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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

ラベルは大事

2007-04-25 | フィールドから
・富田くんのブログに、今回のカーネル個体差の解釈に関する批判が掲載されている。遺伝マーカーで行う親子解析(特に種子散布)では、種子散布量だけでなく、定着生存までを含んだ結果を見ているわけなので、解釈に気をつけなければならない、というのは全く同感。ただし、今回の場合には、(セーフサイトの存在とか実生の生存力に依存する)母樹ー実生(稚樹)カーネルを推定しているのではなく、種子散布そのもののカーネルを推定している(はず・・・)。

・つまり、倒木の有無とか質などは考慮した上で、種子散布カーネルそのものを推定しているので、必ずしも富田くんの指摘は当たらないはず・・・。うーむ、本当にそう考えていいものか・・・。結局、元のデータは倒木の有無に依存しているわけで、データ数の限界も考えると、いかに考慮しているとはいえ、結局、倒木の有無や質にかなり引きずられている可能性は否定できない(ような・・・)。個体差というよりは、風当たりみたいなものも含めて、個体+おかれた状況の”複合環境差”とでもいうべきものに相当のバリエーションがある、と捉えたほうがいいのかもしれぬ。いずれにしても、個体差うんぬんを議論するのは、用語の取り扱いも含めて要注意、といえそうだ。



・本日はブナ開芽調査日。まずは古い方の産地試験をチェック。お決まりの場所から写真撮影をする。よく見ると、個体番号が消えかかっていたので、木材チョークで書いたり、落ちてきた枝を整理したり・・・。こうした細かい作業は後々の作業効率を大きく変えるのである。しかし結局、ブナの開芽はまだまだ。しかし、今年は西日本のブナの枝曲がり(雪害?)がかなり目立つ。こうしたことは長期におかないと分からないことである。しかし、今春はそんなにひどい雪はなかった気がするが何でだろう??



・10時半より、再び若手職員2名のサポートをいただきながら、ヤチダモにラベル付け。1つ1つチェックしながらの作業なので、案外進まない。が、一度付けてしまえば、後の作業はうーんと正確(しかも楽)になるはず。これなら、正確なデータが取れそうだ。12時前にきっかりと終わる。予定通り。樹木園では新しい花が咲いている。イチゲの仲間かと思っていたが、調べてもらったところ、やはり「キクザキイチゲ」。なるほど。


スーパーマツ(?)

2007-04-23 | フィールドから
・道立林業試験場の黒丸さんと内山さん、樹木園スタッフとともにグイマツ雑種F1の測定。このグイマツ雑種F1は只者ではなく、スーパー雑種F1である。何がスーパーかというと、成長と通直性ということになのだが、母樹は一般組合わせ能力が高く、自家不和合性が高い2母樹に絞込み、花粉親はカラマツ精英樹(複数、オープン交配)と決められている。戦略としては、極めて単純明快で分かりやすい。この試験地では、父親をDNAマーカーで特定してしまうというおまけ(?)まで付いている。これをやっているのは東大の井出先生の研究室の学生である。



・3班に分かれて測定。植栽時の樹高とその後に伸びた後の樹高を測定。さすが、スーパーというだけあって、70cm近く伸びているものある。普通は移植したら、その年はほとんど伸びないものなんだが・・・。当班では最大が165cm程度。しかし、他の班では2mを超えたものもあるという。おそるべし、スーパーマツ。


 
<写真では65cmに見えるかもしれないが、資源を無駄なく使うために1mは省略されている>

・若手2名に手伝ってもらって、苗畑ヤチダモのラベル付け。今年まで育てて、今秋には収穫し、乾燥重量を測る予定。今年も開芽フェノロジーをきっちりみるので、ラベルは必須である。「1時間以内には終わる」と豪語した割に、昼食までにできたのは135個体程度。総数1100本以上あるのに、これではいつになったら終わるんだ(全く計画が甘かった・・・)。さらに、3cmくらいしか大きくなっていないやつらは、すぐにラベルが取れそうだ。



・樹木園にて昼食後、梶先生から「ブナの葉が今週中に開く予感(?)するから見てね」、というメールを頂いたので、一応チェックに行く。古い方のブナ産地試験地の方は、もうしばらく動かなそうな気配。しかし、温度が一気に上がると危ないから、やはり、1日おき調査は始めるしかなかろう。一方、梶先生が集めたもう一つの産地試験地の集団は個体サイズが小さいせいか、はたまた産地のせいか、かなり芽が膨らみ始めている気もする・・・。うっ、全部やると心に決めたものの大丈夫か・・・!?


