2008年9月のリーマンショック以降の「100年に一度と言われる金融不況」から日本の経済は2009年後半以降、アジア向け輸出拡大を受けて、海外とのモノやサービスの取引や投資などの取引状況を示す経常収支の黒字が4カ月連続で増加。それ以降もアジア向け輸出は拡大し続けて、日本の景気回復に向けた足取りに貢献した。
《4月の貿易黒字7423億円 アジア向け輸出が牽引》(asahi.com/2010年5月27日15時22分)
財務省が2010年5月27日発表した2010年4月の貿易統計(通関ベース、速報)――
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7423億円の13ヶ月連続の黒字。
黒字額は世界同時不況(「100年に一度の金融不況」)で落ち込んでいた前年同月の約15倍の一大回復。
中国を始めとするアジア向けの輸出が牽引。
輸出額は前年同月比40.4%増の5兆8897億円。
地域別輸出額――
アジア向け――45.3%増の3兆3237億円(輸出額全体の約6割)
このうち中国向けは41.4%増の1兆1501億円(4月としては過去最高記録)
中国一国でアジア全体の約半分近くを占めるたわけである。
いわば、アジア向け輸出と言うとき常に中心は中国であり、世界全体から見ても、中国は日本にとってアメリカを抜いて最重要の輸出国となっている。
このことは日本経済維持の大事なお客様になっているとも言える。
対して国内景気――
政府は6月18日に月例経済報告を発表。完全失業率が5%超える中、「景気は、着実に持ち直してきており、自律的回復への基盤が整いつつある」(YOMIURI ONLINE記事)程度の景気回復。
この国内景気の「自律的回復への基盤が整いつつある」も、アジア向け中心の好調な輸出に支えられた企業の設備投資改善と個人消費の僅かながらの持ち直しが原因だという。外需から内需への波及と言うわけである。
勿論アジア向け中心の、その中心は中国であることは断るまでもない。
日本の景気を支える要因が中国への輸出ばかりではない。ここに来て7月1日から中国人観光客に対する個人観光ビザ(査証)発給要件を大幅に緩和。
《中国客を熱烈歓迎 百貨店が通訳や付き添いサービス》(MSN産経/2010.7.2 12:52)
6月までは年収25万元までを限度としていたが、7月以降、10万元を限度。25万元限度では対象世帯が160万世帯であったが、10万元限度ではその10倍の1600世帯に膨れ上がるという。
〈首都圏の店舗では、通訳や買い物の付き添い、宿泊先への商品配送などを無料で行うサービスがスタートしており、今後、大阪にもサービスを拡大する方針。人民元相場の弾力化による元高も消費拡大の追い風とみて、特需期待が強まっている。〉――
輸出も中国特需、観光客も中国特需の様相を呈しつつあることになる。
どの店も中国語を話せる、中国人を含めた従業員を置き、中国語の品書き、中国語のパンフレットを置いて対応、中国人客中には何十万と現金で纏め買いする客もいるとテレビで放送していたが、記事は同様のことを伝えている。
〈東京・日本橋の高島屋東京店(東京都中央区)では、近接する香港系高級ホテル「シャングリラ・ホテル東京」と連携し、宿泊する中国人観光客向けに、買い物時に同店の中国人従業員が通訳として付き添う無料サービスを6月末に始めた。通訳業務が可能な中国人従業員を8人に増やし、1日に3組程度の利用を目指すという。
同様に三越伊勢丹ホールディングスも、9月に増床開業する三越銀座店(中央区)で、外国人観光客の買い物に付き添う「コンシェルジュ」サービスを実施する。店の入り口そばにカウンターを設け、中国語や英語に堪能な8人のスタッフが買い物に同行し、商品の説明や通訳を行う。また、購入品の免税手続きなども行える観光案内所も新設するなど、中国人観光客の囲い込みを急いでいる。〉――
百貨店の外国人観光客の平均購入金額は約7万円、免税対象外の化粧品などを含めた外国人の年間売上高は約400億円程度だが、今後5年間で1000億円規模にまで伸びる見通しで、百貨店来客の8割を中国本土からの観光客が占めるという。
