東京では荏原神社・品川神社・素盞雄神社などで天王祭がおこなわれていますが、その時期が近づいてきました。残念ながら、あまりにも忙しく、今年もなかなかお祭りを見に行くことはできません。
仕事での移動中の車中で「牛頭天王信仰の成立」について、メモをとってきたので、それをまとめてみました。題して『牛頭天王信仰の成立』(仮説)メモ。
(1)古代インド
①牛玉栴檀(ごおうせんだん)古代インドの西ガーツ山脈において、良質の栴檀(ビャクダン)がとれた。これを古代中国人が「牛玉栴檀」と呼んだ。この地域には、古代インド土着の「山の神」が存在していたと思われる。
②ヒンドゥ教における尊牛思想。
(2)古代中国
③盤古(ばんこ)古代中国における創世神で、角がはえていた。
④牛頭馬頭(ごずめず)古代中国仏教における地獄の役人。
⑤牛玉(ごおう)牛の胆嚢にできる結石で長寿の薬と考えられていた。貴重薬。
⑥茅の輪(ちのわ)古代中国における害虫駆除の農民風習。
(3)原始日本
⑦アラハバキ信仰(縄文時代)・・・・亀が岡遺跡など
アラ・・・すばらしい、驚き、聖なる
ハハ・・・ヘビ
キ・・・・巨木
⑧アラハバキ信仰(弥生時代)・・・・出雲大社・諏訪大社など
アラ・・・金属(アラモノ)
ハハ・・・ヘビ
キ・・・・巨木
⑨北方系の「再生(輪廻)思想」と 南方系の「黄泉の国思想」(死者は生き返らない。死者の国にいるだけ)
北方系の「再生(輪廻)思想」は、「蘇民(蘇る民)」観念や「祟り」観念を生んだと思われる。
南方系では「奇形」ひるこは葦の船に流されて捨てられてしまう。「祟り」は起こさない。
(4)古墳時代~奈良時代の日本の荒神
⑩民間土俗の災いをもたらす神。
a.風神 b.雷神 c.疫病神など
⑪アラ神(農業神) →出雲的スサノヲ
砂鉄(赤い色)・・・火の川→「氷川信仰」
⑫アラ神(荒々しい神・すさぶる神)→大和的スサノヲ
⑬牛神(うしかみ)農業の効率化を進める牛への感謝から生まれた、牛の守護神。
⑭角の生えた者への恐怖感から生まれた化け物・悪神伝説。
d,「桃太郎の鬼退治伝説」
e.「仲哀天皇と同士討ちになったチンリンキ伝説」(『風土記』における「牛窓」の記事)
f. 奈良国立博物館蔵「天刑星(てんけいせい)に食われる悪神牛頭天王の絵」
⑮外国から伝わった荒神
g.武荅神(ぶとうのかみ)
h.摩多羅神(またらしん)など
(5)平安時代
「御霊(ごりょう)信仰」
④牛頭馬頭 ⑨「祟り」神 (敗者の恨みも含めて) ⑩民間土俗の荒神(特に、c疫病神)
⑭化け物・悪神 ⑮外国から伝わった荒神などが祀られて、「御霊信仰」が起きた。
⑯「祇園大明神」(ぎおんだいみょうじん)
「神々の集合体」を「大明神」と呼んだが、京都「祇園社」の神々は「祇園大明神」となり、「御霊信仰」の中心となった。
そもそも「祇園」とは『平家物語』の巻頭に登場する「祇園精舎」という仏教の「研修所」から来ている言葉であり、「祇園社」そのものが、多くの神々の集合場所だったと思われる。特に「祇園社」の「祇園社」たる「個性」は、他の「天皇制神道」の神社がその中心として祀らなかった神々、「崇り神」・「荒神」・「疫病神」・外国神といった神々を、軸に祀ったところにあると思われる。
(6)鎌倉時代後半
⑰『備後風土記(逸文)』にて、⑫大和的スサノヲと d.武荅神(ぶとうのかみ) とが習合(合体)。
⑥「茅の輪」の御利益登場。
(7)鎌倉時代末期~南北朝期・・・・・牛頭天王信仰の誕生
⑱『ほき内伝』にて、 ⑭悪神牛頭天王が「正義の味方」になる。
d.武荅神(ぶとうのかみ)と蘇民将来の話が牛頭天王と蘇民将来の物語になる。
③盤古への注目。「角」のはえている者を「偉大」とする考えが見られる。
また、『ほき内伝』には「天皇制神道」の神々は登場していない。「自然信仰」「原始神道」における神「毒蛇」が唯一「蛇毒気神(だどくけのかみ)として登場する。
(8)室町時代~江戸時代前期・・・・・牛頭天王信仰の確立
⑲信濃国分寺の『牛頭天王祭文』(室町時代中期 )・・・・この頃、多くの守護大名・戦国大名が牛頭天王信仰を保護する。(織田氏・北条氏・真田氏など)
⑳京都大学所蔵『祇園牛頭天王御縁起』(江戸時代前期)
反天皇側の化け物e.チンリンキが牛頭天王と「義きょうだい」となる。
⑤牛玉と同じ力を持つと言われる「牛玉宝印」の登場。
(9)江戸時代中期・・・・・牛頭天王信仰の発展
「御師」の活躍:津島天王社・祇園社の「御師」(おし)たちがさかんに全国を回って、自社の宣伝をする。
また、⑬牛神(牛の守護神)と牛頭天王との習合などによって、牛頭天王社が全国の村々にできる。
牛頭天王信仰は、
「原始神道」(ヘビ信仰)・古代の土俗の「荒神」信仰・外国神信仰 ・仏教・陰陽道、神仏習合などをとりいれて、長い時間をかけて成立していった信仰と考えられます。また、それがゆえに、日本の宗教史を語る上で見逃すことのできない信仰でもあると思われます。