・樹木園では福寿草がところどころに咲いている。薄い青はエゾノエンゴサクである。何とも可憐な花をつける。控えめなところがいいのだが、かなり集まらないと目立たない存在である。



・午後から、ようやくペースをつかむことができ、ラベルつくりは一気に進み、700本を超えた。小さい個体の場合、クリップを変形させて固定することでラベル抜けも解消できそう(クリップってこんな使い方もあったんだ・・・)。”振り返るとそこに道がある”って感じはなかなか気持ちがいい。しかし、1本1本にラベルがついていると、いかにも「研究やってるぜ!」みたいな感じがしていいもんだ(実際やっているんだけど・・・)。父性解析が終わってからデータをつき合わすのが楽しみである。



冬眠からの目覚め

2007-04-20 | フィールドから
・早めの受診が効を奏したか、珍しく薬が効いたようで、ずいぶん具合がよくなる。本日は最後の現地検討会ということである。この付近は、天然林択伐が少なく、人工林の間伐が多い。しかし、最近は人工林の間伐も結構な収入になる(3年前とはえらい違い)。となると現金なもので、検討にも力が入る(ような気もする)。

・しばらく車で移動しながら検討した後、スノーシューを持って、モービルで移動。ほとんどのモービルを使用したので、12~13台になったのではなかろうか・・・。エンジンをいっせいにかけると、どこぞの族が集結しているのかっといった風情である。日当たりのせいもあるが、山の中はまだまだ雪が残っている。もうしばらくササの上を自由自在に歩ける期間が残されているようだ。



・この付近は、標高360~400mの低標高なのだが、シラカバ、ウダイカンバ、ダケカンバの3種が入り乱れて生えている、というちょっと変わった場所である。また、標高の割りにはエゾマツやアカエゾマツもそれなりにあり、地質的にも少し変わっているのかもしれない(基本的には溶結凝灰岩とのこと)。

・ストローブマツ造林地があちこちに見られる。ここでは、伐出道に対して斜め方向に3m伐採で6m幅残し、といった列状間伐を行うことに方針が決まる。素人考えでは、伐出道に対して垂直方向に列状間伐を入れたくなってしまうのだが、斜めの方が伐出がスムーズになるとのこと。勉強になる。

・58年生の比較的古いエゾマツ造林地。0.7haという規模であるが、それなりによく育っている。年代からして、おそらく山引き苗を使ったものであろう。ここでも低標高でエゾマツ造林が成功している!こういったエゾマツ造林地はあちこちにあるので、それらを網羅的に調べて成功・失敗の事例をまとめるといいよね、といった話をする。うまくいけば、エゾマツ造林の総説論文が書けるのではなかろうか。北海道では、エゾマツ資源保続に対する気運も盛り上がりつつあり(27日にはエゾマツ研究会という有志の現地検討会も予定されている)、時期的にもいい頃合である。



・カラマツ造林地は、25%の定性間伐をすることになる。最近、カラマツの材価はかなり好調のようだ。それにしても、相変わらず、グイマツ、カラマツ、チョウセンカラマツの見た目の違いがよく分からない。こんなことでは駄目なんだけど、どうも最初の入り方がよくなかったのか、苦手意識があるんだよね。

・今日は、エゾリスに出会った。いつ見てもかわいいやつだ。さらに、後半では熊の足跡も・・・。ついに、彼らも起き出したか・・・。昨日の朝のものらしいが、案外とでかい。爪の跡もくっきりである。と、上空にはオオタカが滑空している姿が・・・。何とも優雅で、皆、検討していることを忘れてうっとりと眺める。山は寝ているようだが、既に春は始まっているのである。そういえば、もうすぐ4月も終わりだ。こーしちゃいられない・・・。



・検討会の最後に、「アカエゾマツの研究を今年もやるので、GW明けに花が咲いているかどうかチェックして、咲いていたら教えてください」、というお願いをする。そろそろ今年くらい豊作が来てもいいくらいタイミングである。こういうときには、いろんな現場に入っているスタッフがいて、色んな情報が集まるので本当にありがたい。花が咲いたら種子を採取しねければ!今年は高所作業車をレンタルすることも考えてみよう。

