一生

人生観と死生観

虎は死して皮を残し

2010-11-28 14:56:17 | 哲学
11月28日 晴れ
 「虎は死して皮を残し、人は・・・」とくれば、少し学のある人なら直ちに「名を残す」と来るだろう。有名なことわざになっているからである。人間この世に生まれてきて、先ず食べるために努力する。人口と就労可能な産業規模は簡単に一致するわけでないから、昔から若いものは一人前になるまで大変苦労したのである。そして何とか食べられるようになり、安定してくると、人は名を残すことに関心を持つ。それは単なる虚栄である場合も多いが、それだけで割り切れない子孫への戒めや、愛情の表現が含まれていることも忘れてはならない。そして内村鑑三が書いているように、家族とか身内同様のサークルを超えた世の中に対して、後世への遺物を残すという志、善意の志、あえて言えば聖なるアンビションもごく稀には存在し、それが世の中を進歩させ、清めることがある。功成り名とげた人は郷里の人たちに莫大な金を寄付したり、学校を建設したりする。ゆとりがあるからやってあげようということでその善意は大変けっこうなことである。少し大きな視点に立つことにすると、アメリカの金持ち、たとえばビル・ゲーツは慈善事業に莫大な寄付をする。大統領は任期が終わりに近付けば、歴史に残る政策や事業を企画したがるという。個人の周りの小さなサークルでなくて人類とその歴史が関心事になるのである。しかしアメリカの大統領ほどの人物になればその失敗のつけは途轍もなく大きい。小ブッシュはイラク戦争を始め、大変な数の死者をイラクにもたらし、またその経済を破壊した。それは地獄に落ちてもやむを得ないほどの犯罪だ。オバマ大統領は今でもその負の遺産に苦しんでいる。それぞれの人の後世への最大遺物は小さくても清い志にあると言うべきだろう。

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