるから、喜ぶし感動もする。
そうすれば、他のメーカーの製品を買うこともないし、いくら高くても未来工業から製品を買うことになる。
その結果が、収益向上となっている。

つまり、従業員の多くは、普段から『常に考える』ことをトレーニングしている。
習慣化され、かなりの高いレベルにいると想像される。
その結果、お客様が悩んでいる課題に対して、様々なアイデアを提供できる能力があるのだと、推察する。

この『常に考える』という社員の能力が、他社との差別化となっていることは言うまでもない。

だから、この絶対的優位である「差別化の源泉」を更なるレベルアップを図るために、上にあげた様々な福利厚生を行っているものと推察する。


『常に考える』

本当に、すばらしい経営理念である。



経営理念とは その2

2012-10-16 | 企業経営

昨日に引き続き、経営理念の要件を記載する。

●効果的経営理念策定に必要な要件

1.策定の視点
経営理念は、
・全てのステークホルダー(利害関係者:消費者(顧客)、従業員、株主、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関など)の利益に資することができること。
・容易に将来の戦略を引き出すことができること。
・策定するプロセスへの参画ができること。
・将来へのシナリオを反映することができること。

2.明確性
経営理念は、
・企業の進むべき方向が明確であること。
・事業の方向性が示されていること。
・リーダーの意思が一貫していること。
・メンバーに明確に伝わるものであること。

3.戦略性
企業理念は、
・容易に戦略が導き出せるようになっていること。
・強み、弱み、機会、脅威が反映されていること。
・競合と差別化に関する独自性を含んでいること。
・進むべき方向性が明確に選択されていること。

4.革新性
経営理念は、
・先進性(技術や新しいマネジメント方法)が含まれていること。
・成長性が含まれていること。

5.魅力性
経営理念は、
・夢があり面白いことがありそうだと、思わせるもの。
・どうしてもやってみたいと、思わせるもの。

6.社会性
経営理念は、
・社会に対して、積極的配慮が含まれていること。
・社会正義にかなう高度な価値を目指しているもの。

7.指針性
経営理念は、
・皆がともに支持できるもの。
・あらゆる業務活動の判断の拠り所となるもの。

8.永続性
経営理念は、
末永く追及の対象として、魅力を保つこと。


●効果的経営理念(ビジョン)の働き

○効果的ビジョンは、
・人を奮い立たせることができもの。
・顧客、サプライヤー、従業員に一緒にやろうと問いかけるもの。
・従業員に「みんなでできるものだ」という信念を植え込んでいくもの。
・市場で納得できるもの。
・独自性があり、競合他社との差別化を図れるもの。
・時間が経過しても、斬新さがあるもの。
・安定であるが、常に挑戦的であること。
・考えられる限界の中で常に変化すること。
・最初に従業員に、次に顧客に力を与えるもの。
・過去に誇りを持ち、将来に対しては、準備であるもの。


●経営理念が企業価値を高める方法(バリュー)


1.経営理念が企業価値を生み時代

経営理念は社会の中で、自社の使命宣言することができ、経営理念は企業の看板である。従業員を始め、顧客、投資家、地域住民、学生等は経営理念を理解することにより、企業のイメージをつくる。
経営理念が顧客を安心させ、好感を持たせる。
学生はこの企業で働きたいと思う。
投資家は、企業の成長を感じる。
経営理念が、企業価値を高める時代である。


2.経営理念が企業の仕組みを統一する

経営理念は、企業の進むべき道を指し示し、事業・業務に滞りにない一気通貫の仕組みにする。企業は経営ビジョンを実現するため、戦略立案、長期計画策定、短期計画、部門計画、目標管理を策定する。部門最適から全体最適へのマネジメントシステムを作り上げる。
経営理念は社員に夢と希望を与え、様々な価値観を持った社員と、ビジョンを共有化することにより、将来の希望をもたせ、奮い立たせる。


3.社員の価値観(バリュー)の統合

価値観とは、ミッション、ビジョンを実現するために、どのような行動をとるべきかを明確に規定する行動規範ということである。
経営トップにとっては、リーダーシップの拠り所となる。
企業の価値観を統一し、何に価値を置いているかを明確に規定し、組織に関わる人々の判断基準を提供する。


4.意思決定が迅速化

経営理念は、全ての意思決定の基準である。問題対応にあたって、経営理念に照らして判断する。
経営理念の策定により、組織の意思決定がブレなくなり、迅速になる。


5.現場社員の自主的行動

人口減少、モノ余り時代でマーケットは縮小し続け、ますます競争が激化する。
これからは、顧客満足、顧客感動を要求される時代である。
顧客満足・顧客感動は、企業の仕組みと現場社員の行動により、実現される。
経営理念が、従業員満足を充足することができれば、顧客の多様な要求に迅速に対応する行動基準となり、現場社員の自主的、積極的行動を生むことができる。



