菅首相のロ大統領国後訪問「許し難い暴挙」非難は薄汚い自己正当化に彩られた犬の遠吠え

2011-02-08 09:56:03 | Weblog



 菅首相が昨2月7日(2011年)午後、東京都千代田区で開かれた北方領土返還要求全国大会で挨拶として述べた、昨2010年11月1日のメドベージェフ大統領の国後島訪問を「許し難い暴挙」と非難、メドベージェフ国後島訪問12日後の11月13日の菅・メドベージェフ日ロ首脳会談で、「強く抗議した」と言っているのをニュースでテレビで聞いていて思わず感じた印象は、「ウソつけ」だった。

 菅首相の挨拶をニュースで知って誰もウソつけとは思わなかったのだろうか。幸いにも「47NEWS」記事――《首相、ロ大統領の国後訪問を非難 「許し難い暴挙」》(2011/02/07 13:30 【共同通信】)に《動画》が貼り付けてあった。

 菅首相「北方四島問題は、日本外交にとって、極めて、重要な、課題であります。昨年、11月、メドベージェフ、ロシア大統領の、・・・・・北方領土、国後島、訪問は、許し難い暴挙であり、その直後の、APEC首脳会談の際に行われた、私と、メドベージェフロシア大統領との、会談に於いても、強く抗議をいたしました。

 私としては、これまで、両国の、間の、諸合意、諸文章を起訴に、北方四島の、帰属の問題を、最終的に解決して、平和条約を締結するという、基本方針に従い、引き続き、強い意志を持って、ロシアとの交渉を、粘り強く進めていく考えであります」

 時折顔を上げるのみで殆んど下を向いて原稿を読む挨拶でありながら、なぜか分からないが、「メドベージェフ、ロシア大統領の」と言ってから、「北方領土、国後島、訪問は」につなげるまでに原稿に目を落としたまま4秒程時間がかかった。北方四島問題ではメドベージェフ大統領と国後島訪問は既に一対の関連事項となっているはずである。しかも原稿を読んでいたにも関わらず、4秒程の途切れがあった。

 考え得ることはテーブルに置いた原稿を立った姿勢で読み上げていたために原稿までの距離があり、目で文字を追っていたものの、一瞬次に読むべき文字を見失ってしまったための4秒程の途切れということではないか。

 そうとしか考えようのない沈黙であったが、メドベージェフ大統領と国後島訪問を一対の関連事項として頭に記憶しているはずだし、また記憶していなければならないはずだから、次に読むべき文字を見失っても自然と口について出るはずだが、それが出てこなかったということは頭の中にあることとしてではなく、あるいは気持の中にあることとしてではなく、力強い声を出して訴えてはいたが、北方四島の返還を痛切に願って出席していた元四島住民に対して原稿を読み上げることで国後島訪問の事実を伝えようとしていたからだろう。

 いわば元島民の切実な思いを共有していなかったということである。

 勿論このことを知ったのは動画を見てからの印象である。「ウソつけ」と思ったのは記事が、(「許し難い暴挙」と激しく批判した)〈首相発言は、ロシア政府高官の相次ぐ領土訪問に対する日本政府の不快感を表明するとともに、野党からの「外交面の失策」との批判をかわす狙いがあるとみられる。ただ、これまで以上に厳しい非難に対しロシア側が反発する可能性もある。〉と解説しているが、ロシアの反発を考えた場合、そういった発言はできようはずがないと否定したからでもない。日本側が四島返還を求めれば何らかの反発は当然の予定事項としなければならないのだから、菅首相が「許し難い暴挙」だと言おうと言わなかろうと本人の自由である。

 問題は実際に「許し難い暴挙」だとの非難感情に駆られたなら、それはすぐに冷めてしまう突発的・一時的な感情に収めてしまうわけにはいかず、認識化することによって四島返還が実現するまで菅首相の中で維持されなければならない。あるいは一国の指導者として返還に立ち向かっている以上、「許し難い暴挙」だとする非難感情、あるいは非難認識は終始一貫維持されなければならない使命と責任を負う。

 そしてそのような非難感情、あるいは非難認識に則って国後島訪問から12日後の11月13日菅・メドベージェフ大統領日ロ首脳会談に臨み、メドベージェフ大統領に「強く抗議をいたしました」と言っている。