仕事での移動中の車中で「牛頭天王信仰の成立」について、メモをとってきたので、それをまとめてみました。題して『牛頭天王信仰の成立』(仮説)メモ。
(1)古代インド
①牛玉栴檀(ごおうせんだん)古代インドの西ガーツ山脈において、良質の栴檀(ビャクダン)がとれた。これを古代中国人が「牛玉栴檀」と呼んだ。この地域には、古代インド土着の「山の神」が存在していたと思われる。
②ヒンドゥ教における尊牛思想。
(2)古代中国
③盤古(ばんこ)古代中国における創世神で、角がはえていた。
④牛頭馬頭(ごずめず)古代中国仏教における地獄の役人。
⑤牛玉(ごおう)牛の胆嚢にできる結石で長寿の薬と考えられていた。貴重薬。
⑥茅の輪(ちのわ)古代中国における害虫駆除の農民風習。
(3)原始日本
⑦アラハバキ信仰(縄文時代)・・・・亀が岡遺跡など
アラ・・・すばらしい、驚き、聖なる
ハハ・・・ヘビ
キ・・・・巨木
⑧アラハバキ信仰(弥生時代)・・・・出雲大社・諏訪大社など
アラ・・・金属(アラモノ)
ハハ・・・ヘビ
キ・・・・巨木
⑨北方系の「再生(輪廻)思想」と 南方系の「黄泉の国思想」(死者は生き返らない。死者の国にいるだけ)
北方系の「再生(輪廻)思想」は、「蘇民(蘇る民)」観念や「祟り」観念を生んだと思われる。
南方系では「奇形」ひるこは葦の船に流されて捨てられてしまう。「祟り」は起こさない。
(4)古墳時代~奈良時代の日本の荒神
⑩民間土俗の災いをもたらす神。
a.風神 b.雷神 c.疫病神など
⑪アラ神(農業神) →出雲的スサノヲ
砂鉄(赤い色)・・・火の川→「氷川信仰」
⑫アラ神(荒々しい神・すさぶる神)→大和的スサノヲ
⑬牛神(うしかみ)農業の効率化を進める牛への感謝から生まれた、牛の守護神。
⑭角の生えた者への恐怖感から生まれた化け物・悪神伝説。
d,「桃太郎の鬼退治伝説」
e.「仲哀天皇と同士討ちになったチンリンキ伝説」(『風土記』における「牛窓」の記事)
f. 奈良国立博物館蔵「天刑星(てんけいせい)に食われる悪神牛頭天王の絵」
⑮外国から伝わった荒神
g.武荅神(ぶとうのかみ)
h.摩多羅神(またらしん)など
(5)平安時代
「御霊(ごりょう)信仰」
④牛頭馬頭 ⑨「祟り」神 (敗者の恨みも含めて) ⑩民間土俗の荒神(特に、c疫病神)
⑭化け物・悪神 ⑮外国から伝わった荒神などが祀られて、「御霊信仰」が起きた。
⑯「祇園大明神」(ぎおんだいみょうじん)
「神々の集合体」を「大明神」と呼んだが、京都「祇園社」の神々は「祇園大明神」となり、「御霊信仰」の中心となった。
そもそも「祇園」とは『平家物語』の巻頭に登場する「祇園精舎」という仏教の「研修所」から来ている言葉であり、「祇園社」そのものが、多くの神々の集合場所だったと思われる。特に「祇園社」の「祇園社」たる「個性」は、他の「天皇制神道」の神社がその中心として祀らなかった神々、「崇り神」・「荒神」・「疫病神」・外国神といった神々を、軸に祀ったところにあると思われる。
(6)鎌倉時代後半
⑰『備後風土記(逸文)』にて、⑫大和的スサノヲと d.武荅神(ぶとうのかみ) とが習合(合体)。
⑥「茅の輪」の御利益登場。
(7)鎌倉時代末期~南北朝期・・・・・牛頭天王信仰の誕生
⑱『ほき内伝』にて、 ⑭悪神牛頭天王が「正義の味方」になる。
d.武荅神(ぶとうのかみ)と蘇民将来の話が牛頭天王と蘇民将来の物語になる。
③盤古への注目。「角」のはえている者を「偉大」とする考えが見られる。
また、『ほき内伝』には「天皇制神道」の神々は登場していない。「自然信仰」「原始神道」における神「毒蛇」が唯一「蛇毒気神(だどくけのかみ)として登場する。
(8)室町時代~江戸時代前期・・・・・牛頭天王信仰の確立
⑲信濃国分寺の『牛頭天王祭文』(室町時代中期 )・・・・この頃、多くの守護大名・戦国大名が牛頭天王信仰を保護する。(織田氏・北条氏・真田氏など)
⑳京都大学所蔵『祇園牛頭天王御縁起』(江戸時代前期)
反天皇側の化け物e.チンリンキが牛頭天王と「義きょうだい」となる。
⑤牛玉と同じ力を持つと言われる「牛玉宝印」の登場。
(9)江戸時代中期・・・・・牛頭天王信仰の発展
「御師」の活躍:津島天王社・祇園社の「御師」(おし)たちがさかんに全国を回って、自社の宣伝をする。
また、⑬牛神(牛の守護神)と牛頭天王との習合などによって、牛頭天王社が全国の村々にできる。
牛頭天王信仰は、
「原始神道」(ヘビ信仰)・古代の土俗の「荒神」信仰・外国神信仰 ・仏教・陰陽道、神仏習合などをとりいれて、長い時間をかけて成立していった信仰と考えられます。また、それがゆえに、日本の宗教史を語る上で見逃すことのできない信仰でもあると思われます。