言葉のクロッキー

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その他勝手な思いを日記代わりに。

映画「家へ帰ろう」

2019-01-05 | 映画 音楽
原題「THE LAST SUIT」。製作国:スペイン・アルゼンチン合作 製作年:2017
原題と邦題「家へ帰ろう」とは一見結び付かないように思える。でも映画を観終わると、そういうことかと思う。
ホロコーストの地獄から脱出し、半死半生でたどり着いた我が家。しかしそこはかって親の弟子だった一家が住んでおり一家の主人は家を奪われるのを恐れ、けんもほろろの対応をする。だがその息子はそんな父親を許せず、父を張り倒してその青年の命を助けた。それから70年の歳月が過ぎゆき、二人は13000㎞も離れた、アルゼンチンとポーランドに分かれて住んでいた。男は仕立て屋として生計を立て、88年も生きながらえ、老人となり、家族にホームに入れられそうになる。それを良しとしない老人は、自ら仕立てた最後のスーツを持ってアルゼンチンから遠くポーランドまで旅をし、恩人へ届けようと決心をし、家族には黙って家を出る。飛行機や列車を乗り継ぎ行くのだけれど、それは多くの人たちに助けられての旅路だった。見知らぬ異国の人たちが差し伸べる無償の援助。この世の中捨てたものではないなと思わせる数々の援助に支えられ、老人はポーランドにたどり着く。そしてあの思い出の詰まったかっての我が家に帰り着くが、会いたい恩人はそこには居らず、訪ねても誰もそんな男は知らないという。途方に暮れる老人。しかしそこに奇跡が訪れる。老人がふと窓越しに見かけた男。何かにアイロンがけをしている眼鏡をかけた老人に何かを感じた老人はその男を見つめているうち、それは紛れもなく自分の命の恩人だと気が付くのだった。男も窓越しに見つめる老人に気が付き、見つめ返す。男の目に驚愕が広がる。外に出て言葉にならない再会を交し合う。やがて眼鏡をかけた男は言う。「さ、家へ帰ろう」と。
ある年寄りの思い出旅と言ってしまえばそれまでだけれど、中身は重い。触れたくない、思い返したくもない中身なのだけれど、二人の男の片隅に残っていた熱い思い、友情を人生の終盤で再体験した物語を演じた俳優の演技はすばらしい。またそれを支えた多くの人たちの演技が良い。心温まる作品。
      監督:パブロ・ソラルス  主演:ミゲル・アンヘル・ソラ
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