スギの受難

2007-04-17 | フィールドから
・年休不在だった月曜日に、樹木園スタッフにスギ植栽をしていただいた。ということで、早速、現地確認。針葉樹の場合(カラマツは違うけど)、植えた後に整列しているのを見ると、いつも言い知れぬ感動を覚える。いかにも、素晴らしい成果が期待できそう・・・だ。昨晩はいきなりの雪混じりのみぞれにびっくりしたであろうスギも、本日の穏やかな日和にほっと胸をなでおろしている(たぶん)。



・先にメールで頂いたリストと多少の食い違いがあったものの、そこはうまく処理してくれたようで助かった。さあて、こいつらが育つのか、枯れるのか・・・、いずれにしても、これからの結果が楽しみである。試験地の周りでは、雪どけとともに福寿草が顔を出している。春の気配があちこちに・・・。



・午後も相変わらず、メール書きなど連絡調整に追われる。何をやったのか、全く不明のまま一日終了。なぜか5月初めまでの予定が一杯になっており、危険な予感。5月末の講義準備もそろそろ考えないと・・・。

土いじり後、吉報

2007-04-13 | フィールドから
・森林総研の津村さんたちとの共同研究で、マッピング家系のスギを富良野に植栽する予定。富良野にスギを植えると全滅するかもしれないが、耐寒性や耐雪性に関する遺伝子に迫れるのではないかという期待もある。ということで、本日は植栽位置の決定するための測量など。昨年末から樹木園スタッフが予定地を耕してくれていたので、もはや畑みたいな状態になっている。枝を張り出しているカンバが邪魔だ・・・という見解に達し、邪魔な個体だけ伐採+片付け、にしばしの時間を要する。実にすっきりとなる。



・コンパスを覗いて、植栽位置の外枠を決めたのち、4人でスギ植栽位置に割り箸を立てる。ひとしきり終わったところに、ペリカン便から到着しましたとの連絡が・・・。トラクターで迎えに行く。ダンボールかと思いきや、麻袋らしきものに包まれた苗木達、16包み。意外と巨大。


・午後から苗木仮植。根っこがイマイチで心配になる。大きさもまちまちだ。仮植では、年度末に導入されたユンボが大活躍。これを人力でやっていたら大変だったよ、実際。午後3時前に仮植終了。土いじりをしていると、非常に心が落ち着く。原始の記憶・・・か。



・戻ってくると、共同研究の科研が採択になりました・・・とのメール。「おおっ今年は早いな、自分の科研はどうなっているんだ!、どこで見ればいいんだ?」、と、あたふたチェック。まさしく受験番号を探すのと一緒の感覚。ない、ない・・・と思っていたら、最後の方に「樹木個体群の・・・」というどこかで見たようなタイトルが・・・。「採択」。久しぶりの響き。もう一つの共同研究も採択になり、とっても景気がいい状態。去年はほとんど採択されずにずーんと沈んでいたのだが、採択される時って重なるものなのだろうか。よく考えたら、この後が大変だったりするのだが、今日のところは手放しで喜んでおくか!

空間をめぐる競争

2007-04-12 | フィールドから
・久しぶりに現地調査。ウダイカンバが優占する山火事後に再生した広葉樹二次林(95年生以上?)の試験地において、胸高直径と方位別の樹冠長を調査。収穫調査チームも途中で合流し、大勢でがやがやと・・・。それにしても、天気はいきなり吹雪。相変わらず、フィールドで天気に恵まれない・・・のは、当方がいるからだ!大きなビニール袋の中に野帳を入れて、調査を続行。



・本試験地では既に3度の毎木調査が行われ、最近の2回の調査では斜面上部・下部・左・右の4方向の樹冠長が記録されている。今回の調査結果を、過去の記録と見比べながら書き込んでいく。ここでは、回帰年も短く、比較的強めに伐採を続けているせいか、胸高直径は8年前に比べてずいぶんと大きくなった。もはやメジロカバとは言えないようなサイズの個体もいる(60cmを超える立派なやつも・・・)。