経営理念とは

2012-10-15 | 企業経営
●樹木の栄養素とは

今、「経営理念」について、勉強している。
最近、「『経営理念』とは何か」、よく考えるテーマである。
企業を「樹木」に例えるなら、私が思う「経営理念」とは、「水や栄養素」と考えている。

私が考える樹木は、根が「人材」、幹が「組織」、枝が「顧客」そして花が「収益」である。通常、樹木はそのままでは生きていけないし、成長もしない。
根に水や栄養素がいかないと、次第に樹木は枯れてしまう。
一方、雨が降り地下に浸み込むことで、「水分が栄養素」として、根にとどく。
その結果、幹も太くなり、枝ものび、花も咲く。
そこで、樹木を大きくして花を咲かせる、この栄養素を「企業理念」と考えている。



●中堅ゼネコンの企業理念

中堅ゼネコンの定性的分析を行っている。
どのように行えば、「成果」がでるか、考えてみた。
例えば、「このような考え方により、数値的結果とリンクしている」ということができれば、一つのレポートとして書くことができると考えた。
そこで、最初に浮かんだのが、『決算短信』である。
この『決算短信』は、年度末にでる各社の通信簿である。
今では、四半期ごとにも発表されている。
メインは、財務上のものであり、ほとんどが定量的なものである。
よく見ると、定性的な事柄も書かれており、「定量的なもの」と「定性的なもの」のクロス分析ができないか、と考え始めた。


●決算短信の書式

Wikipediaから「決算短信の書式」を引用する。

1.経営成績

1.経営成績に関する分析
2.財政状態に関する分析
3.利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当
4.事業等のリスク(ただし、マザーズ上場会社は必須)
5.継続企業の前提に関する重要事象等

2.企業集団の状況

3.経営方針

1.会社の経営の基本方針
2.目標とする経営指標
3.中長期的な会社の経営戦略
4.会社の対処すべき課題
5.その他、会社の経営上重要な事項

4.連結財務諸表

1.連結貸借対照表
2.連結損益計算書
3.連結株主資本等変動計算書
4.連結キャッシュ・フロー計算書
5.継続企業の前提に関する注記
6.連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項
7.連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更
8.連結財務諸表に関する注記事項

5.個別財務諸表

1.貸借対照表
2.損益計算書
3.株主資本等変動計算書
4.継続企業の前提に関する注記
5.重要な会計方針
6.重要な会計方針の変更
7.個別財務諸表に関する注記事項
6.その他
(一部省略)

以上、基本はこのような形式になっており、一部においては省略可能となっている。


●決算短信から見える定性的なもの

3.経営方針

1.会社の経営の基本方針
2.目標とする経営指標
3.中長期的な会社の経営戦略
4.会社の対処すべき課題
5.その他、会社の経営上重要な事項

この欄、ほとんどが文章である。
経営方針であるから、企業の経営に対する考え方が記載されている。
各企業の経営理念をはじめ、行動指針、戦略、課題が書かれている。
さらっと流している企業もあれば、丁寧に細かく記載している企業もある。

文字数で比較するのもナンセンスではあるが、
最小は257文字。
最大は2152文字。
8.4倍の差がある。
当然、文字数が多ければ良いというわけではない。
中身で勝負することはわかっている。
だが、この文字数をみるだけでも、どれだけ顧客や投資家に対して情報開示しているかがわかる。

つまり、その企業の顧客や投資家に対する姿勢がわかるということだ。

多くの顧客や投資家は、詳細の情報を望んでいる。
自分の大切なお金を投資するのであるから、相手の素性を知りたいと思うのは当然である。
であるならば、企業も顧客の視点にたてば、数値的結果とともに定性的な情報を開示すべきであろう。

ここで、再度、経営理念について考えてみる。


●経営理念とは

企業理念とは、事業経営に行うにあたって、
「経営の基本的なあり方を表明したもの」である。
「企業の目的は何か」
「何のために経営を行うのか」
「どのような会社を目指すのか」
などを述べたものである。

経営理念は、企業の憲法として、
「全ての意思決定の拠り所」「全ての活動の拠り所」となる。


●経営理念の意義

経営者の「社会に対する責任」と「社員に対する責任」を明らかにするものである。

○企業の社会的責任を明らかにする

経営理念の第一の役割は、「自社の社会における存在意義を明らかにすること」である。
我社はどのような事業で、どのように社会に貢献しようとしているか、を明確にすることである。
企業が世の中に存在するには、「何らかの価値がある」からである。
経営理念は、このことを明らかにして、自ら宣言する、ことである。
すなわち、「社会に対しる経営者の公約」と言える。

