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楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

空海の風景(下)

2007-05-09 11:19:02 | 人間
空海の風景〈下〉

中央公論社

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この下巻は先週九州でひょんなことからよった古本屋で手に入れた。100円!
上巻が680円もしたのであるから大もうけ!
さて、上巻は忙しく1ヶ月もかけて少しずつしか読めなかったのに下巻は一気に読んだ。
下巻の焦点はほとんど最澄との確執模様。
権力も得て絶頂であるはずの最澄、しかし最先端の密教がない。
いまだ権力に届かず、しかし今最先端の密教、しかもその正嫡のお墨付きまでもっている空海。
なにやら、明治時代に西洋から最先端の科学を輸入する競争にも似ている。
しかしスケールは全く異なる。なにしろこの平安初期は国家の中枢事項である。
真っ正直であるが故に、最高の地位まで上り詰めた最澄。しかし、その地位を維持するためには最先端でなければならない。
真っ正直に空海に密教を学ぼうとする最澄。しかし、透けて見える最澄の意図に頑として、かつ人間関係を壊さずにすり抜ける空海。そこに天皇と藤原家の確執がかぶさる。
平安初期の日本の中枢も確かに広がる壮大なアジアの国際社会の最先端と切り結んでいたのである。
この小説の描く空海も最澄も人間として生臭くひびく。

私は、司馬がこの小説を書いた70年代前半という時代を見ている。
私らの世代が大学紛争をくぐり抜けた時代である。司馬にはそのようなことは小事であるかのようだ。
この中にそこから抜けて来て修行にかかずる学生らしい若者が登場し、司馬が質問をする場面がある。
「空海以降、この宗教に偉大な僧があらわれたか?」
「○○」
しかし、司馬のそのことに対する評価は低い。
第2次大戦を生き抜けた司馬のスケールには遠く及ばない。
空海VS最澄。
最澄は結果として密教に圧倒されるが、その後、平安時代を抜けて鎌倉へつながるとき、圧倒的な鎌倉仏教として発展する土壌となる。すなわち瞬間風速ではわからないのが歴史である。
科学の発展も似ている。その時代の瞬間風速だけでは計り知れないのが歴史の醍醐味でもある。

空海が高野山を作り始めるのは40歳を超えてからであることも面白い。
この高野山の地はかつて調査でうろうろしたこともあり、なつかしい。
それを40を超えてそこで空海が死ぬまでの20年足らずのうちにいわば都にしてしまったのである。
かつて調査でうろうろしたこともある、うっそうとした高野の森を思いながら、読み終えた。
確かに、たった60年という短い人生を目一杯駆け抜けたミレニアムスケールの天才であったのだな、と思いつつ。
<短く一回しかない人生、一所懸命生きているか?>
と迫ってくる。
今日も暑い!
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たそがれのカーチェイス

2007-04-12 01:47:16 | 人間
先週のわくわく興奮実話です。

あ~、疲れた。調査を終えた。
「さ、これらから温泉へ行くぞ!」
四国の古い田舎町、やっと車がすれ違うことのできる細い道。
我れらが優秀なドライバー院生は、止まった。
すれ違い時の原則、<避けるに容易な方が動け、さもなくば相手を動かせ>を確実に実行している。
相手は下がらない。
<あれ?後ろに広場があるのに?>
運転手後ろの席にいたヒメネズミは、すれ違いさまに、どろんとした目の運転手の顔をはっきりと見た。
バリバリバリ!
「うわ!やりやがった!」
皆、後ろを振り向く。
相手の車が、そのまま走り去っている。
「???なんじゃあれ!止めろ!逃がすな!」
助手席にいた、猿のように俊敏な柴猿君は一気に飛び出し、追いかけた。
「おりゃ!待て!止まれ!こら!」
猿叫である。
しかし、敵は曲がり角の先へ消えた。
柴猿君、全力で回転数を上げても、コンパスの長さの宿命には勝てなかった。
「車を切り返して追え!」
優秀ドライバー君は、切り返し、追い始めた。
曲がり角で柴猿君を拾い、
「どっちへ逃げた?」
「右へ曲がってーー」
「よっしゃ!いた!あれだ!」
相手の車はまた走り始めた。
そして、たそがれのカーチェイスがはじまった。
敵は狭い田舎町の路地裏のような道を逃げ回る。
ブブ!ブブブ!
クラクションをいくら鳴らしても、止まらない。
明らかに逃げている。
「くそ!意識的当て逃げだ!許さん!」
「路地から人が飛び出すとやばい!気をつけろ!」
「相手のナンバーが見えるところまで近づいて、写真だ!」
「そうだ!110番だ!」
その時、私の脳裏には、昔カリフォルニアで、私らの側がおしゃべりをしていて追突した時のアメリカ人の対応が浮かんだ。
相手は決して車から出てこなかった。電話をしている。そしてすぐにパトカーがやって来た。にわかに相手が出て来て、冷静に処理された。私らはボディーチェック。(とほほ。なんせ、アメリカでは皆、鉄砲を持っている。汚いアジア人が4人も乗っていたら恐れられるよな、と思った。その時運転していたのは今では極めて有名なこの業界の教授なのだが)。

私には相手の車に何人乗っているのか、気になった。カリフォルニアの時とは逆だ。
正義は我らに有り!しかし、屈強なおじさんが複数いて、居直った時、まずい!

