言葉のクロッキー

本とかテレビその他メディアから、
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その他勝手な思いを日記代わりに。

映画「氷の花火 山口小夜子」

2015-11-03 | 映画 音楽
2015年 日本 97分 「氷の花火 山口小夜子」製作委員会

監督:松本貴子 出演:山口小夜子 他

満員。通路まで座布団敷いてたり、後列には立ち見が多数居た。山口小夜子は2007年の夏に、肺炎で57年の生涯を閉じた。この映画は、彼女と交友のあった監督の強い願いで完成したファッションドキュメンタリー映画だ。
山口小夜子の私有物は、処分されずに段ボール箱に詰め込まれ保存されてるらしい。それを監督は「・・遺留品を深呼吸させたい・・・」といって関係者を説得し、開封し、国の内外を問わず多くの協力を得て映像にまとめたのだ。艶のある黒髪、まつげにかかるくらいのオカッパ、切れ長で細く冷たく見つめる目、真っ赤な椿色した唇、白磁のような肌色、長い手足・・・1970年代頃から活躍し始め資生堂のポスターや雑誌に出てくる彼女の写真を見るたび、日本人にもこんな女性がいるんだと思ったものだ。映画にも出ていたけど、今の高校生には殆ど知られていないようだ。世界のトップモデルとしてパリやNYで活躍してたと思っていたけれど、いつの間にか世間から消えていったなーと思っていた。しかし、年を重ねるにつれ表現者としての道を歩んでいたのだった。公式サイトには、「映画、演劇、ダンスパフォーマンス、衣装デザインといった多彩なジャンルに進出し、常に時代の最先端に居続ける努力を惜しみなく続け、表現者として妥協を許さなかった彼女は、どこを目指していたのか。」とある。彼女が肺炎で亡くなったときも、彼女の関係するいくつかのプロジェクトがあったのだから本当に残念に思う。このあたりも映画に出てくるが、やはり手始めとなる山海塾との創作ダンスは一寸ショックだった。でもここでの体験、手足はもちろん全身をとおして表現することへの挑戦は、確実にいくばくかの実りを彼女の体内に蓄積されたようだ。後年再びパリコレの舞台を踏んだ彼女は、ただ単に歩くというだけではなく、華麗なダンスをしていたように思える。監督はじめ彼女を慕うスタッフは今を生きる女優、松島花に山口の衣装を着せ、生前彼女をメーキャップした人たちの技で、山口の再現を試みる。主に写真製作に挑むのだが、ほんとに生身の山口が現われたような素晴らしい映像だった。



・・・服が自然にどこかへ連れってくれるんですね。
「こういうふうに足を出したらいいよ」とか「こういうふうに手を持ってゆくと、この服がこう見えるよ」っていうふうに・・・・