goo blog サービス終了のお知らせ 

楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

ファシんスタたらんとした者

2017-10-02 07:13:01 | 社会

 

ファシスタたらんとした者
西部 邁
中央公論新社

 この人、言論界の人。言論界の人とは、専門家が集まり閉じる学界とも違い、ジェネラリストで弁論が立ち、マスコミにやたら登場する人。もう齢78とは、時が速い。朝ナマは、昔よく見ていたので懐かしくもあり、本屋で偶然に見かけ手に取った。言っていることがよく理解できないが、何やら論理好きそうで、何にでも納得できずに食らいつくクレーマー的元左翼今右翼言論人と理解していた。

 私は理系人間で専門論文を書くことにしがみ続けているのに、なぜ、買ったのか?

 本屋の棚にあるのを手に取りさらっと見て驚いた。同郷の道産子。自分史的記述を見ると札幌南のトップクラスの変わり者だったらしい。子供の時から大量に本を読み、学校科目などサラッとやり過ごす、でもコミュニケーションの下手な輩。今ではASD(自閉症スペクトラム)とレッテルが貼られる子供だったらしい。

 何かのきっかけで社会とコミットできるように変身すると、弁も論もたち、他の粗が見えすぎてしまう。批判が暴走する。孤立する。今でも東大文学部、理学部などに10%はいるという輩。我らが学界でも、それゆえに消えていった、知らぬ間に亡くなっていたという屍が累々としている。

 興味が散乱し集中できず、周りに理解をさせられない輩、それでイライラし、時に暴走するのを今ではADHD(注意欠陥・多動性障害)とレッテルを貼るらしい。

 この精神病理の中から、ボルツマンやアインシュタインのような革命的天才が生まれてきたとの説もある。そのような人材の成立を環境のせいにする後天説とDNAのせいにする先天説がある。(最近の美人脳科学者としてマスコミ受けしてる中野なにがしのサイコパスを読むと、彼女は先天説のように見える。でもそれらは検証が困難な複雑系生命科学。決定論で捉えると容易に社会ダーウニズムへ転落する危険思想)

 西部は、1960年国会突入時、駒場自治会の投票で自らをでっち上げた委員長。それを告白してしまうが、その東大駒場の教授にもなり、さっさと辞めてしまった奇行の人。

 一つの文が長く、やたらと横文字が多く、立ち止まりながら出ないと読みにくい。それらは横文字のままで書いた方が読みやすくなるのではないか、と思いながら最後まで読んでしまった。

 意見が違いそうなところが数多ありすぎて、いちいち記す間もないが、私も前期高齢者。生きていれば10年程度で似た視界に入るので彼が死ぬまで見続けてやろうと思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

現代における平和と革命(古本)

2017-07-09 10:32:45 | 社会

 

現代における平和と革命 (1959年)
黒田 寛一
現代思潮社

書棚の隅で茶褐色になった本を引っ張り出し読んでいる。姉の名で1970年1月29日(木)とある。昭和34年初版で、昭和44年18刷なのだから、相当に読まれていたと言えそうだ。

彼女も私も学生時代。しかも七十年安保を前に学生運動で世の中が激しく揺れていた時だ。読んだ形跡はない。私もこの本は目にしたことがある。革マル派の教祖と噂されていた著者だ。白いヘルメットに革マルと赤字で記したヘルメットで有名であった。早稲田に進んだ高校の同級生が中核派との内ゲバで死んだ時の故郷での壮絶な葬儀を思い出す。

 よく聞くが、わからないままに放置してきたことに「スターリニズム」があり、スターリンは今や歴史上の最大の悪人独裁者ということ常識ではなっているがよく理解せずに放置してきた。

  読み始めるなり驚いた。これでもかこれでもかと批判が続く。当時の時代の風潮なんだろう。恨みつらみ、ダメ出しが続く。特に左翼運動への批判が山積み。でも、黒田ももちろん左翼。世は新左翼とよんでいた。

 3分の1くらいまで読んだところで、わかってきた。主張は極めて単純。

1848年、共産党宣言を出したマルクスとロシア革命を起こしたレーニンのみが正しく、その後の全ては裏切り者なのだ。何故裏切りなのか。それは世界共産革命を放棄し、平和共存だとか、目の前の戦争反対とか、自分たちのみが生き続ける利害を優先させている、一国社会主義と批判した。それをやり始めた始まりはスターリンなのだと。そういう自分たちのことしか考えない社会主義思想をスターリニズムと呼ぶ。それは帝国主義と並ぶ世界の敵。

平和より戦争があったほうが労働者たちの不満が蓄積する。貧しくなればなるほど不満が蓄積する。だから目の前の改良はそれらを覆い隠す悪でしかない。不満を解決するには世界共産革命しかないと労働者が気がつくように前衛が導かなければならない、と。

 世の中不安定であればあるほど良い、貧しければ貧しい程よいとする、極めて危険な主張。彼らはその後、内ゲバを繰り返し、歴史のかなたへ消えて行った。

 これ以上読むのは、気分が悪くなり時間が無駄。

 でも、せっかくページを開いたのだから、しばらく置いておこう。もし読み進んだとしたら、追加して記してみよう。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

