「北朝鮮、聖火リレーの安全に絶対の自信」は強固な軍事独裁体制の裏返し

2008-04-14 12:10:21 | Weblog

 
「北朝鮮、聖火リレーの安全に絶対の自信」なる文言は4月12日(08年)の「AFPBBニュース」の見出し。

 <【4月12日 AFP】北朝鮮の五輪委員会は、北京五輪の聖火リレーに対する一連の抗議活動を強く批判し、今月下旬に北朝鮮国内を聖火が通過する際には、抗議活動は一切起きないとの見方を明らかにした。朝鮮中央通信(Korean Central News Agency)が12日伝えた。
 北朝鮮五輪委のスポークスマンは「このイベントは全国民が調和ある1つの家族を形成し、労働党の下に心を一つにしている共和国(北朝鮮)内で、計画に従って最も安全かつ円滑に実施される」と述べたという。
 中国は北朝鮮の数少ない同盟国で、北朝鮮はチベット(Tibet)自治区内はもとより、欧米諸国におけるチベット支持者による抗議活動も強く非難してきた。聖火は4月28日に平壌(ピョンヤン、Pyongyang)入りする。
 厳しく統制されている北朝鮮では、無許可のデモはほとんど行われない。(c)AFP>・・・・・

 この自信は金正日が軍事独裁政治を武器として北朝鮮国民の活動・思想を完璧に統制下に置いている確信に裏打ちされたものなのは誰の目にも明らかである。

 このことを裏返すなら、軍事独裁政治が可能とする「抗議活動は一切起きない」聖火リレーということになる。

 聖火ランナーも聖火リレーを出迎える沿道の観衆も北朝鮮当局によって厳選、動員された官製そのものだろうから、「抗議活動は一切起き」ようはずもなく、当然物々しい警備も必要ではないから、聖火リレーのあるべき姿を示すことができるだろう。観衆の祝福・歓声も上からそうするよう動員された意識に従った演技というだけではなく、将軍様や当局に自分たちの忠実さを売り込む阿諛追従の積極性も加わった一意専心だろうから、万が一の間違いもなしに「調和ある1つの家族を形成し、労働党の下に心を一つにしている共和国(北朝鮮)内で、計画に従って最も安全かつ円滑に実施される」ことは既に確定していることだと言える。。

 万が一の間違いが起きるときは金正日の軍事独裁体制が崩壊するとき以外にない。

 金正日は取材制限を一切設けずに外国メディアの立ち入りを自由に許して、見事成功させることになる「抗議活動は一切起きない」熱烈・歓迎一色の場面の数々を取材させ、平和の象徴たる聖火リレーはこうあるべきだとする姿を世界に次々と発信させることになるだろう。

 さらに金正日は「抗議活動は一切起きない」聖火リレーを実現させた自らの統治能力と抗議活動が起きなかった数少ない国として、中国に恩を売ることになるに違いない。勿論これまで何度もしてきたように見返りに何らかの経済援助を引き出すために。

 聖火リレーを秩序正しく整然と執り行ったとしても、それが国民に自由な言論・自由な活動を認めない軍事独裁政治が可能とした「秩序」なら意味もない恐ろしい「秩序」でしかないが、中国の自国民やチベットに対する人権抑圧と共にオリンピックに冠せられる「平和」なるキーワードに対して見事な逆説を描くことになる。

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