言葉のクロッキー

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横浜能楽堂開館15周年記念企画公演

2011-06-18 | 能・芸能
祝いの型 江戸の祝い

「翁」(観世流)  翁 :観世 喜之 
          三番三:山本東次郎  千歳:小島 英明  面箱:山本 則秀

          笛:藤田六郎兵衛   小鼓: 幸正昭、後藤嘉津幸、船戸昭弘
          大鼓: 亀井忠雄
          後見: 観世喜正、坂真太郎   狂言後見: 山本則俊、山本則孝
          地謡: 五木田三郎、弘田裕一、駒瀬直也、長沼範夫
              遠藤和久、佐久間二郎、桑田貴志、中森健之介

 能「江野島 道者」(観世流)
          シテ(漁翁・五頭龍王)観世喜正
          前ツレ(漁夫)谷本健吾  後ツレ(辨財天)古川充
          子方(十五童子)古川穂奈美、遠藤瑶実 ワキ(勅使)殿田謙吉
          ワキツレ(従者)則久英志 ワキツレ(従者)大日方寛
         アイ(勧進聖)山本泰太郎 (船頭)山本則重 (鵜の精)山本凜太郎
          (道者)山本則孝 山本則秀 遠藤博義 若松隆 
          狂言地謡: 山本則俊、平田悦生、山本修三郎
          笛:寺井宏明 小鼓:幸正昭 大鼓:亀井広忠 太鼓:観世元伯
          後見: 弘田裕一、駒瀬直也、遠藤和久
          地謡: 中森貫太、中所宜夫、奥川恒治、遠藤喜久
              鈴木啓吾、佐久間二郎、坂真太郎、桑田貴志
          狂言後見: 山本東次郎、鍋田和宣

盛装した能楽師が揚幕の前に出て、火打石を打ちつけ火花が散った。その後カチカチという音は何度も聞こえた。開演予定時刻を過ぎ会場はとても緊迫感があったように思う。やがて幕が揚がり、面持が音もなく橋懸りを進み、そして始まった。直面の喜之師が正先に出、先ず深々と礼をする。「する」というより「捧げます」というような感じだ。「とうとうたらり~」に始まる謡に続き、白を基調とした装束の千歳が爽やかに颯爽と舞う。次いで白い翁面を付けた翁が天下泰平・五穀豊穣を寿ぐ舞いを悠然と舞い退場してゆく。常座に侍っていた狂言方の出番となる。貫禄付いた東次郎師が「揉ノ段」を高らかに舞い、「黒式尉」の面をつけ「鈴ノ段」を舞う。喜怒哀楽というものを感じさせない舞台。感情を越え、八百万の神々に舞を通して祈りを捧げるというような、観客を意識していないような舞台だ。ほどほどに緊迫感があって良かった。
能「江野島」。これは今観光地として名高い江の島の縁起を能にした演目であまりお目にかかれない一番だ。大がかりで賑やかな舞台だ。8人の地謡、4人と介添えの囃子方、後見も座に着き、大小前に一畳台が運び込まれ次いで幕に覆われたいつもの倍の大きさの作物が運ばれ一畳台に乗せらる。舞台全体を使い切るような舞台が始まる。 相模国江野の海上に島が現れたとの話を聞き、欽明天皇に仕える臣下が様子を見に訪れる(名乗)橋懸りに漁翁と漁夫が現れ、臣下の問いかけに対し、天女が童子を伴ってこの地に現れ、龍神、その他神々が雲上から盤石を下し、海底から埋砂を噴き出し、島を作り出したと語る。また鎌倉の深澤に住んでいた五頭龍王は、人を食らう悪龍だったが、弁財天の求めに応じ悪心を捨て、この国の守護神となり、弁財天と夫婦になったとも語る。そして自分がその五頭龍王であることを告げ中入りになる。ここから狂言方による小書「道者」。勧進を断られた社人が祈りを捧げると鵜の精が現れ、怒りに満ちた舞を切れあじ鋭く、狭い本舞台上で走り周り、踏み鳴らし何度も飛び上がり舞う。(凛太郎・秀逸)これに驚いて道者達は次々と寄進をする。(アイ狂言)狂言方が退場したあとやっと作物の幕が取り払われ、二人の子方を伴った弁財天が現れる。そして臣下に宝珠を授け、舞(樂)を舞う。そして五頭龍王も現れ舞働きし、威光を見せ国土の守護を約束し、天に昇って行く。弁財天が現れた時は舞台がパーっと明るくなったように感じた。白銀のように輝く装束、穏やかな面、白衣・黒髪の子方。豪華に感じました。五頭龍王は大きな龍の冠をし、舞台を覆うかのような大らかな舞を舞う。とても見応えのある演目だった。

横浜能楽堂の館長を務める山崎有一郎氏が「白寿」ということの祝いも含まれていたけれど、館内で挨拶を受けられている山崎氏は背広を着て元気でとても九九歳とはおもえません。終演後、ロビーで鏡開きがあってお酒がふるまわれた。これもあまりないことだ。