 当然、その“強い抗議”はメドベージェフ大統領の国後島訪問によって駆られることとなった「許し難い暴挙」だと受け止めた激しい非難感情・非難認識を忠実に表現する抗議でなければならないはずであり、さらに「政治は結果責任」である以上、菅首相が示した“強い抗議”は抗議どおりの結果を見て初めて、菅首相自身の抗議能力は優れていることになり、抗議にかかわる使命と責任を果たしたと言える。

 だが、北方領土は日本固有の領土であると取り上げ、「大統領の北方領土訪問は、国民感情からも受け入れられない」と抗議したと多くのマスコミが伝えていた菅・メドベージェフ日ロ首脳会談終了後の当日にメドベージェフ大統領自身によってツイッターに「日本の首相に会い、解決できない論争より経済協力の方が有益だと伝えた」(47NEWS)と書き込まれていて、首脳会談での菅首相の「許し難い暴挙」だとする非難感情、あるいは非難認識に則った“強い抗議”が何ら生きていない無残な結末を見せている。

 このことは首脳会談後のロシア高官や閣僚の北方四島訪問やロシア当局の時折発する四島ロシア領土視発言からも証明できる効果のない“強い抗議”であった。

 特に今月2月4日のセルジュコフロシア国防相の択捉島と国後島訪問は北方領土返還要求全国大会の開催と前原外相の訪ロを控えた出来事であり、意味を成さない“強い抗議”となっていたばかりか、「許し難い暴挙」の放任状態となっていることを示している。

 実際に「許し難い暴挙」だとする文脈からの“強い抗議”を行った結果の何ら効果のないロシア側の対応だったのか、そういった“強い抗議”を行わなかった結果としてある現在の四島状況なのかである。

 前者なら、菅首相の抗議能力の無能を示す事例となり、後者なら菅首相はウソをついたことになる。そのウソも「47NEWS」記事が解説していた「〈野党からの「外交面の失策」との批判をかわす狙い〉からのウソとなる。

 福山内閣官房副長官が会談の内容を伝えている記事がある。《ロシア大統領、菅首相に領土めぐり感情的な表現回避を要請》ロイター/2010年11月13日 20:58)

 記事題名はロシアのラブロフ外相が明らかにした会談時の「大統領は、感情的な表現は役に立たないため、これをやめるよう要請したうえで、経済を優先するよう提案した」とする発言から取ったものである。

 片や日本側は福山官房副長官が明らかにしている。〈福山官房副長官によると、菅首相は首脳会談で、大統領の国後島訪問は日本の立場や日本国民の感情から受け入れられないと抗議。大統領は、領土問題はロシアにとっても極めて神経質な問題だと述べるにとどめた。

 そのうえで菅首相は、北方四島の帰属問題を解決して平和条約を締結したいと発言。それに対して大統領は、あらゆる分野で協力し、特に経済分野での関係を発展させることで、両国の雰囲気を改善していくべきだと応じた。〉――

 この福山官房副長官が発信した情報は明らかにラブロフ外相が発信した情報と違っているばかりか、菅首相が北方領土返還要求全国大会の挨拶で述べた「メドベージェフ、ロシア大統領の、・・・・・北方領土、国後島、訪問は、許し難い暴挙であり、その直後の、APEC首脳会談の際に行われた、私と、メドベージェフロシア大統領との、会談に於いても、強く抗議をいたしました」とする経緯を一切見て取ることはできない情報となっている。いわば“強い抗議”を行ったと窺うことはできない。

 この疑問を《【APEC】菅外交総括、成果なく隠蔽ばかり 鳩山以下との声まで… 》MSN産経//2010.11.15 23:19)が明らかにしてくれる。

 記事は冒頭、次のように書いている。〈政権浮揚の期待を込め、菅直人首相が議長として臨んだアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議はどんな成果を残したか。自由貿易の推進を確認し、政府は「非常に成果があった」(仙谷由人官房長官)と自画自賛するが、日本を取り巻く厳しい国際情勢は何ら改善していない。それどころか、頼み込むようにして実現させた中国、ロシアとの首脳会談をめぐっては、民主党政権の隠蔽(いんぺい)体質ばかりが際立った。〉――

 日中会談に関しての情報隠蔽について記事は、〈首相は8日(11月)、日中首脳会談では「必ず尖閣諸島がわが国固有の領土であり、領土問題は存在しないと言う」と明言していた。それなのに福山氏は13日の記者説明で、首相が「日本の確固たる立場」を伝えたと述べただけ。「外交上のやりとりはすぐに全面公開するものではない」と事実関係を秘した。〉と書いている。

