(1)旭川女子中学生イジメ自死に見る学校教育者ではない人間の学校社会でののさばりと教育評論家尾木直樹のイジメ防止に役立たずな解説

2022-05-31 08:16:04 | 教育
 (1)旭旭川女子中学生イジメ自死に見る学校教育者ではない人間の学校社会でののさばりと教育評論家尾木直樹のイジメ防止に役立たずな解説
 《旭川市教育委員会第三者委員会(旭川市いじめ防止等対策委員会)の「中間報告」》
  (2)旭川女子中学生イジメ自死に見る学校教育者ではない人間の学校社会でののさばりと教育評論家尾木直樹のイジメ防止に役立たずな解説
 《「NHKクローズアップ現代+」記事の母親の証言から見る学校の対応と教育評論家尾木直樹の役立たずな解説》
  (3)旭川女子中学生イジメ自死に見る学校教育者ではない人間の学校社会でののさばりと教育評論家尾木直樹のイジメ防止に役立たずな解説
 《「文春オンライン」記事に見る校長の教育者としての姿とイジメの定義変更のススメ》

 先ずは各マスコミ報道から旭川市中学校当該女子生徒が中学入学から転校、自死までの経緯とその年月日を簡単に記してみる。

2019年4月に北海道旭川市X中学校に入学
2019年5月連休中、深夜3時頃、上級生男子3人とW公園で合う約束(一つの事件)
2019年6月22日に死ぬと言って川への入水未遂と入院
2019年9月 退院・引っ越し、Z中学校に転校 PTSD発症、入院、通院
2021年2月13日に自宅を出た後、行方不明、
2021年3月23日に凍死体で発見

 次に旭川市教育委員会の対応をざっと追ってみる。全ての報道を覗いたわけではないから、抜け落ちがあるかもしれない。当該女子生徒が2019年6月末に川に入り入水未遂を起こしてパニック状態に陥り、そのまま入院した際、母親が娘のスマホを見て、彼女自身のわいせつ写真や動画を発見、履歴からだろう、送信されていることを知り、そのことを学校に伝えるが、学校はイジメ事案はなく、猥褻事案として対応。

 2019年9月(6月末の自殺未遂から3カ月後近辺)に旭川市教育委員会から女子生徒の事案報告を受けた北海道教育委員会は報告内容からいじめの疑いがあると判断、詳細な事実関係の把握と把握に応じた対応を口頭で指導。だが、旭川市教育委員会は指導を受けたという認識を持たず、調査を行わなかった。

 2021年4月下旬、2021年3月に凍死体で発見以後、文部科学省が音無しの構えでいる旭川市教育委員会に痺れを切らしたのかどうかは分からないが、北海道教育委員会に対して事実解明に向けて適切に旭川市教育委員会を指導・助言するよう指導。旭川市教育委員会は2021年4月27日(「asahi.com」記事)に外部有識者による第三者委員会(旭川市いじめ防止等対策委員会)を立ち上げることを決め、2カ月近辺後の2021年6月に調査を開始。文部科学省という"お上"の威光は凄い。鶴の一声である。北海道教育委員会は上部機関に位置していながら、旭川市教育委員会に対しての"お上"としての威光を電池切れ間近の懐中電灯の明かり程の役にしか立てることができなかったようだ。

 ところが、旭川市教育委員会は第三者委員会を立ち上げながら、その調査は遅々として進まず、旭川市長から「第三者委員会におけるスピード感をもった丁寧な調査の実施」、「可能な限り2021年内、遅くても2021年度内の最終報告の実施」の依頼を受けたのに対して旭川市教育委員会は2021年10月29日に市長に対して「現段階では、最終報告の明確な時期などを示すことは難しいが、市長の考えも踏まえ、1日も早く最終報告ができるよう調査を進める」と返答。それでも進捗状況が芳しくないと見てのことか、市長は最終報告期限を「遅くても2021年度内(2022年3月末)」から2022年6月末までに3カ月間引き伸ばす譲歩を行った。

