恵果阿闍梨のロマンス

　この物語は、弘法大師空海を主人公とした小説の中に書かれていた話です。

　弘法大師が恵果阿闍梨の弟子になり、すべての法を受け継いだ後、恵果は自分の実家の隣の家の老女を訪ねよ。と空海に言います。

　空海はその言いつけをいぶかしげに思いながらも、恵果の実家の隣の家を訪ねます。するとそこの庭に一人の端正な老女が座っています。恵果の弟子であることを老女に告げると老女は

　「恵果は私を思うために出家したのです。」というのです。年若い彼女が嫁いできたときに、隣の家に少年だった恵果がいました。恵果は一目で隣の新妻に惹かれます。当時新妻だった老女も同様でした。二人は道ならぬ恋に苦しみます。そして恵果は出家の道を選んだのです。

　そして空海は思うのです。「なんと羨ましいこと」と

　一人の人を思うために出家するなんて、そこまで思われるなんてすごいことですね。