デフレと貧困の関係

2009-11-21 17:51:04 | Weblog
 低所得生活者の立場からしたら、物価が安くなるデフレは大歓迎だが、経済全体が縮小して政府財政が税収不足を来たし、介護保険だの健康保険だの、その他の税金、さらに最終的には消費税が上がるのも困る。経済には素人だが、素人なりに不況に最も影響を受ける低所得生活者の立場から、日本の今の経済を考えてみた。

 政府が昨20日、デフレを公式宣言した。政府がデフレと認定するのは2006年6月以来33年5カ月ぶりだそうだ。(《政府、デフレを公式宣言=景気下押しを警戒-11月月例経済報告》「時事ドットコム」

 同記事は〈デフレが日本経済の先行きに与える影響について「景気を下押しするリスクが存在する」と言及。価格競争の激化が企業収益を圧迫し、賃金低下や個人消費の低迷につながりかねない状況に警戒感を強めている。〉としているが、そもそもの出発点はリーマン・ショックをキッカケとした100年に一度と言われる極度の景気悪化が「個人消費の低迷」を誘い込んだ点にあると思うのだが。巷間よく言われているように、景気悪化による先行き不安から一般消費者が財布の紐を固く締めた。

 結果、モノが売れない―売るために企業は低価格競争に入る―利益率の低さが企業収益を圧迫する―低価格競争に敗れた企業の倒産―生き残ったとしても、企業収益の減少が賃金の押下げ要因となる―賃金低下が一層の消費意欲を減退させ、なおのこと需要を冷え込ませる―企業は一段と低価格競争に向かわざるを得ない―企業収益の一段の圧化・・・・といった悪循環に陥り、国の経済全体を悪化・収縮させていく。

 いわば消費者の財布の紐の締め具合に合わせて商品価格が連動し、この関係が経済全体に影響していく。

 しかし日本と他の先進国との財政状況といった点やその国の経済構造が内需主導型か外需主導型かでは条件を違えても、リーマン・ショックによる景気悪化が世界に及んだ点、このことに於ける条件はさして違わないはずだが、同じ昨20日の「asahi.com」記事――《日本はデフレを懸念 OECD見通し 世界経済は復調》は政府がデフレ宣言した20日の1日前の19日に経済協力開発機構(OECD)が加盟国・地域の経済見通しを公表、OECDの見方として、〈09年は世界同時不況の影響で大幅なマイナス成長だが、10年からは中国など回復が著しいアジアへの輸出増や、各国の景気対策でプラスに転じる。〉と報じていて、外需主導型の日本に有利な景気回復の条件が生じることを伝えている。

 にも関わらず、OECDの「各国・地域の実質成長率通し」は

 米   国 (09年)マイナス2.5% (10年)2.5% (11年)2.8%
 日   本 (09年)マイナス5.3% (10年)1.8% (11年)2.0%
 ユーロ圏  (09年)マイナス4.0% (10年)0.9% (11年)1.7%
 OECD全体  (09年)マイナス3.5% (10年)1.9% (11年)2.5%

 となっていて、OECDは日本に対して、〈戦後最悪の景気悪化から立ち直りつつあると分析する一方、政府の助成金がなければ失業率はさらに2%程度悪化しかねないと指摘。物価下落が続くデフレ状態にあり、企業収益の悪化などの悪影響を避けるためにも、日本銀行は対策に全力をあげるべきだと〉と指摘、〈「デフレ脱却には歳出拡大が必要だが、歳出は大きく膨らみ、(政策的に)動ける余地は少ない。女性の社会進出を進めたり、環境技術を発展させたりすることで新たな成長をめざす必要がある」〉と日本の今後取るべき課題を挙げたと言う。

 世界の“外需”を大きな部分引き受けてきたアメリカが他国に“外需”を頼る日本とプラスマイナスでさして変わらない成長が予想されている。消費者の財布の紐の締め具合が国の経済に影響していく関係から判断すると、日米とも消費者の財布の紐の緩め具合にしてもほぼ同程度固いと言うことではないだろうか。

 アメリカも消費者物価の下落や新規住宅着工件数の減少等からデフレ懸念が囁かれているそうだが、日本の今回のデフ現象が日本の消費者の財布の紐の締め方がきつ過ぎたことが原因だとすると、勿論米国の消費者も同じ状況にあるだろうが、使っていいカネに余裕がないことを教えている。いわば収入に見合う支出が経済界の供給に満足に応える規模にない、規模以下だということであろう。