○経営者と社員との共通の土俵作り

経営者と社員では、立場が決定的に異なる。
一方は、雇い主であり、他方は、被雇用者である。この立場の異なる両者が、会社という組織の中で一致して働くためには、「共通の土俵」が必要である。
この役割を果たすのが、「経営理念」である。
「経営理念」を設定し、社員と共有すること。
ここから、経営者はリーダーシップを発揮することができるようになる。

続く。

経営理念を考えよう

2012-10-09 | 企業経営
●中小企業への支援

一つの企画がある。
中小企業の経営者を支援しようと思っている。
自分一人では、多くの中小企業経営者を一度に支援することができない。
そこで、公的機関を利用して、支援を考えている。

中小企業庁をはじめ、様々な機関が支援策を講じている。
しかし、その利用率は定かでないが、利用していない企業が多いことも事実である。

例えば、「経営革新計画」を行う場合、自分の懐具合を公表することになる。
たとえ守秘義務があっても、人間の心情として、いなやようだ。
特に、最近の経営状況は芳しくない。


●財務指標

『建設業の財務統計指標(平成22年度決算分析)』という
東日本建設業保証株式会社からのデータを引用する。

東日本管内にある建設業(26,607社)の財務指標の平均値は次の通りである。

総資本経常利益率 :-0.80%
売上高総利益率  :18.23%
売上高一般管理費率:19.74%
売上高営業利益率 :-1.43%
売上高経常利益率 :-1.05%

あくまでもこれは平均値であり、これを上回る企業もあれば、大幅に下回る会社も当然ある。
この数字を見る限り、他の人には公表はしたくないだろう。

これでは、赤字決算となり、税金も納めることはできない。
一説によれば、日本の企業の80%は法人税を納めていないという。


●成長戦略

どこの企業の経営者も、現状を打破して、成長したいと思っているはずである。
どのように現状打破するかは、様々な方法がある。
どの道を選ぶかは、各人の自由である。

一つ言えることはある。
経営は人の集まりである。
人を動かすことをスキルと考えれば、正しいやり方がある。
ゴルフもスキルであるが、正しいグリップ、正しいスタンス、正しいテークバック、正しいフォロースローなど、正しいやり方がある。
将棋であれば、定石である。この定石が正しい打ち方の基本であろう。

同様に、経営も基本があり、正しいやり方がある。

それが、経営革新計画であり、手順がある。

まずは、会社の現状把握である。
次に、会社の将来のあるべき姿を明確にすることである。
これは、企業理念や行動指針にあたる。
特に経営理念は重要である。


●経営理念の要件

経営理念は、
社会に対しては「企業の存在理由」を、
企業内に対しては、「企業の未来の姿・希望」「価値観」を表明するものである。
経営トップや社員の意思決定、リーダーシップの拠り所になるものである。

そのために、経営理念には3つの要件が必要である。
(1)ミッション(使命感)
(2)ビジョン(夢・希望)
(3)バリュー(価値観)


(1)ミッション(使命感)

ミッションとは、「企業が存在する理由」であり、「社会に対する役割は何か」である。
企業の存在は、市場や顧客が判断する。
判断基準は、市場、顧客、社会にとって役立つ付加価値を作り出しているかであり、
成果を上げた企業のみが、存在することができる。
そのために、企業は、ミッションを明らかにしなければならない。

(2)ビジョン(夢・希望)

ビジョンは、企業の将来の姿である。
質的、量的そして対外的、対内的に、企業の将来の姿を明らかにする。
ビジョンの元、経営者は長期計画、短期計画を策定し実行する。
ビジョンは、すべてのステークホルダー、特に従業員に夢や希望を与え、
そこに向けて奮い立たせる。
経営トップのリーダーシップの拠り所となる。
つまり、「錦の旗」ということである。

(3)バリュー(価値観)

企業・組織が何に価値を置いているか、
何を重要視しているか、
何を最優先しなければならないか、
を従業員に周知徹底する必要がある。
価値観は、企業活動の行動基準・判断基準となり、行動価値基準である。


●価値観の変化

近年、企業倫理に関する不祥事が多くみられる。
「利益を上げるためには何をしても良い」と考えるなら、その企業は顧客や社会から見放される。企業の存続さえ不可能となる。
法律を遵守する、環境に配慮するなど、当たり前のことを当たり前にやるだけでなく、より積極的に社会に貢献する姿勢が求められ、企業に対する期待が変わってきていることを認識する必要がある。


●基本に戻ろう

当たり前のことを、当たり前にやること。
顧客に喜ばれ、社会に貢献すること。
このような企業のみだけが、社会から受け入れられる。
「利他の心」で活動する企業は、社会や顧客から評価されるだろう。