憲法改正論と学問

2017-05-04 07:05:27 | 社会
憲法改正論と学問

5月3日、憲法記念日、安倍首相が2020年には新しい憲法を、と発表した。議論は一気に加速し、来年中には発議にまでいたるであろう。

どのような内容に固まって行くのか注目したいと思っている。

少子高齢化、人口急減、世界激変は避けて通れない近未来。世界と国と家族らの安定的未来、それを支えるであろう科学と学問の未来、それらに対する責任がある。

時間は限られている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「科学者の行動規範」を読む(4)

2017-03-05 06:04:45 | 社会
「科学者の行動規範」を読む(4)


3月7日、日本学術会議は「軍事研究と学問の自由」に関して、半世紀ぶりに声明を出すための案をまとめたと報道があった。
この件に関して、マスコミは概して好意的であるが、玉虫色だとの批判もあるようだ。
この件は、先に触れるとして、行動規範を読み続けよう。

(3)より続く。

これらの基本的認識の下に、日本学術会議は、科学者個人の自律性に依拠する、すべての学術分野に
共通する必要最小限の行動規範を以下のとおり示す。これらの行動規範の遵守は、科学的知識の質を保
証するため、そして科学者個人及び科学者コミュニティが社会から信頼と尊敬を得るために不可欠であ
る。



「科学者個人の自律性に依拠する、すべての学術分野」
この点は、大事。研究とは行き着くところ個人だということ。自律とは、その個人が自らを律することだから、きちんと自分で考えようというのがアカデミーの基本的立場だということだ。

これらの行動規範の遵守は、科学的知識の質を保証するため、
科学とは、真理たる知識の創造だから、その知識は揺るがない「質」を持たねばならない。そのためには最終的には個人に帰する研究を担う個人が倫理的に行動規範を守っているかどうかにかかっているということ。戒め。

そして科学者個人及び科学者コミュニティが社会から信頼と尊敬を得るために不可欠
これは極めて大事。この信頼が揺らいでは、社会は何を指針に未来設計をしていいのか、何を基準に善悪の日常的判断をしていいのか迷走することになる。科学者と科学者コミュニティーはそれくらい重たい責任を自覚しなければならないと、自らを戒めている

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「科学者の行動規範」を読む(3)

2017-02-28 06:04:40 | 社会

科学者の行動規範を読む(3)

平成23 年3 月11 日に発生した東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故は、科学者が真
に社会からの信頼と負託に応えてきたかについて反省を迫ると共に、被災地域の復興と日本の再生に向
けて科学者が総力をあげて取り組むべき課題を提示した。さらに、科学がその健全な発達・発展によっ
て、より豊かな人間社会の実現に寄与するためには、科学者が社会に対する説明責任を果たし、科学と
社会、そして政策立案・決定者との健全な関係の構築と維持に自覚的に参画すると同時に、その行動を自
ら厳正に律するための倫理規範を確立する必要がある。科学者の倫理は、社会が科学への理解を示し、
対話を求めるための基本的枠組みでもある。


「平成23 年3 月11 日に発生した東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故は、科学者が真
に社会からの信頼と負託に応えてきたかについて反省を迫ると共に、被災地域の復興と日本の再生に向
けて科学者が総力をあげて取り組むべき課題を提示した。」

これは、科学者自身が「想定外」と発言したり、福島原発事故に絡む、SPEED問題、原発設計やそのあと始末を巡り、未だに不信を拭い去り切れていないことをいう。それでもそこから脱却するには科学の力、科学者の総力が求められているのもまた間違いない。

さらに、科学がその健全な発達・発展によって、より豊かな人間社会の実現に寄与するためには、科学者が社会に対する説明責任を果たし、科学と社会、そして政策立案・決定者との健全な関係の構築と維持に自覚的に参画すると同時に、その行動を自ら厳正に律するための倫理規範を確立する必要がある。

ここも区切ってみよう。

より豊かな人間社会の実現
「豊か」衣食住の充足、肉体的健康、精神的安心、安定ということだろう。

「科学がその健全な発達・発展によって---寄与する」


自然から切り取った知識の体系(=科学)が「健全な発展・発達」とは?

知識が拡大・深化するだけではいけないのか?自然科学が中立的だとすると、その広がりと深さはバランスよく発達。発展することが重要で、「健全」とはそのバランスのことを言う。それは一見、人間社会に役立たないことも含むだろう。なぜなら中立だから。役に立つ「科学」だけを「健全」と呼ぶとバランスが崩れ、結果として「科学の発展」を阻害するかもしれない。したがって、この「科学がその健全な発達・発展によって-」の部分の「健全」は不要かもしれない。

科学者が社会に対する説明責任を果たし、科学と社会、そして政策立案・決定者との健全な関係の構築と維持に自覚的に参画する

科学者(新たな知識とその体系を生み出すことを職業とする者」は、自覚的、積極的に社会とコミットせよということ。
現在、大学進学率は約50%。そのうち理系は20%(?)。そして職業として科学を担う者は更に少ない。それらが、新たに得た難解な知識を社会へ説明することは、欠かせない。なぜなら多くの科学者は税金によって研究活動をしているから。政策立案・決定者は特に大事。なぜなら、「豊かな人間社会の実現」には彼らが直接影響を持つから。
ともすると、知識拡大深化にのめり込み、「象牙の塔」に篭りがちな科学者への注意喚起だ。ここには同意。だから私もこのブログで思いの一端を記している。

「その行動を自ら厳正に律するための倫理規範を確立する必要がある」
ここも同意。組織はもちろんのこと、個人レベルまでこの規範を念頭におけるように常に心がけなければならない。すべての大学、機関、や学会などに行動規範や倫理規定はあるだろうか?


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする