
「普通の弦」としてはたまたま手元にあったカマカのローG用の弦を使いましたが、フェイマスで販売しているアランフェス弦等も同様の構造をもっていると思います。
弦楽器の音高(ピッチ)は張力と弦長が同じ場合、使用する弦の単位長さあたりの質量の平方根に反比例します。いま弦の素材が同じもの、たとえばナイロンの場合(に限りませんが)でしたら弦のゲージ(この場合は直径)が2倍になれば単位長さあたりの質量が4倍、したがってその平方根は2倍になりますので張力と弦長が同じ場合にはちょうど1オクターブ低いピッチが得られます。
ただ、実際問題としてナイロンの弦でゲージをどんどん大きくして行くと弦長に対して無視できないほど太い弦になってしまい、オクターブピッチのずれなどが生じますので、フロロカーボンのようにナイロンより密度(比重)の大きな素材を使うかナイロン・フィラメントの上にナイロンよりはるかに密度の大きい金属線を巻いた「巻き弦」にすることが多いのです。
ウクレレのローG弦として「巻き弦」を使用した場合の欠点としては、ほかの3本の弦の音色と異なること、ほかの3本よりもサスティーン(音の持続)が長いこと、金属に施したメッキが剥げて指先を汚す等がありますが、それ以上に弦上を指で滑らせるときに「キュッ」という音が発生するため気にするかたが多いようです。 この現象は金属線上に金属線を巻いた「巻き弦」でも発生しますので、ギター、エレキベース、さらにはスチールギターの分野で使われる弦にこの対策品が売られています。
「キュッ音」の発生の原因は上に巻いた線の断面形状が円形になっていることによるのです。すなわち巻き弦の上に指を滑らせることでこの円形の連続部分を進むためそのデコボコに対応したノイズが発生するわけです。このノイズを強調させたのがベンチャーズの「ダイヤモンド・ヘッド」での「キュッ、キュッ」というカモメの鳴き声?やバッキー白片お得意のバーのスライドだけでメロディーをだす「ノコギリ奏法」なのです。
「対策品」としては上に巻く線の断面形状を矩形(長方形)のリボン状とし巻いたあとの表面にデコボコが出ないようにします。このように巻かれた弦を「フラット・ワウンド弦」と呼びますが、欠点がないわけではないのです。いま、極端な厚みのリボンを巻いた状態を考えると弦の全体が「棒」のようになってしまい、本来弦に期待される「振動」が発生しにくくなります。もちろん実際に巻くリボンの厚さはそれほどの寸法ではないのですが、それでも断面形状が円形のものに比べれば振動しにくいことは間違いありません。
フラット・ワウンド弦では明るい音がでないのを嫌ったミュージシャンのために「セミ・フラット・ワウンド弦」というのもあります。これは上に巻く線の断面形状を矩形ではなく長円(楕円)にしたもので、当然ながら効果も通常のものとフラット・ワウンド弦とのあいだになります。
トップ写真のように顕微鏡で3種の弦を覗いてみたところ、たしかに3者の違いがわかりました。
ただ、この違いを記録すべく一眼デジカメと接写装置を組み合わせて撮影を試みたのですが、手元にある補助具を組み合わせた範囲ではうまく撮影できなかったのです。
そこで3年ほど前に購入してあったUSBマイクロスコープを使ったのですが、当時のものは分解能が劣っていてとても今回の目的には合わないので、急遽最新型のUSBマイクロスコープを入手し、どうにか目的を達しました。
そしてこれのおかげで3種類の弦の違いが明確になったのです。
今回の3種の弦を比較しますと、通常のもの(上)は円形断面の線を巻いていることがわかり、LaBellaのもの(下および右)はカドを落とした矩形断面のリボンをまいていることがわかります。これに対し、ghsの「キュッといわない」弦は上に巻いた線の巻き間隔(ピッチ)が広くなっています。これは「セミ・フラット・ワウンド」とも異なり、「キュッという音」の周波数成分を低くさせて「キュッ音」を目立たせないように考えたのではないでしょうか。
ghsのウェブサイトhttp://www.ghsstrings.com/products.php では下記のように「ローノイズ」を謳っています。
For Recording, high amplification, or anywhere reduced "finger whisper" is important. Even unamplified, these strings have surprisingly bright tone - because smoothing is done by roller winding, not by grinding.
(意訳):録音する場合やアンプで大きな音を出すとき、それ以外の場合でも「指のささやき音」を減らすことは重要事項です。ナマ音での演奏でもビックリするくらい明るい音が得られるのです。これは他社がやっているようなグラインディングによらずローラー・ワインディングで巻き弦を製造しているからです。
とありますが因果関係がよくわからないですね。
同様にLaBellaのサイト http://www.labella.com/ では下記のような解説がされています。
.......set contains gold nylon trebles and polished Golden Alloy wound basses. Especially designed for the concert performer, the smooth surface on the basses allows the player to shift positions without any noise or squeak. Highly polished, these basses are recomended for both studio recorsing and live performances.
(意訳):このセット弦の高音側は金色のナイロン弦が、そして低音側は磨かれた「金色の合金(たぶん真鍮のこと)」弦になっています。コンサートの演奏家用に特別に設計された低音側の弦は、その表面が滑らかなため演奏家が指を滑らせても何のノイズも出さずに演奏ができるようになりました。これらの良く磨かれた低音側の弦はスタジオ録音とライブ演奏におすすめします。
たしかにこの弦は肉眼で見ても表面が滑らかであることが良くわかります。さらにリボンを「磨く」ことによってカドがおとしてあるので、比較的振動がしやすいようにも見受けられます。
ほかの弦のように素材にメッキが掛けられていないため、錆びが発生し変色する傾向がありそうで、購入した弦でもわずかですが部分的に変色していました。でも、もともと巻き弦を張った場合はムク弦よりも早くダメになりますのでいつも新しい弦を張っていけば良いのでしょうね。
大きな楽器屋さんで、と教えていただきましたが、危険が危ないのでほかのものを見ないように探してこようと思ってます。
金色巻弦で指のささやきを聞いてみたい衝動です。
すごすごと階段を下る途中、「せっかくだから」と思って2Fにも寄ってみたところ、なんとそこにも弦コーナーがあり、めでたく発見しました。
2階はアコースティック(フォークギター)で、3階がガットギターのコーナーだと思っていたのですが、記憶違いが有ったかも知れません。
yonakaさんも買いに行って買えたと言う事は、探したのですね。(しかし、あそこのお店は愛想無し)
3階にはオールドマーチンのウクレレも展示されていて、私はガラスに張り付いてヨダレ垂らしてました。
早くネットでも手に入るようになるといいですね。
金属巻弦を、Gではなくて、
C弦だけにに張られているのを最近みかけるのですが、
ああするには、どんな弦を買えばよいのでしょうか…??
使う弦はクラシックギターの3弦が適当なのですが、市販の弦の大半は巻き弦ではなくムクの弦のため、なかなか見つかりません。うまく見つかっても「セット弦」としてしか売られていない場合はわずか一本のために高額の支出をするのもばかばかしいので困りますね。
なにか適当な弦が見つかったら報告いたします。
http://shop.ariaguitars.co.jp/shopdetail/054000000008/brandname/
オクターブピッチずれを解消するにはオータサンのように1~3弦に同じゲージを使えばよいのですが、3弦のテンションが極端に低いので演奏が難しくなるのが問題でしょう。