・斜面下部の樹冠長が大きいのは、全体として斜面下方に向かって上長成長しているせいか・・・。それにしても、樹冠というものは円や楕円というよりも、ずいぶんと偏った形をしているものだ。ウダイカンバは他個体と枝が重なると自己間引きするというが、確かに樹冠はほとんど触れ合わず、互いに避けるように接している。イタヤカエデ、ハリギリなど他の広葉樹もあるが、樹冠層は完全にウダイカンバの一人舞台である。樹冠長を過去のデータと比べてみると、3mとか伸びているものもあれば、かえって短くなっている(枝が折れた?)のもいる。



・こうなってくると、「どうやって樹冠長サイズや伸長量が決まるか!?」というのが気になるところだ。プラス要因としては、他個体がいなくて使える空間が広がっていること、成長自体がいいこと、しっかりした下枝が張っていること、などであろう。マイナス要因としては、他個体と触れ合って制限されること、風で折れること、がんしゅ病などの病気で成長阻害が生じることなど、か・・・。サイズ依存的に、大きい個体ほど成長するのか、はたまたある一定のサイズになると、それ以上は大きくなれないよ・・・、などとなるのかはデータをじっくり見てみないとよく分からない。

・隣の個体と樹冠を接しているかどうかもチェックすると、高密度林分と低密度林分ではずいぶんと雰囲気が違う。今回は、どういうデータに整理するのがいいのかね。面積というのはずいぶん難しそうだからとりあえず方位別の長さ、伸長量がどんな分布になっているか見てみるのが良さそう。隣個体の樹冠との接触の有無もデータ化したので、それもじっくりと転がしてみると面白そう。それにしても、たまに外に出ると、色々と頭が活性化されてよい。頭上にも、複雑かつ楽しげな世界は広がっているのであった。

ハクチョウ農法?

2007-04-05 | フィールドから
・ついに福岡出張も終わり。美味しいものがたくさんあって活気もある,つくづくいい街である。空港にて,林木育種センターの面々と再会。つい,からし高菜とゆず胡椒をお土産に勧めてしまう(大きなお世話!?)。例によってまたお土産を買い込む。子供のお土産が完了していると空港のこの時間が気楽だ。

・空港ロビーにて,ヒノキ論文の最終チェック。改めて直された英文を吟味したり・・・と。この段階になると,さすがに,すらすらと読みなおすことができる。Figもテキストの後ろに貼り付けたし,フランス語のアブスト再チェックが返ってきたら,いよいよ投稿である。やっぱり,投稿中の論文がないと,日々のドキドキ感が足りない。

・トドマツ論文の方は,久保さんにお願いしているモデリングが徐々に進行中のようだ(有難い!)。自分たちでは見えていなかった色んな側面が浮き彫りにされてる感じ。いかに自分で解析(らしきもの)をしているときに,切り捨てている情報(本来は切り捨てちゃいけなかったりするのだけれど・・)が多いかということがよく分かる。どのような結果が飛び出してくるか楽しみだ。

・機内では,アカエゾマツ論文に着手。2時間くらいで改訂した文章を読み返してみると,さすが,やっつけ仕事。まるでなっていない。イントロの第二パラグラフはの山岳地帯の針葉樹の遺伝解析におけるlandscape geneticsの効能(?)を述べるつもりなんだけど,これじゃあ伝わらないねえ。ということで,全面改訂。やはり一度レビューしておいた,Oline et al. 2000 EvolutionとRobledo-Arnuncio et al. 2005 J. Biogeographyが役に立つ。

・第三パラグラフはアカエゾマツの歴史的分布変遷を簡単に述べる。まずは,植物遺体の研究から氷河期には本州でも広がっていたこと,花粉化石のデータから北海道でももちろん大きな集団があったが,温暖化にともない大きく縮小して,現在のようなハビタットに押し込められたこと,を言えばいいはずだ。しかし,もう少し文献を揃える必要があるな。五十嵐八重子さんのいくつかの文献(第四紀研究)と植物遺体の文献が必要だということをメモしておこう。

・千歳から札幌までは雪がすっかりなくなったと思っていたら,滝川付近から雲行きが怪しくなる。いつの間にか,吹雪。と,野花南を過ぎた辺りで異様な光景に出会う。白い大きな固まりが田んぼにあちこちと。どう見ても,これは白鳥だよねえ。一瞬,新手のアイガモ農法ならぬ,白鳥農法か・・・と思ったが,よく見ると総勢200羽があちこちに・・・。何を食べているのか,皆さん忙しそう。何とも不思議な光景である。





