野田首相がノーネクタイのクールビズを演じようが演じまいが、国民を誤魔化す答弁となっている

2012-07-30 10:51:09 | Weblog

 7月27日(2012年)の参院「社会保障と税の一体改革特別委員会」――NHK中継から。

 宮沢洋一自民党議員「質問に入る前に、この委員会に朝から出席をしまして、この閣僚席、答弁席見まして、若干違和感を持っております。

 と申しますのは、総理、ちゃんと背広を着て、長袖のシャツを着て、ネクタイを締めています。岡田副総理もそう。安住財務大臣、重要閣僚もそう。

 あとから来られた川端大臣だけがクールビズ。

 あの、今年の夏、昨年に引き続いて今年の夏は全国に、まさにその、省エネをお願いしている。そういう政府が中心なってやっている。そしてそのひとつの象徴みたいなものが、クールビズ、なわけであります。

 なるべく部屋の室温を上げて欲しい。エアコンも付けないでくれと。こういうことをお願いしている立場の方がですね、今大変暑い日ですよ。大変暑い日、総理、副総理、そして最重要閣僚の財務大臣がみーんな、クールビズでないっていうのは大変違和感があります。本気で省エネをお願いするつもりですか」

 宮沢洋一議員本人はネクタイ無しで、シャツの胸元を開いている。本人がネクタイをきっちりとしていたのでは、こんな質問はできない。

 野田首相は立ち上がって答弁席に立ったものの、すぐには適当な答弁が見つからなかったのだろう、数秒立ち尽くした後、左背後を振返って頭を下げる。テレビ画面からでは顔は写っていなかったが、消費税増税法案等の共同提案者として答弁席に座っていたピンク色のドレスの池坊保子公明党議員が頭を下げて応じた様子が窺える。

 「SankeiBiz」によると、テレビでは声が聞こえなかったが、「首相のネクタイ姿、好きよ」と声をかけたらしい。

 そのエールに応えて、謝礼の意味で頭を下げたらしい。周囲で笑いが起こり、野田首相も笑い顔になっていた。

 野田首相「あのー、ま、あのー、よく分かります、省エネの徹底。特に節電のお願いを今全国各地でお願いをしております。その率先垂範の意味でクールビズ、ということで、ありますけれども、あのー、まあ、(胸に左手を軽く当て、笑いながら首を傾げてから)なかなかですね、取ったり外したりすること多いんですよね。

 あの、外国のお客が来るとか多い、かったりするんで、どうしてもネクタイを着用せざるを得ない状況が、あの、続いております。あの、気持は本当に節電のお願いを国民の皆様にお願いしている立場ですので、クールビズは徹底しなければいけませんが、まあ、あの、私は、まあ、服装のみならず、他の部分でしっかり徹底していきたいと思います」

 宮沢議員「まあ、あのー、何かマスコミに総理は、あのー、クールビズはあんまり似合わないという提言を受けられたとかいう話がありましたが、今日は丸一日テレビの中継です。国会中継。

 あまり外国人の方と会う日程もないと思いますんで、そういう時はしっかりとクールビズ、省エネ、節電というものを国民の理解を求めるためにも率先して頂きたい。それだけ申し上げておきます」

 野田首相がもしここで、「国を上げて節電をお願いしている立場として、節電に結びつく軽装を率先して心がけるべくクールビズを採用すべきを、すっかり失念していました、迂闊でした」と素直に謝罪したなら、国民に何らかの好印象を与えたはずだ。

 だが、「外国のお客が来るとか多い、かったりするんで、どうしてもネクタイを着用せざるを得ない状況が、あの、続いております」と、関係ない場所でのネクタイ着用を持ち出して、決して素直とは言えないゴマカシの答弁をしている。

 外国の要人と会う場所は会う場所、国会の場は国会の場であって、場所はそれぞれに異なる。場所の違いに応じた服装が許されていないというならウソ・ゴマカシとならないが、許されていることをさも許されていないかのように誤魔化した発言となっている。
 
 このゴマカシは国会という公の場での一国の首相の言葉である以上、国民を欺くゴマカシである。

 また、外国要人と会う場合はネクタイ着用を金科玉条の慣習としなければならないわけではないはずだ。今年5月19日(2012年)のアメリカ大統領山荘キャンプデービッド開催のG8初日5月18日の夕食会兼会議ではオバマ米大統領はノーネクタイ出席と指定したそうだが、一人オランド・フランス大統領がネクタイをきっちりと締めて出席したという。

 野田首相自身はノーネクタイで出席している写真が残っている。

 首相官邸で外国要人と会う場合でも、前以て「日本では国民に節電をお願いしている立場上、我々にしてもエアコンの温度を上げて節電を心がけている関係で、服装の点でノーネクタイのクールビズの軽装で応えているから、ノーネクタイで出席してください」とお願いすることもできるはずである。

 そういった発想もないから、場所の違いを無視してネクタイ着用の必要性を持ち出したりしたのだろう。

 宮沢議員は野田首相のネクタイ姿をマスコミにクールビズはあんまり似合わないという提言を受けたことを理由に挙げているが、上記「SankeiBiz」記事では岡田副総理がネクタイ姿を進言したとなっている。

 いずれが事実であったとしても、国民に対する印象を基準として選択したネクタイ姿ということになって、マスコミを筆頭として岡田副総理の念頭ばかりか、野田首相の念頭にも節電という意識は一切なかったことになる。

 そういった意識があったなら、似合う似合わないを基準とはせずに率先垂範を示すためにノーネクタイを選んだはずだ。

 政府が中心となって、特に消費電力量の多いエアコンの温度を上げてくれと節電をお願いしている。節電をお願いする際の危惧として、エアコンの温度を上げ過ぎて、部屋にいながらにして、昼間ばかりか夜中であっても熱中症に罹って、最悪死なせてしまう高齢者の存在まで思い浮かべているのだろうか。

 あるいは毎年のように猛暑の時期を迎えると、エアコンを部屋に備える余裕もない低所得の高齢者が熱中症で死んでいく悲惨な事態まで広げて思い浮かべることがあるのだろうか。

 部屋にエアコンがありながら、電気代が高いことから、普段から節約節約で思う存分かけることができないところへ持ってきて、国を上げての節電の掛け声を口実に節電への協力だと自分に納得させてエアコンを付けないで我慢して、結果として熱中症にかかってしまう高齢者も存在するはずだ。

 あるいはエアコンをかけないでいれば、熱中症に罹って死ぬことができると意図的にエアコンを停止し、エアコンを遠隔操作の自殺の道具に替えて夜を迎える高齢者が存在しないと誰が断言できるだろうか。

 世の中には節電の協力を積極的にできる人間と、節電の掛け声とは無関係に節電せざるを得ない生活状況に追い込まれている人間がいる。

 野田首相が節電というキーワードからそういった存在まで連想する想像力を持っていたなら、ネクタイを締めていたことの言い訳に外国人との面会を口実とすることはできなかったに違いない。

 政治家たちのクールビズ論議は生活困窮者とは無縁の世界の出来事として展開されているように思えて仕方がない。


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