言葉のクロッキー

本とかテレビその他メディアから、
グッと感じた言葉・一文などを残してゆきたい。
その他勝手な思いを日記代わりに。

立川談志

2015-05-20 | 語録
「学問て何ですか」
「貧乏人の暇つぶしだ、あんなもん」
「努力じゃないですネ」
「努力なんてなア、馬鹿に恵えた夢だ」
           
           立川談志「やかん」より

能 『寝覺』 他

2015-05-13 | 能・芸能
観世九皐会 五月定例会     5月10日 午後1時~4時45分    矢来能楽堂

番組

● 能 『寝 覺』
シテ:観世喜正   前ツレ:小島英明    ワキ:森常好  ワキツレ:舘田善博 森常太郎
  天女:新井麻衣子 河井美紀    龍神:佐久間二郎 坂真太郎    間:中村修一 後見:鈴木啓吾 奥川恒治
太鼓:観世元伯  大鼓:亀井洋祐  小鼓:観世新九郎  笛:藤田六郎兵衛
地謡:永島充 長山耕三 桑田貴志 中森健之介 中所宜夫 弘田裕一 駒瀬直也 遠藤和久

● 狂言 『酢 薑』
シテ:石田幸雄  アド:高野和憲  後見:中村修一

● 仕舞
・安宅 : 長山耕三
・誓願寺: 観世喜之
・網之段: 遠藤喜久

    地謡:小島英明 中森貫太 遠藤和久 坂真太郎

● 能 『鞍馬天狗』 白頭
シテ:長山禮三郎  ワキ:殿田謙吉  ワキツレ:則久英志 梅村昌功
牛若丸:長山凛三  稚児:新井弘悠 佐久間瑞稀 桑田大志郎 桑田潤之介
間:高野和憲 飯田豪    後見:永島忠侈 永島充
      太鼓:小寺真佐人 大鼓:國川純 小鼓:幸清次郎 笛:寺井宏明
      地謡:鈴木啓吾 小島英明 中森健之介 河井美紀 中森貫太 五木田三郎 観世喜正 遠藤喜久


「ねざめ」と読む。これだけでは何をテーマにした能なのか分からない。解説を読んで解った。長野県の木曽に、「寝覚めの床」という景勝地があるがこの寝覺なのだ。能ではこの寝覺の床に三帰翁(みかえりのおきな)という仙人が住んでいて、長壽の仙薬を持っていることになっている。それを時の天皇である醍醐天皇(延喜帝)が求め、勅使が木曽の里にある寝覺を訪れるところから曲は始まる。舞台には一畳台が運ばれ、続いて大きな作り物(テッペンに松が飾られてる)が一畳台の上にセットされる。勅使役であるワキの一行が正装して悠然と舞台に出てきて名乗る。そこに老若二人の樵(シテと前ツレ)が現れ・・・・・・・・やがて夜になる。

この曲は余り演じられることはないそうだ。しかしこの曲は楽しい曲だ。天女二人。龍神も二人。それぞれ華麗な装束をまとっている。三帰翁も豪華な装束だ。この翁、実は医王仏という仏様の化身である。面は鼻瘤悪尉という面だそうだ。鼻筋に大きな瘤があって、いわゆる容貌魁偉。立派な頭巾を被っていて、とっても偉そうに見える。これらが皆役どころで舞を舞う。天女は優美・華麗に。龍神たちはキビキビとした動きで闊達に。翁はとっても重厚に、ゆったりと楽を舞う。間の狂言方までも小舞を舞った。・・・・・・そして夜が明け始め、三帰翁は仙薬を勅使に授けた後、木曽の桟橋を渡り姿を消すと、勅使の夢は醒めるという物語なのだ。見所満載だ。

仕舞「安宅」は短かったけれど、大きく、キレよく豪快な印象の舞で良かった。

能「鞍馬天狗」。子役というか牛若丸がよかった。橋掛かりを出てくるときから何か目立っていて、それが80分くらいの長い舞台でも消えずに、しっかりと詞章とこなしていた。

