言葉のクロッキー

本とかテレビその他メディアから、
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その他勝手な思いを日記代わりに。

萬斎師とボレロ

2013-08-31 | 能・芸能
テレビで萬斎師のボレロを観た。単調な旋律ではあるけれど、遠近感のあるその旋律は、聴いていると胸の中に沸々とした何かを感じさせる。ベジャール版のボレロ、それはあの「愛と哀しみのボレロ」に観た舞手ジョルジュ・ドンの、わくわくするようなシーンを思い出してしまう。真っ赤な大きなテーブルのようなステージで大勢のダンサーに囲まれて魅惑的な踊りをみせてくれた。萬斎版ではいろいろ発見があった。狂言師は顔で演技はしない。でも観ていて顔でも演技をしていた。というより顔に舞の趣が出たのかもしれない。良かった。映画「陰陽師」でおなじみの衣装。輝くような白と朱色が印象的。そして頭に金色の小さな冠を装っている。舞台は長方形、大きな満月が輝いている。バックは殆ど闇を示すかのような黒一色。テレビ向きというか、映像の効果が際立つような演出だ。舞台を中心に40人の男性の舞手がいた。この人たちも良かった。梅若・西川・花柳・藤間など日本舞踊の名取さんたちだ。しかも年齢的に萬斎師と近い。全員が黒紋付に灰色がかった袴を着用している。基本的にすり足。かかとを意識的に上げることは無い。ジャンプというのもない。つまりあっても静かなのだ。忍者のような空気感のある跳躍なのだ。そして手の動きがとてもきれいだ。女性にはない静けさと力強さを感じさせる。この流派を超えた若手名取たちが萬斎師の舞を浮き上がらせる。ジョルジュ・ドンは両手で舞台をバンバンたたいて舞った。萬斎師は足で拍子のアクセントをとった。力強く拍子を踏んだと思う。洋風の小舞。ラストは真っ白な衣装が闇に溶け込むように終わる。夢幻能のようだった。 これは東京文化会館での収録だそうだけれど、観客の熱い思いが伝わってくるようだった。テレビで観るのはまた別な意味で良い。大きな画面にアップされる舞手。他の観客に煩わされることなくどっぷりと観賞できる楽しさ。「西洋と東洋のコラボレーション」とあったけれど、西洋と和のコラボレーションではなかったかと思う。