 このことはテレビでやっていたことだが、商品の値を下げても売り上げは確実に落ちているという商店の言葉が証明している。さらに言葉と違えて言うと、消費者が商品の当たり前の値段に対してだけではなく、下げた値段に対しても相対的に収入不足の貧困に陥っている――いわば欲しいものが清々と買えないという意味での貧困に陥っていると言うことではないだろうか。

 だから、安売りでもなかなか手が出ない。手を出したとしても、必要最小限の買物しかしない。

 勿論一方にはエコ減税だ、エコポイントだとより高価格商品に走る消費者も存在するが、消費動向を左右するのはより一般的な消費者であって、そのような消費者に於ける商品の購買に対する収入不足――相対的貧困とは生活水準の低下状況を言うはずである。

 ここで思い出すのは日本の貧困率の高さである。「毎日jp」記事――《貧困率:06年時、日本15・7% 先進国で際立つ高水準--政府初算出》が既に題名で示しているが、長妻昭厚生労働相が20日、初算出した「相対的貧困率」が、06年時点で15・7%だったと発表している。

 〈相対的貧困率は、国民の年収分布の中央値と比較して、半分に満たない国民の割合〉だそうだが、この貧困率の算出については経済協力開発機構(OECD)がこれまで行ってきた。自民党政府は自らが算出してOECDの調査を裏付けることとなった場合、政治の失態を自ら証明することになる恐れからか、政府としては一度も算出しなかった、と言うよりも算出に目をつぶっていた疑いがあるが、民主党に政権が変わって、比較可能性の観点からだろう、OECDの算出方法を踏襲して早々と算出を行い、逆に自民党政治の失政を炙り出す結果となっている。

 同記事は(OECD)の03年のデータとして、日本は加盟30カ国の中で4番目に貧困率が高い堂々の14・9%だと伝えている。また同様に03年OECD調査の「子供(17歳以下)の相対的貧困率」は30カ国中、19位の13・7%に対して民主党政府調査の06年数値は14・2%と03年当時よりも悪化しているとしている。

 民主党調査の子どもの14.2%は7人に1人が「貧困」に当たるそうだ。(日テレNEWS24

 さらに「毎日jp」記事は03年のOECDデータで貧困率がもっとも悪いのはメキシコ(18・4%)で、トルコ(17・5%)、米国(17・1%)と続き、最も低いのはデンマークとスウェーデンの5・3%だと伝えている。

 このOECD調査の03年にしても民主党政府調査の06年にしても、02年2月から07年10月まで続いた「戦後最長景気」期間内に位置する年で、この景気によってトヨタ、ソニー、キャノン等々、日本を代表する大企業が軒並み戦後最高益を出した時期に相当する。

 03年が14・9%の貧困率、06年が15.7%の貧困率。「戦後最長景気」は企業の一人勝ちで、利益配分が末端の労働者まで行き渡らなかったと言われているが、低賃金の派遣や請負といった非正規社員を大量雇用することで人件費を抑制したことによる企業利益の確保を構造としていたから、当然の利益配分だった。

 「戦後最長景気」期間も貧困率が高く、今回の戦後最大の不況で非正規社員の大量解雇から正社員の解雇、賃金抑制で、貧困率はさらに上がっているに違いない。

 記事は次のように長妻厚労相の声を伝えている。

 「OECDの中でもワーストの範ちゅうに入っており、ナショナルミニマム(国が保障する最低限度の生活)と連動して考えたい。来年度から支給する子ども手当で貧困率がどう変化するかもシミュレーションしていく」

 「戦後最長景気」期間、例え雇用形態が非正規社員であっても、日本の企業が正当な賃金で雇用していたなら、その分戦後最高益が幾分削がれることになるだろうが、今回の不況でもそのときの蓄えが幾分かは効いて、日本の消費者が現在のように財布の紐を固く締めることはなかったのではないだろうか。

 このことがモノが売れない、売れないから価格競争に走って自分で自分の首を絞めるといった状況を少しは先延ばしし、例えデフレに陥るのは時間の問題だとしても、そのデフレをも先延ばしできたのではないだろうか。

 このことを教訓とするなら、末端の人間であっても、雇用する以上、正当な賃金体系に組み入れることが景気を長引かせる有効な方法と言えるように思える。

 企業が低賃金で労働者を使い利益を上げる利益追求の構造のみならず、労働者を派遣して、派遣した労働者の労働した分の頭をハネ、実際に労働に従事しない人間が懐を肥やすという派遣・請負の利益追求構造にしても、あまりにも不純に見える。


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