すべて、経営者の考え方、心で決まる。

この経営者の考え方、経営者の心が「経営理念」である。



顧客満足度を高める3つの鍵

2012-10-04 | 企業経営
●3つの理念

昨日は、素晴らしい講演を聴くことができた。

瀬戸川礼子先生。

ジャーナリストとして、
2000人以上の経営者から取材活動を行っている方である。

その経験からして、いくつかの共通点があるという。
業績が芳しくない会社は、
「地域が悪い」「業界が悪い」と他人を悪く言っているという。
著書の中でも、倒産した企業の経営者は
「自分が悪かった」と決して言わないそうである。

一方で、成功している会社にも、共通点があるようだ。
そのポイントが、
「顧客満足を高める3つの鍵」である。
・理念の浸透
・理念の表現
・理念の評価
この3つを実現することが、お客様の満足度を高める条件である。


●3つの鍵の特徴

・作るのにお金はかからない
・地域、業種、規模は関係ない
・すぐに作ることができる
・盗まれない
・みんなが喜んでくれる
・仕事とプライベート両方に役立つ
・不変的である

言われることは、もっともなことばかりである。
今回、そのヒントを8社の事例を用いてわかりやすく、かつ具体的に説明してくれた。


●理念の浸透


鍵の一つ目が、『 理念を浸透させること』である。

まずは、企業の目的として、「あるべき姿」を示すことである。
多くの企業において、HPを見ると書かれている。
ポイントは2つめである。
そのあるべき姿に対して、「そこに行くためには、どうやって行くのか」ということである。
「何のためにやっているか?」ということを、子供にわかるように説明できるか、ということである。
「売上を上げてどうするのか?」ということを、社員全員が言えることができるか、ということである。

その事例として

・美容室「オオクシ」のフィロソフィー
・「花の宿 松や」の1日5回の朝礼

さらに、
2つめの鍵「理念を表現する」方法として

・「日本レーザー」の社長の笑顔
・「近代ホーム」のレポートランキング
・「ザ・リッツ・カートン大阪」のFirst Class Card
・ヨリタ歯科クリニック

さらに、さらに、
3つ目の鍵「理念を評価する」方法として

・川越胃腸病院
・日本理化学工業

特に、2000名の経営者からの取材によれば、「理念を評価する」方法を採用している企業は非常に少ないという。

この点は、「川越胃腸病院」の事例を用いて、わかりやすく説明してくれた。


●規範の四原則

「規範の四原則」(田口佳央氏)というものを教えていただいた。

企業理念(あるべき姿、そのための考え方)

企業としての規範(公平性、収益性)

社会の規範(法律、交通ルール)

人間としての規範(道徳)

全ては、「人間としての規範(道徳)」が重要であり、基礎となる、ということである。
江戸時代の武家社会では、道徳を重んじていた。
幼少のことから、人間としての基礎(道徳)を学び、人間形成に努めていたことは周知のごとくである。
しかし、戦後の教育は、「道徳」に対する考え方が変わり、軽んじられている。
その結果、社会でのトラブルなど、すべてにおいて「人間としての規範(道徳)」が出来ていないためと、考えられることが多い。

特に最近の学校のいじめなの原因の一つとして、道徳の欠如が考えられる。
子供たちの若い親(20代、30代、40代)も、人間としての規範(道徳)を教えられていない。
そのため、家で道徳を教えることはないだろう。
道徳心が欠如している親の背中を見て育った子供も、当然道徳心は育っていない。


●最近の若者は・・・

企業として、「企業理念」を徹底することが重要であることは、言うまでもない。
しかし、「砂上の楼閣」である企業が多い。
それは、一番の基礎である「人間としての規範」が出来ていないためである。

そのため、人間としての規範が不十分な社員をどのように育てるか、ということが企業として最大の課題だと思う。
まずは、そのことに経営者が気づくことである。
そこに、気づかず、「最近の若者は・・・」と言い出した点で、その先はない。
気付いていれば、考えが変わる。
若者をいかに育てるか、という視点に立つことができる。
昔のように「俺についてこい」方式では、成果を上げることは難しいだろう。
社員の現状を把握し、「はしご」をかける必要がある。
ワンステップ、ワンステップ登れるように、「はしご」をかけるのである。
相手によっては、ワンステップが50cmもいれば、10cmもいるだろう。
そのように、経営者自らが意識して、教育することで、「企業理念」を実行する社員が育つのである。
それを、実践している企業が、上記の「近代ホーム」である。
経営者の松本氏は、1年間毎日、新入社員とメールを交わし、人生哲学を教えている。
10人いれば、10通りのアドバイスを毎日行うのである。
そうすることで、今までやんちゃだった若者が、一人前となり、立派な社会人となっていくのである。
これは、瀬戸川氏著の「グレート・スモール・カンパニー」に書かれている。

社員育成に困っている経営者や管理職の人にとっては、必読書である。

また、「近代ホーム」は、口コミだけで、2年先までの仕事が詰まっている。
業績を上げたい企業経営者にとっても、必読書である。