例え中国人観光ビザの発給要件の年収対象を下げることで発給対象者の所得水準が低下することはあっても、「日本に旅行する際、知人や親戚(しんせき)から買い物を頼まれるケースが多く、消費そのものは低下しない」と見ていて、業績回復の起爆剤にと期待は高まる一方だと記事は結んでいる。
日本全国、中国人様々の一大狂乱フィーバー状態だと言ったら、大袈裟に過ぎるだろうか。
《個人観光ビザ:大幅緩和 中国人客に熱視線 中間層に拡大、市場規模1兆円も》(毎日jp2010年7月2日)は別の情報を教えてくれる。
日本政府観光局調査――
中国人観光客 00年――約 35万人
09年――約101万人
これは訪日外国人全体が落ち込む中での成績だそうだ。
観光庁は中国人観光客を13年に390万人、16年に600万人に増やす目標を掲げる。
中国人観光客が滞日中に使う金額は平均で20万~30万円。単純計算で年2000億~3000億円の市場規模。
記事は、〈ビザ緩和で増える観光客の所得層が下がったとしても、600万人なら1兆円規模になる可能性がある。〉としている。
〈個人消費が伸び悩む中、この「成長市場」をあてこんで、対応を強化する動きが目立つ。〉
まさしく中国人様々。中国及び中国人を語らずして、日本の経済を語ること勿れである。
だが、日本が沈んでいく中で中国及び中国人の経済力は“様々”フィーバー状態で価値を上げつつあるが、戦争中から戦後暫くにかけて、中国人を「チャンコロ」と称し、取るに足らない存在として侮蔑してきた。
「Wikipedia」――〈この「ちゃんころ」という言葉は、日本が中国大陸に積極的に出兵する昭和初期から頻繁に使われるようになる。中国服のことを「チャン服」、中華料理のことを「チャン料」などと形容詞的に略して用いることもあった。しかし戦中に日本人が中国人に対して用いる蔑称として定着し、現在では差別用語とされ政治・経済等の公の場で用いなくなった。しかし、近年では私的に使用する人は減少していたが、中国または中国人に対してへの反感が高まるに従いインターネット上で再び中国人の蔑称として使用する例が増えて来ている。〉――
1923年(大正12)の関東大震災時には全国で数千人の朝鮮人虐殺が行われたが、同時に数百人の中国人も虐殺されていると、『日本史広辞典』(山川出版社)は伝えている。
〈政府はこれらの事件の隠蔽を謀った。朝鮮人・中国人蔑視観などにより、世論の批判も亀戸・甘粕事件に比べて弱かった。〉――
朝鮮人に対しては、「チョウゼン」、中国人に対しては、既に触れているように、「チャンコロ」の蔑称を与えていた。
それが現在では、中国人“様々”――
だが、現在の中国人“様々”フィーバーの中で忘れてはならないことは、外国人実習生の問題であろう。《外国人実習生 初の過労死認定》(NHK/10年7月2日 18時58分)
日本の技術を学ぶための外国人研修制度で来日した31歳の中国人実習生が亡くなる直前の1か月の残業が100時間を超えていたなどが原因して08年6月に過労死している。
外国人実習生の過労死が認められたのは初めてだという。
〈亡くなった蒋さんを含め、外国人実習生3人に対し、この金属加工会社が最低賃金を大きく下回る時給400円しか残業代を払っていなかったうえ、実際の勤務時間が記録されたタイムカードをシュレッダーで破棄していた〉という。
これまでも外国人実習生に対するパスポートを取り上げた上でに賃金未払いや最低賃金を下回る低賃金雇用、法定残業時間を大幅に上回る長時間過酷労働、日本語を学ぶ時間を与えない契約違反等々の残酷物語が散々に伝えられてきた。
外国人実習生の多くは中国人が占める。〈(2006年度版JITCO白書より)入国する外国人研修生の国籍は、中国が55,156人と全体の66.2%を占める。〉(Wikipedia)――
一方でカネを持っている観光客として有難がり、一方で有難い低賃金労働者として酷使する。いわば一方は大事な人間として扱い、一方は人間と看做さない扱い方をする。
同じ日本人でありながら、それぞれに利害が異なるから、異なる扱い方をする。
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