博多の胃袋

2007-04-04 | フィールドから
・最終日。9時からの林木育種談話会に参加。昼からの世話人をやっているので、何となく遅れられない感じ。ところで、地下鉄は既に七隈線が出来ていて、それなりに複雑になっている。以前との違いに過ぎ去った時間を感じたり・・・。



・談話会では、黒田慶子さんによる抵抗性メカニズムに迫ろうとしている内容がやはり興味深かった。ずいぶん以前からやっておられたとのことで、もっと前に話を聞いておくんだった・・・という思いを抱いた人は多かったのではないだろうか。

・アンデルセンで購入したパンを会場でかじりながら、午後から開催されるバイテク林木育種研究会の準備。挨拶の内容を考えたり、プロジェクターのチェックをしたり・・・。世話人を務めるのは今回で6回目。このじりじりとした時間の過ごし方は毎年のことだけど、ちっとも慣れない。ところでこの研究会、既に内容が「バイテク」ではないような・・・。むしろ午前中の談話会の方がそんな感じで、こちらはどんどん回顧している感じもある。

・今回は、4名の方々に発表を依頼。毎度のことだが、最終日の午後というのは、「人が来てくれるのか」とか「質問が全くでなかったらどうしよう」とか、司会としては心配だらけである。幸い、話題提供者がそれぞれに補完しあうような「いい流れ」を作ってくれて(偶然??)、うまくつながったような気もする。話の内容やテンションもそれぞれで、結構、新鮮な印象だった。育種センターの武津さんの発表では、過去から現在までの広葉樹研究の詳細なレビューがあり、非常に勉強になった。若いのに既存の研究やイベントまでサーベイし、しっかりと練り上げた構成には脱帽である。

・司会をやっていると総合討論が一番怖い。どんどん意見が出ると楽なのだが、今回は間を空けずにどんどん指名してしまうことにした。たぶん、突然指名されるので、会場の人たちは気が抜けなかったかも。ありがたいことに、指名された皆さんは驚きつつもきちんとしたコメントをしていただいて、本当に感謝・・・。何とか無事閉会。毎度のことながら、脱力。

・小打ち上げ後、子供のお土産を探しに、天神のデパート岩田屋へ。今、幼稚園児の人気アニメ、恐竜キング関連グッズなどを購入。最後に例によって地下の食料品売り場へ。かつてのおなじみの売り場だが、相変わらず活気に溢れている。地下1Fと2Fはどちらも食品売り場。博多の胃袋はでかい。


初参加の人々

2007-04-03 | フィールドから
・本日は、朝9時から京都のSさんのカツラ長距離花粉散布の発表。ぎりぎりまでスライドチェック。うむ、後は本番のみ。初めての口頭発表とは思えない落ち着き。最近の学生は大したもんだ。時間的にも申し分なく、練習しただけのことはある。問題の質問だが、想定外のものが多く、こちらもびっくり。総合討論でもいくつか示唆に富む質問やコメントをもらえたのは、興味を持っていただいたということであろう。何はともあれ、最初にしては上出来!

・昨日に引き続き、分子生態と隣の育種のセッションを行ったり来たりで忙しい。途中抜けていたのに総合討論で発言するのも妙だし(といいつつ、勝手な発言してたけど・・・)、何とも中途半端な感じ。分子生態セッションでは、長野県のKさんの発表が面白かった。ブナの移植問題について、葉緑体タイプで天然林と人工林の比較をするというところまでは他の報告と似ているが、多雪地と寡雪地という2つの顕著な環境条件では、局所適応している(であろう)個体群を他方へ移動させると、”枯れ下がる”など目に見えた被害が出ることを示唆する結果。こうした表現型まで含めたデータが引用できる論文になるといいと思う。

・夕方からポスター会場へ。これまた初参加のOさんは・・・と見ると、おお既に誰かに説明している最中。補足説明など、ヘルプに行く。GLMMの説明とか心配だったのだが、なかなか堂々としたもの。2人3人とお客が増えると、当方がいることで、かえって邪魔になっていることに気がつく。ということで、ポスター周りでうろうろしながら、知り合いに挨拶。と同時に、「よかったら、見て行ってくださいよ」と無理やりにポスターへと連れて行く。まるで、客引き。全体的には、好感触だったようで何よりだ。

