番組
・『梟山伏』
山伏:高野和憲 兄:中村修一 弟:野村野村遼太
・『長光』
すっぱ:野村万之介 田舎者:月崎晴夫 目代:野村万作
・『塗師平六』
塗師平六:野村万作 師匠:野村万之介 妻:野村萬斎
・ 男舞
笛:栗林祐輔 大鼓:柿原弘和 小鼓:森澤勇司
・『二人袴』
聟:野村裕基 舅:石田幸雄 太郎冠者:竹山悠樹 親:野村萬斎
寒い日だった。都心にも雪が降った。44年ぶりとのことだ。開演時間の頃、外は冷たい雨が降っていて見所も定めし寒かろうと思っていたけれど、思いのほか暖かく、半袖でもよいくらいの温度になっていた。少し暑い位だったが能楽堂の配慮が嬉しい。
今回もよく上演される演目や目新しい演目を含め、見どころ満載だった。『梟山伏』は梟の巣に悪さをした男に、梟が取り憑いた狂言。取り憑かれた様を体現してゆくのだけど、声も含めかなり大胆・おおらかに表現していて面白かった。山伏の祈祷は全く効かなかったのだけど物語としてはなにか途中という感じがした。『長光』備前の刀工長光の刀を横取りしようとひと騒ぎする狂言。『茶壷』と似たような展開だが左右小拍子が無かったり目代がせしめると言うのでなく、盗人だというのが見破られていろいろと言い繕うところが面白かった。万之介先生の枯れた演技が良かった。『塗師平六』久々の兄弟親子共演。萬斎先生の妻とか女の演技はいつもいいなと思う。こ日は謡・舞は無かったけど悪女?ぶりを好演してました。後半、幽霊にさせられた平六を演じた万作先生が、能の亡霊の装いで橋懸りから現れお囃子も入ってちょっとした能舞台だった。ひとしきりその亡霊の舞台となるのだけれど、それでこの演目は終わりとなり、ちょっと物足りない感じは残った。『二人袴』裕基君の聟役。裕基君に合った衣装・長袴が若々しくも春らしくて良かった。それにしても短くはない物語の台詞を良く自分の物にしているなと感心した。ベテランの狂言師たちが裕基君を優しく盛りたてているという風で、ほのぼのとした舞台だった。「花の袖」「宇治の晒」「七つ子」だったかな、親子で舞ったのは。面白かった。合間に「男舞」があった。今回の男舞は良かった・・というよりもスゲーよく鳴る笛だなとびっくりした。始めから終りまで見所の隅々のゴミまで落としてしまうのではないかというくらい鳴った。大鼓・小鼓が笛に彩りを添えてるというふうで、これで舞囃子を観てみたいものだと思った。終演は8時半の予定とあったが、9時は尤うに過ぎていた。外はまだ冷たい雨が降っていた。