 日ロ首脳会談については、〈隠蔽体質は対ロシアでも表れた。首相は8日、「北方四島がわが国固有の領土であるという主張は明確に伝える」と強調した。だが、大統領との会談では北方領土訪問には抗議したものの、「わが国固有の領土」という表現は避けた。〉

 だが、メドベージェフ大統領自身が日ロ首脳会談当日にツイッターで主たる会談内容を垂れ流していることがら、隠し切れないと観念したのだろう。

 福山官房副長官の日ロ首脳会談11月13日から2日後の11月15日のNHK番組での発言を伝えている。

 福山官房副長官「大統領は『自分が北方領土に行くのが悪いことなのか。当然のことだ』という言い方をした」

 福山官房副長官が情報発信した日ロ首脳会談に於けるメドベージェフ大統領の対応を「ロイター」記事が伝える、〈大統領は、領土問題はロシアにとっても極めて神経質な問題だと述べるにとどめた。〉から「MSN産経」記事が伝える「大統領は『自分が北方領土に行くのが悪いことなのか。当然のことだ』という言い方をした」に変わった。

 菅首相自身は11月14日(2010年)のAPEC首脳会議終了間際の議長記者会見で次のように発言している。

 菅首相「米国とは、日米同盟関係を更に深化していこうという点で合意し、中国とは戦略的互恵関係の発展について合意し、ロシアとは領土問題の解決と経済協力について、2つのフィールドで話し合おうということで合意をし、それぞれ前進することができたと、このように思っております」(首相官邸HP

 「それぞれ前進することができた」という言葉で会談の成功を謳い上げる情報発信となっている。

 とても「許し難い暴挙」だとする激しい非難感情・非難認識に則った“強い抗議”の情報発信はどこからも窺うことはできない。この手の怒りの感情に従って「強く抗議をいたしました」はウソをついたのである。

 元々指導力のない人間が抗議能力にしても備えているはずはないから、「強く抗議」できるはずはないと思っていた上に、当時から大統領の国後島訪問を「許し難い暴挙」だとする、菅首相のどのような意思表示も情報発信も記憶にないから、「ウソつけ」の咄嗟の第一印象を持ったのだったが、では何のためのウソなのだろうか。

 当時尖閣沖中国漁船衝突事件以降の対中外交やメドベージェフ大統領国後島訪問に対する対ロ外交で菅首相は外交能力を疑われていた。世論調査に於ける内閣支持率の低下も主たる理由が外交能力に対する信頼のなさが影響していた。上記「MSN産経」記事題名も《鳩山以下との声まで》と、その外交能力を低く評価しているし、最初に取上げた「47NEWS」記事も「外交面の失策」の存在を指摘している。

 このような評価を払拭するためにロシア大統領の国後訪問を激しい非難感情・非難認識をまぶせた「許し難い暴挙」だとすることで自己の一連の外交無能力を埋め合わせて自己正当化を図ろうとしたのだろう。それが「強く抗議をいたしました」事実がないにも関わらず「強く抗議をいたしました」の事実に反するウソの事実となって現れた。

 「強く抗議をいたしました」が虚偽の事実である以上、「強く抗議」は「許し難い暴挙」に反応した具体的行動としてあるのだから、「許し難い暴挙」自体も虚偽の非難感情・虚偽の非難認識となる。

 すべてが虚偽であるなら、例えどのように自己正当化を図ろうと、それが自己正当化を目的としている以上、どのような非難も抗議も最初から犬の遠吠えを性格としていることになる。

 実際にも「許し難い暴挙」発言に対して早速ロシア・ラブロフ外相が「日本は第2次大戦の結果を無条件に受け入れるべき」(日テレNEWS24)と反論、菅首相の発言が何ら効果のない犬の遠吠えで終わっていることを証明している。

 情けない男が一国の首相を務めている。

 参考までに上記「47NEWS」記事の動画が前原外相の挨拶も取上げていたため、記載しておく。原稿を一切読まずに出席者の方を向いて話していたが、「外相、交渉として」とわざわざ断っている文言が引っかかった。首脳同士の話ではない、外相同士の話だから、決定的な進展を見るところまで進まない、そこまで話を持ち出す権限はないと前以て責任問題に手を打っているように聞こえたのだが、単なる勘繰りに過ぎないかもしれない。

 前原外相「今週、ロシアに行ってまいります。外相、交渉として、領土問題、しっかり日本の立場を述べて、そして、首脳会談につなげ、1日も早く、日本の立場をしっかりと踏まえた、解決策を見い出すために、みなさん方の思いを受け止めて、全身全霊の交渉を努力してまいります」



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