その昔のアルバムを含めて、ライル・リッツがいままでリリースしてきたウクレレ・ソロ・アルバムはすべてサイドメンと一緒か、オータサンとのデュオによるアルバムでしたが、2,006年6月にリリースされることになったアルバム「No Frills(飾りっ気なし)」は彼のウクレレを彼のベースがサポートするようなアレンジのされた完全な「ワンマン・アルバム」となりました。
ご存じの通り彼はスタジオミュージシャンとしてのベーシストでしたので、一流のミュージシャンたちをサポートした5000曲を越える彼の演奏も残念ながらそれらのアルバムのクレジットにはほとんど載っていません。したがって「昔から彼のベース演奏のファンだった」という人はまぁ存在しないと思います。よしんばそういう方がいたとしても、それだけのファンでしたら当然のことながらライルがウクレレを弾くことをご存じないはずはありませんね。でも、今回はウクレレだけでなくライルのベースもふんだんに聴けるようですので、ベーシストとしてのライル・ファンのかたにも満足していただけるものと期待いたします。
リリース元は以前ライルとオータサンのデュオ・ライブ・アルバムを出したフリー・マーケット・ミュージックでハワイ最大のディストリビューターであるマウンテン・アップル社が販売することとなりましたので、mele.comやタワー、HMV等から入手が可能と思います。
奥さんのリズ(エリザベス)と共同でフリー・マーケット・ミュージック社を経営しているジム・ビロフは、もともと有名な音楽雑誌ビルボードの共同編集者だったのですが、ある日ロサンゼルス郊外で開催されていたフリー・マーケットで一台のウクレレを購入したことがきっかけとなって、すっかりウクレレにのめりこみ、ついに独立してウクレレ専門の会社を興してしまったのです。会社名はそのきっかけに因んで名づけたのですが、彼が来日したときにその会社名を日本語でほかのひとに説明したいので翻訳するとどうなるかというのでやむを得ず「蚤の市音楽社だよ」とは教えましたが、「でも英語のままで大丈夫」とも言っておきました(笑)。
ジムの信奉するウクレレ奏者はなんと言ってもライル・リッツなのです。ジムが以前住んでいたロサンゼルス郊外の自宅に何度もお邪魔しているのですが、その家の所在地が昔ライルの住んでいたところのすぐそば、という話とジョージ・ハリスンが遊びに来てウクレレを弾いた、という二つのことは行く度に嬉しそうに自慢していました。その大好きなライルの演奏を形に残したいと考えたジムはご存じのように2冊のウクレレ教則本やマッケイブ楽器店でのライブを収録したオータサンとのデュオ・アルバム等をリリースしてきましたが、究極の目的は今回のようなライルによるワンマン・アルバムだったと思われます。
オータサンが自分のウクレレ・ソロを自分のウクレレ伴奏でバックアップしたアルバム「All By Myself」をリリースし好評を博していますが、ジムもライルのウクレレ・ソロをライル自身のベースでバックアップしたアルバムを企画したのでしょう。ジムによると、ライルのアレンジは大変すばらしく、ウクレレだけでなくベースも十分に楽しめるアルバムのようです。
アメリカ人には茶目っ気のある人物が多く、気難しそうな顔をしているライルもその例に漏れず面白い人物です。一方のジムもシャレが好きで、彼のオリジナル曲に「Big In Japan」という曲があり「君はボクのことを全く知らないって言うけど、こう見えてもボクだって日本へ行けば超有名人なんだゾ!」という「確かめられる心配のないウソ」を堂々と唄に書いてしまいます。そしてライルはその昔のアルバムで「Ritz Cracker」という有名商品と自分の名前をもじった曲を書いていますし、ジムも「Lyle Smiles」というライルの名前と韻を踏んだ曲を作っています。今回の「Old In New Mexico」というのもそのたぐいですね。
ところでこのジャケットの写真にある「Ritz Motel」というのが大変気になります。もしかしてCGによる合成かとも思ったのですが、実際には北ハリウッドにある実在のモーテルなんだそうです。ジムの以前の住所に近いということもあり、クルマで通るたびに「Ritz」という名称に惹かれて「いつかライルの関係する出版物で使いたい」と思っていたのでしょう。奥さんのリズによるレイアウトの効果もありこのジャケットは「アメリカ大西部」といった雰囲気を醸し出しています。
実はライルのアルバムジャケット写真候補はもうひとつあったようです。それは世界的なホテル・チェーンの「Ritz Carlton Hotel」です。しかし、米国だけでも40箇所、世界中ではその2倍もある大きなホテルが相手では、使用料も高いだろうし、逆にホテルの宣伝CDと取られかねないので(多分)このモーテルにきめたのでしょう。
曲目は以下の通りです。ラテン、スタンダード、ポップスそしてオリジナルと多彩ですね。
1. A Felicidade
2. Satin Doll
3. Lil' Darlin'
4. No Moon At All
5. Besame Mucho
6. Girl From Ipanema
7. Beginner's Luck (Lyle Ritz/ Jim Beloff)
8. Rainforest Waltz (Herb Ohta/ Jim Beloff)
9. Emily
10. Blue Monk
11. I'm Old Fashioned
12. Old In New Mexico (Lyle Ritz/ Jim Beloff)
現在ライルはハワイからオレゴンに、ジムはカリフォルニアからコネチカットに、とそれぞれ引っ越してしまいましたが、これだけインターネットや航空の発達した時代ですので、今後も二人の共同作業によって素晴らしい作品を発表してくれることを期待しています。
テンプレートは季節感ぴったり・すっきりして読みやすくなりました。
聴きもしないでどうして分かるか、といえばライルのナマ演奏を長年聴いているところからくる「信頼感」でのオススメです。
おりました。楽譜ばかり増えるわりにはレパは
ちっとも増えません。
で、一枚希望。ダメですか。
噂のCD、遂に完成したのですね!
私も一枚お願い致します。
広いアメリカの事ですから、MATTさんのお名前のお店もきっとあるんでしょうね。
お店のなまえとしての「Pasta Oyama」とか「Pasta Sato」は各地にありそうですね!