福田首相が暫定税率維持の理由に「年間で2.6兆円の税収不足、消費税で言えば1%に該当する。地方では財源不足が生じ、地方経済が停滞してしまう」(≪ガソリン税など暫定税率の維持強調 福田首相≫(asahi.com/2008年03月29日20時37分)とするのは予算バラ撒き政治で政権を維持してきた自民党の政府首脳として当然の理屈である。
逆説するなら、カネをバラ撒く即物性のみで政策を成り立たせてきた。そういった即物性が常に有り余っていたから、迂回政治献金だとか、事務所費の架空計上だとか、官僚の裏ガネだとか着服だとか健康器具の購入だとか共々、自分自身にもカネをバラ撒くことを体質とすることになったのだろう。
【即物性】「物質的なものや金銭・利害などを重視する性質」
税金という他人(=国民)のカネである。他人にばかりバラ撒くはずはない。自分にもバラ撒いて初めて満足のいくバランスが取れる。
地方も中央のバラ撒き政治を王道を行く政治手法だと見習い、慣らされ、自らも予算バラ撒き政治に邁進、建物や道路を造るだけではないカネというハコモノだけ纏わせて中身の目的はスローガンで終わらせる政策を地方の政治としてきた。だからこそのどこもかしこもの右へ倣えの借金財政だろろう。
道路特定財源の一般財源化と暫定税率の廃止をつましい生活を送っている一般家庭主婦の遣り繰り算段を学ぶショック療法とする絶好の機会とすべきである。そうでもしなければ、身体の隅々にまで症状が進行した治療不可能なカネというハコモノだけ纏わせる予算バラ撒き体質ではないか。カネよりも頭を使うことを学ぶべきである。
同「asahi.com」記事は福田首相が暫定税率維持のためにさらに次のような理由も挙げていると伝えている。
<また、日本のガソリン課税が西欧諸国と比べて「決して高くない」と指摘。「安いガソリンでCO2(二酸化炭素)排出を助長するような方向でいいのか。環境問題の取り組みを真剣に考えている国々から考えれば全く逆行だ」と述べ、北海道洞爺湖サミットの議長国として、税率引き下げは好ましくないとの考えも示した。>
厭らしくも町村官房長官も右へ倣えの同じことを言っている。
「世界に冠たる環境先進国が、ガソリンを値下げしたら、誰が日本の言うことを信用するだろうか」
何をしようと、何もせずとも、「日本の言うことを信用する」国などあるものか。
ガソリンが安くなると車を走らせることが多くなって、その分二酸化炭素排出量が多くなり、地球環境温暖化対策に逆行する。そうしたくても多くの国民がガソリンの値下げだけの理由で、そうできる生活環境にないことぐらい日本の政治を預かっている者として気づかないのだろうか。
穀類のバイオ燃料シフトでパンやうどんその他の小麦粉製品の値上がり、あるいは大豆加工食品や乳製品の値上がり、原油高や中国からの安い野菜の輸入の停滞等による野菜類の値上げ、今日4月1日から電気やガス料金も値上げに向かうと言うし、年金破綻の恐れからの将来の生活不安まで加えると、政府や地方自治体のカネを使うだけの予算バラ撒きと違って、車を無暗やたらと走らせていられない現状となっている。浮いた金額をそのまま内部留保する家庭が多いはずである。
車が排出する二酸化炭素排出を抑制する方向で地球温暖化防止を真剣に考えているとするなら、今以上の道路建設を抑制する方向で車の走行をも抑制する政策を掲げるべきではないだろうか。例えば車から路面電車等の非二酸化炭素排出交通機関への乗換えを進めていてもよさそうだが、そういう政策を積極的に進めもせずに「地方はまだ道路建設を必要している」の口実で道路を造っていったなら、併行してガソリンの値段に関係なく車の走行を促し、「CO2排出を助長」することとなって現在以上の「誰が日本の言うことを信用するだろうか」の滑稽な状況に立ち至らない保証はない。
いわば必要最小限の道路建設にとどめる。と同時に路面電車等の非二酸化炭素排出交通機関への乗換えを進める政策を取るべきを、そうはせずに「環境問題の取り組みを真剣に考えている国々から考えれば全く逆行だ」だとか、「世界に冠たる環境先進国が、ガソリンを値下げしたら、誰が日本の言うことを信用するだろうか」などというのは薄汚いマヤカシ以外の何ものでもない。
