場末の雑文置き場

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「仮面ライダーエグゼイド」感想

2017年09月02日 | 特撮
ストーリーのことなど

ストーリー展開が早くて中弛みがなく、見ていて退屈することはなかった。物語に引き込む力は強い作品だったんじゃないかと思う。でも整合性や説得力に欠けるところもあって、どこかモヤモヤしか感じも残った。途中まではすごい傑作になるんじゃないかと思ったんだけど、最終的には可もなく不可もなく、って感じかな。

人気キャラだったらしい貴利矢をかなり早めの段階であっさり殺したときは、その思い切りの良さに感心した。もしかしたら全滅エンドになるかも、なんて思ったりもした。
期待値が最高に高まったのがクロニクル編の導入部。一般市民の犠牲者が出たり、ポッピーが敵になったりして、これからのハードな展開を予想させてワクワクした。

終わってみると、案外ヌルい話だったな。消滅した一般の人達は戻らないまま終わったけど、メインキャラは都合良くみんな生き返るしね。特に貴利矢の復活エピソードは無理やり感があった。医療物だし、「一つしかない命」を散々強調してきたから、安易な復活なんてさせないだろうと途中までは信じてたのに。


バグスターの扱い

クロニクル編の最初の回でパラドが「ゲームでやられる側の気持ちを人間たちに思い知らせてやりたい」みたいなことを言っていて、その辺を掘り下げてくれるのかとすごく期待していたが、そこは見事に裏切られた。
パラドが「改心」してしまったことはとても残念だった。パラドは人間の傲慢さに激しい怒りを感じていて、バグスターの命も大事なんだと訴えたかったのかと思ってたから。結局、パラドには信念も何もありませんでした、命の大切さを理解していないだけでした、ってことになったしまったのにすごくガッカリしてしまった。

そもそも、バグスターが悪だとは私には思えなかったんだよな。人間の命を養分にしているから、人間からしたらたしかに脅威だろう。でもかれらは自分が生きるためにそうしているだけだし、人間だって自分が生きるために他の生き物の命をもらっているわけで。だからあれは正義と悪の戦いではなくお互いの生存を懸けた戦いだったと思ってる。

永夢は最終的には多少考えを変えたのかもしれないけど、基本的にライダー達やニコは平気でバグスターの命を奪っていて、それを特になんとも思っていない。でもバグスターであるポッピーやパラドは自分が奪った人間の命のことで悩んだり反省したりしなきゃいけない。人間にとって人間が一番大切なのはそりゃそうだろうが、他の生き物までそういう感覚を持つことが正しいとされている感じなのが嫌だ。人間様はどれだけ偉いんだよ。

最終的に「バグスターも命」って結論を永夢が出したところは、落としどころとしてはまあいいんじゃないかと思った。人間様に都合がいい存在でいる限りは生存を許してやるよ、って感じに見えなくもないが。


キャラクター

永夢は基本的にはいい人なんだろうけど、たまに何を考えているのかわからなくなったりして、ちょっと怖かった。感情移入はしにくかった。主人公なのに。

飛彩は嫌いではないけど、問診のときでもポケットに手を突っ込んでいるのはどうかと思う。無愛想なのと無礼なのとは違うんだから、そこはきちんとしてほしい。あと、滑舌もうちょっと頑張って。 

黎斗や貴利矢は、最初は好きだったけど復活で萎えた。それぞれ印象的な最期だったから、あのまま終わってほしかった。特に貴利矢の良さはあの最初の出番の短さと死に様にあったと思っていたので。黎斗が最後まで改心もせず一貫してクズのままだった点は良かったけどね。

ポッピーはひたすら人間に都合のいいポジションで、なんだか可哀想に思えてならなかった。「バグスターを根絶したい」とか言ってる奴らの側にいてどんな気持ちだったんだろう。それで罪悪感が増幅されて、あんな自殺行為に走ったのかな。
敵サイドにいたときのポッピーのほうが好きだったな。生き生きとして魅力的に見えたし、低音ボイスの変身がかっこよかった。すぐ味方に戻ってしまったのがとても残念だった。

一番気に入ったキャラクターは、仲間思いという点では最初から最後まで一貫していたグラファイト兄貴かな。素直にかっこいいと思えた。

逆に苦手なのはニコ。言葉遣いが乱暴なことはそれほど気にならないんだが、自己中すぎるところと、すぐに人を殴るところが駄目だった。しかも、やり返してこない相手にだけ暴力を振るうところが最悪。普段偉そうな割に、強そうな、または苦手な相手が来たら大我の後ろに隠れるヘタレだし。
たとえニコがクソガキでも周りの大人が怒ったり諌めたりしたら印象も多分違ったんだけど、大我がニコに甘すぎた。
そういうことで、大我の印象もあまり良くない。ついでに、未成年の女の子とアラサーおっさんなのに、カップルのようにも見える描写にしていたところもどうかと思う。


ジェンダー

一時期特撮のジェンダー感に対する批判でポッピーが守られる女とか言われていて、それに対する反論があったりした記憶がある。たしかにポッピーの件については違うと思うけど、だからといってこの作品がジェンダー的視点から見て問題がないかと言えば全くそんなことはない。
ジェンダーとかPCとか言い出すと面倒くさい奴だと思われがちだけど、それでも書くよ。

登場人物の男女比にものすごく偏りがある……のはまあいいとして。
ポッピーは(明日那)は時々看護師の格好をしているけど、スカートスタイルなんだよね。しかも短めの。実際の看護師は今はパンツスタイルが多数派のはずなのに。この辺りは制作側のおっさんの趣味なんだろうな、と感じた。

そして数少ない女性キャラクターであるポッピー(明日那)が看護師スタイルなのに対して、医療関係の男性キャラクターは全員医者だという点も引っかかる。医者=男性、看護師=女性っていう固定観念を子供に植え付けることになりそうで。
医者じゃなくて看護師の男性ライダーが一人くらいはいても良かったと思う。あと、チョイ役でもいいから女性医師を出してほしかった。