観世喜之傘寿記念能

2015-05-02 | 能・芸能
観世九皐会別会  -観世喜之傘寿記念- 平成27年4月26日 国立能楽堂

番組

● 『  翁  』

翁  観世喜正

面箱 山本凛太郎 三番三 山本東次郎 千歳 中森健之介

大鼓 亀井広忠 脇鼓 清水和音 頭取 鵜沢洋太郎 脇鼓 田邊恭資 笛 一噌隆之

後見 奥川恒治 弘田裕一    狂言後見 山本則秀 山本泰太郎

地謡 桑田貴志 光岡良典 宇都宮公 池上彰悟 中所宜夫 五木田三郎 中森貫太 長山耕三

● 連吟 『 養老 』 九皐会の能楽師20名       

● 仕舞
東方朔 : 遠藤和久  中所宜夫
羽衣キリ: 駒瀬直也
菊慈童 : 中森貫太

● 能  『隅田川』

シテ:観世喜之   子方:観世和歌   後見:観世喜正 永島充

ワキ:宝生欣哉 ワキツレ:館田善博

大鼓:安福建雄 小鼓:幸清次郎 笛:一噌庸二

地謡:佐久間二郎 小島英明 坂真太郎 桑田貴志 遠藤喜久 駒瀬直也 遠藤和久 鈴木啓吾


● 狂言  『末広』

シテ:山本泰太郎 アド:山本凛太郎 山本則秀    後見:若松隆


● 半能  『 石橋 』 大獅子

白獅子:永島忠侈 長山禮三郎  赤獅子:五木田三郎 弘田裕一

ワキ:宝生閑    後見:観世喜之 遠藤喜久 鈴木啓吾

太鼓:桜井均 大鼓:柿原崇志 小鼓:幸正昭 笛:一噌幸弘

地謡:小島英明 長山耕三 坂真太郎 中森健之介 永島充 観世喜正 奥川恒治 佐久間二郎



能にて能にあらず とか。「翁」。喜正師の翁は貴公子が演るような印象。笛や鼓叩いて楽しみましょうというモードでは全然なく、ピリッとした雰囲気が全体を通してあった。なにか絶対的な相手に、なにも決めることのできない人間たちの願いを形にして、捧げているという印象の「翁」。でも芸であることには変わりはなく、ストイックにその印象を共有しようとする人も居るだろうし、物語として観る人、装束、所作、声、音楽性を楽しむ人もいるだろう。のっけから眠り込んでる人もいるのだ。しかしながら、いろいろな楽しみかたがあるけれど、やはり様式美の最たる演目として楽しみたい。三番三は東次郎師。少し演技に苦しそうなところもあったけれど、渋くそれなりに溌剌としていた。小鼓三丁、大鼓、笛、加えて発声は半端ではなく、東次郎師の詞章も良く聞き取れない。このお囃子の音のエネルギーを撥ね返して、突き抜けてくる声を持った能楽師はいるのだろうか。



傘寿を越える節目に選んだ演目は「隅田川」。まず小ぶりの作り物が大小前に据えられ、しばらくしてシテが、黒い女笠・水色の衣をまとい右手に笹の葉を持って心なしうつむき加減にとぼとぼという印象で橋掛かりをやってくる。「隅田川」。絶望感をテーマにした演目といってもいい。人買いに拐われ、いなくなった我が子を探し、旅する女。旅の途中での隅田川。渡しの船の中での船頭の哀しい話。病に倒れ、介抱もされずに行き倒れのように死んでいった幼子の話。聞くともなしに聞いていた女はやがてそれが自分の探し求める我が子のことだと知る。土地の人達が造った塚に、念仏をあげるしかない母の想い。やがて嵩じて塚から幼子が幽霊となって現れる。抱きしめようとしても抱き留められない幽霊。子方はこれ初舞台。作り物から’南無阿弥陀仏’と謡い、シテのところまで出てくるのだけれど、何か大泣きした風で、なにかジンとした。こんな「隅田川」はもうないだろう。