・6時半から懇親会。「T13セッションの打ち上げ」ということだったのだが、ふたを開けてみると、昆虫や樹病の合同懇親会で立食パーティ。ほとんど話したことがない人ばかり・・・かと思いきや、何人か知り合いもいることが判明。皆さん実に楽しそうで、この世界にはまた独特の強い連帯感があるようだ。懇親会終了後、ホテル前に屋台に吸い寄せられる。キビナゴ(カタクチイワシ)とヤマイモの串焼きを肴にビール。最後に、博多ラーメンを頂いて、本日閉店。

桜と新緑

2007-04-02 | フィールドから
・車窓の風景。わずか4日前に来たばかりの福岡だが、既に桜は満開である。しかし、今回改めて目を惹いたのはクスノキなど常緑広葉樹の新芽である。若草色からえもいわれぬ赤、橙など実に多様である。桜がその儚さに魅力があるとすれば、新緑はその対極にあるとも思える。実に生命力に溢れていて個人的に好きだ(地味だけど)。



・受付を済まし、山梨のNさんとともに森林学会賞受賞講演を聴講。今回の学会賞は、井上真さんのコモンズの協治論と大住克博さんの北上山地の広葉樹林成立と過去の土地利用の話(既に購入済みの本の内容)。また、奨励賞は神戸大の石井弘明さんによる林冠構造と生産性や多様性の関係の話、道立林業試験場の今博計さんによるブナ・マスティングの究極要因における相対的重要性の話、日本大学の吉岡拓如さんによる森林バイオマス資源の話であった。時間の関係で吉岡さんのお話だけは聞くことができなかったのだが、他の皆さんのお話はとても興味深かった。

・中でも、石井さんの林冠構造の話はとりわけ面白かった。彼は、アメリカのワシントン州の林冠研究施設での林冠構造の調査と苫小牧でのクレーンを使った研究を引用しながら、普段あまり気にすることのない林冠における垂直構造を紹介してくれた。彼によると、枝先から下部への垂直方向は、植生の遷移段階になぞらえられるという。

・つまり、頂点の枝は若木できれいな円錐形だが、それから下がるにしたがって成熟していくと成熟個体のように徐々に円錐形が崩れ、力枝付近になると部分的に枯死したりする老熟個体、というわけだ。言われてみれば、そのとおりだが、考えもしなかった。また、空間の複雑さが生物多様性を維持するためのハビタットを提供していること、枯死枝の量からすると炭素固定量は無視できないほど大きいなどという話も興味深かった。

・いよいよ発表本番。T13セッションは、一人15分の時間で説明を行い、それに対して質問を受けるというもの。一人目の発表が終わったところ、ふと自分のポスターを見ると、既に人が来ている。それはいいのだが、既に誰かが説明している!?こんな離れ業をやってしまうのは、もちろんWT(本当(?)はWS・・・)氏である。自分の発表のときにも近い距離から見つめられて、冷や汗ものの異様なプレッシャー。質問に対しても、真っ先に答えてくれたりして、相変わらずの健在ぶりである。

・しかし、森林を歩いてきた人の意見は、なかなか示唆に富むものが多い。どんな厳しい突込みがあるかと思いきや、終始にこやかで、結局、喜んでいただけた(?)ようで・・・。そのほか、T13のセッションでは、ヌルデミミフシというヌルデにアブラムシがつくことによってできる虫えいに、なぜタンニンが含まれているかという研究がとても面白かった。穴を開けるとアブラムシの天敵であるヒラタアブ(?)が入ってきて食われてしまうので、それを防ぐためにアブラムシがヌルデに高濃度タンニンを出させているのではないか、ということを示唆する内容。

・何より、このヌルデミミフシがかつての日本女性のお歯黒の原料となっており、そうした文化の担い手たるアブラムシの多様性を保全するのは大事だという彼女の主張には大いに共感してしまった。当方も、鬢付け油の原材料であるハゼノキ(これまたウルシ科)の品種識別の論文を書いたことがあるので、こうした話はやっぱりロマンがあっていい、と思ってしまう。やはり、文化や人との関わり合いの中でのストーリーを整理してくれていると、ただ単に種多様性が高くなるような森林管理(施業)をしなければいけない、といった主張よりはずいぶんインパクトがある(と思う)。好みの問題かもしれないが、案外、こうしたことは大事な気もする。