110番がつながった。
電話の向こうで、叫んでいる。
「とにかく2重事故を避けてください!深呼吸をしてください!」
<ん、こちらの判断と一致している。その冷静さはある。>
やがて敵は、人里離れた海辺への道へと我々を引き込んでいる。
相手は何人いるか、まだ確認できない!
日はもうとっぷりと暮れた。
<やばい!人のいない暗がりに引き込んで、居直るつもりか!>
「いま!どこですか!」
110番の向こうから叫ぶ声が聞こえる。
しかし、よそ者の我らには、わからない。説明できない。
<まずいぞ!>

つづく


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定年記念の連続

2007-03-07 02:55:26 | 人間
これから定年記念、卒業記念、お別れ会などの連続がはじまる。
今日はその第1弾。一挙に4人の定年。そして年に一度、すでに定年した人たちが集まる。
話を聞いていると、20年とか30年とか一飛びである。
なぜ地球科学を選んだというところからはじまる。
大水害が一生を変えた、などいうのもあった。
そして、定年による寂しさよりも、忙しさから解放されることの喜びの方が大きそうに見える。
それでも、まだきっと忙しさが続いているのだろう。
その安堵感にまだ実感が伴っているようには見えない。

そして、70を超えた大御所の先生のあいさつ。
定年後の人生を見ているとおもしろいよ、と。
まだ研究に未練があるひと、
全く別の世界へ行く人、
上からお目付的に見ている人(このひとはそうなのだが)
現役の人、頑張ってください、だって。
いいよな、気楽で。
早く定年して、第2の人生と行きたいね。
でも、まだ大分先だな、(グス)

あしたもまただ。
今日は内輪だったが、明日は学部全体。
おまけになんか一言、って頼まれてる。
何を言えばいいのかな?
5分前に考えよ。
起承転結、一言ジョークは何にしよ?
ブツブツ
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定年記念同窓会+α

2007-02-19 18:18:22 | 人間
昨日は定年記念の会。最終講義は午前中であることを失念し、午後宴会途中からとなってしまった。
午前中早くついてしまったと思い、締め切りすぎた原稿かきで、1時間喫茶店にこもってメールで送付。
さ!と思ったらすでに宴たけなわ。やっぱりこのずぼらさ変わっていないね。

さて、宴会+アルファ。
いつもこのようば場で思うのは懐かしい顔。しかも昔と変わっていない。美男美女?
顔は皆、同じ若い!ちょっと落ち着いたかな。
実はこのように思うのは当事者だけらしい。
全く知らない人や若い人から見ると
「なにをいってる?はっきりとおじさん、おばさんじゃん!」
ということらしい。
その、「いつまでも若い!」という錯覚をもたらしてくれることが実は「同窓会」という組織がつづくゆえんなのですね。
だから頻繁にやるとまずい。若くないことが自分も皆も分かってしまう。おまけに昔の人間関係が復活したりするからね。
さて、久々にその後、わがマドンナ美女軍団たちと、からおけ!
(ーーなので、ちょっとぼかして)



でも聖職者としての職業が多いこともあってか、家庭を持つ人が多いことか、皆「明日があるから」と夕刻6時には解散。
「あー住む世界が違うのだ」とちょっと寂しい思い。

でもその後南の国からやってきた元の同僚と気を取り直し、その大学で何やら学部長候補らしい友人(彼の専門は物理なのだが、その大学にいる時よく愚痴を聞いてもらった)を呼び出して深夜まで。途中から、会社に勤めながら大学院に通うもとの学生を呼び出し、深夜まで飲み話をした。地方の大学の生き残り戦略は大変である。私はあえて「学内政治はやらない!」と決めているが、本当に大変である。学部長選挙は今日であるといっていたがどうなったかな。ご苦労さんとしかいいようがない。「人の悪口は慎重にね。うまくやらないと全て跳ね返ってくるからね。人前で恥をかかせるのが最も恨みをかうからね」というのが老婆心からのコメント。
そんなことこの年になればいうまでもないことではあるが。上に立つ場合は特にね。野党であるうちが気楽であるが。

おかげで今日は飛行機で帰ってくるので精一杯。フラフラ。やっと夕刻になって楽になった。
ちょっと飲み過ぎ。



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第2の原点へ返る

2007-02-17 09:34:35 | 人間
忙殺の日常から、あす第2の原点へ返ります。
大学院を終えても職がなく、先が見えなかった時に転がり込んで来て救ってくれた大学へ明日返ります。
その時救ってくれた先生の定年記念の祝賀会があすあるのです。
そこで過ごした12年。私の第2の青春の地でした。その時の春の日差しは今でも忘れることができません。
本当に楽しい日々を過ごしました。学生たちとはほとんど遊んでいたように思います。
彼らとも再会です。その原点に返り、エネルギーをもらってこようと思います。
彼らももうおじさん、おばさんだな!
ということは私は??


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