揮発油税関連の暫定税率の期限切れ廃止に伴って道路関係事業の執行延期を行う地方が出ていると言うことだが、現在の道路状況で県民生活が特に困難を来たしているという県があるわけではない。東国原は道路が整備されていないから「三次救急が70分以上かかるんですよ。二次救急よりも30分以上かかるんですよ」といったことを言っていたが、だったら救急車を出動要請があるまで消防署に待機させておくのではなく、それぞれの車両が本部と連絡を取りながら地域全体をバランスよくカバーできる配置体制でパトロールさせるといった方法も有効ではないだろうか。
出動要請があったなら、パトロール中の最寄りの救急車を派遣する。いわば患者宅までの到着時間を縮めることで患者宅から病院までの時間を補う方法である。そのために台数を増やさなければならないということなら、ある程度は増車しなければならないが、道路建設とその維持費よりも安く上がるはずである。
冬柴国交相も<「国が直轄する道路整備事業は中止するか相当、遅延することになる」と述べ、災害など緊急の場合や既に支出が決まっている事業を除き国が行う新規の道路整備事業や継続事業の大部分について1か月半余りにわたって予算の執行を凍結する方針を示し>たと今朝のNHKニュース(朝5時)が伝えていたが、あの嫌味な男である、野党に対する当てつけの気分も手伝って記者会見に臨んだに違いない。
だが、増田総務相は将来的に自治体の歳入欠陥を国として補填する考えを示しているというし、民主党の小沢代表も暫定税率分は地方に返すと言っている。この点は与野党合意でスムーズに原状回復と行くだろうが、だからと言って元のカネバラ撒き政治に戻っていいというわけではなく、今為すべきことは国も地方も財政赤字を抱えている実態をそれぞれの経営が満足のいく形で機能してこなかったことの証明なのだとしっかりと受け止め、道路政策だけを取り上げるのではなく、カネを使うだけの政治から脱却して歳入にそれ相応に応じた経営を心がけるキッカケとすべきだろう。
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≪ガソリン税など暫定税率の維持強調 福田首相≫(asahi.com/2008年03月29日20時37分)
福田首相は29日、内閣記者会のインタビューに応じ、4月1日の失効が確実となったガソリン税などの暫定税率について、地方自治体の財政や環境問題への影響を理由に、「今の税率水準は維持しなければいけない」と語った。政府・与党は4月末にも、衆院で再議決して暫定税率を復活させる構えだが、首相の発言は、首相が一般財源化を約束した09年度以降も、暫定税率を含む課税水準は維持すべきだとの考えを示したものだ。
暫定税率撤廃の影響については「年間で2.6兆円の税収不足、消費税で言えば1%に該当する。地方では財源不足が生じ、地方経済が停滞してしまう」と強調。暫定税率の即時撤廃を求める民主党を「地方の声を無視」していると批判。
また、日本のガソリン課税が西欧諸国と比べて「決して高くない」と指摘。「安いガソリンでCO2(二酸化炭素)排出を助長するような方向でいいのか。環境問題の取り組みを真剣に考えている国々から考えれば全く逆行だ」と述べ、北海道洞爺湖サミットの議長国として、税率引き下げは好ましくないとの考えも示した。
一方、暫定税率復活のための衆院での再議決については「その前にやることはある。そのことに全力を尽くす」と述べるにとどめた。ただ、町村官房長官は29日の東京都内での講演で「一刻も早く参院で(租税特別措置法改正案を)否決でも可決でもしていただいた上で、また25円上げさせていただきたい」と、政府首脳として初めて再議決の可能性に言及した。
首相は衆院の解散・総選挙については、景気が「踊り場」にあり、経済・金融情勢が不安定だとして「そういうこと(解散)よりも国民が安心して暮らせるように将来へのしっかりとした方向性を示す必要がある。その一つが社会保障の議論だ」と述べ、早期解散に否定的な考えを示した。
衆院での3分の2の議席を保つため、与党内に解散を先延ばしすべきだとの声があることについては「あくまでも政治情勢だ」と語った。予算成立を受けた4月の内閣改造については「こういう状況で改造の話は全く考えられない」と述べた。
中国チベット自治区などでの騒乱については「声高に批判したり、オリンピックと関連させることをうんぬんすることが、今の段階で適当か、よく考えなければいけない」と冷静に対応する考えを強調した。