 旭川市教育委員会第三者委員会は市長の譲歩に褌を、まだ使っているかどうか分からないが、締めてかかることにしたのか、調査開始から約10カ月が経過した2021年度切れ間近の2022年3月27日になって最終報告には手が届かない中間報告を旭川市内で母親と弁護団に読み上げたと言う。

 旭川市教育委員会が第三者委員会に諮問したのは4項目

1、いじめの事実関係の調査と検証
2、当該生徒が死亡に至った過程の検証
3、学校と市教委の対応調査と課題検証
4、今後の再発防止策)〈文春オンライン記事から〉

 その1項目目の「いじめの事実関係の調査と検証」のみの報告となったために「中間報告」という体裁を取ることになった。第三者委員会は2022年4月15日に記者会見を開き、調査結果を報告し、記者の質問を受けた。2022年3月27日の中間報告の読み上げから19日もの経過後で、全てに亘って素早い対応となっていない原因は既に触れたように北海道教育委員会はイジメ事案と見ているのに対して旭川市教育委員会と学校はイジメ事案はなく、猥褻事案と見ていたことの認識の違いからそれぞれの聞き取りに齟齬を来していたからと考えられないこともない。もしかしたら、第三者委員会の中にも検証を経ても猥褻事案と見る委員がいて、記者会見という形での公開に手間取っていたのかもしれない。

 この記者会見の内容を以下の記事が詳細に報じていて、当初は要点のみを取り上げる予定だったが、既にリンク切れとなっていることから参考のために全文を参考引用することにした。中学校名と関係人物はローマ字で表記されているが、女子生徒のみが「女子生徒」と紹介してあって、男子生徒の場合は「男子生徒」と紹介してなく、在籍中学校名も最初のみの紹介で終わっていることから、読み進めても一目で把握できるようにどの中学校に在籍していて、男子生徒か女子生徒か、当該女子生徒から見て上級生であることを丸括弧を付けて適宜注釈の形で付記することにした。

 《全文掲載 旭川・中2凍死問題…第三者委員会“いじめ認定”6項目、性的行為の強要などに上級生の男女7人関与》(HBC北海道ニュース/2022/4/15(金) 15:39)

第三者委員会が公表した“いじめ認定”の詳細文

 去年3月、旭川市の公園で、当時、中学2年生だった廣瀬爽彩(ひろせ・さあや)さんが凍死した状態で見つかった問題をめぐり、背景にいじめがあったと認定した第三者委員会が15日午後、中間報告として詳細を公表しました。全文を掲載します(人権に配慮し、報告書の表現を一部修正しています)。

 【中間報告における公表事項】

【1】 2019年4月~6月の事実経過(いじめ事実関連の概要)

事実経過<1>廣瀬さんと上級生A、B、Cとの係わり

① 廣瀬さんは、X中学に入学後まもなく、X中学の上級生A(男子生徒)、B(男子生徒)と知り合い、LINEの登録を行い、メッセージの交換等をするようになった。その後、廣瀬さんはA、BとC(共にX中学上級生男子生徒)を含めたグループでオンラインバトルゲーム(以下、ゲームL)をするようになった。その前からA、B、C(共にX中学上級生男子生徒)は3人でゲームLをすることがあり、そのようなとき3人はゲームLをしながら、グループ通話で卑猥な「下ネタ」話をすることがあった。

② 廣瀬さんを入れて4人でゲームLをするときでも、A、B、Cは構わずにグループ通話の中で「下ネタ」話をしていた。あるとき、深夜3時ころまでゲームLをしたことがあって、そのときもA、B、C(共にX中学上級生男子生徒)は「下ネタ」話をした。

③ そのとき、ゲームLを終えた後、A(X中学上級生男子生徒)と廣瀬さんでLINEのやりとりが始まった。その中で廣瀬さんは、下着を着けている胸の画像をAに送った。また、廣瀬さんは、LINEのビデオ通話を使って性的行為の様子をAに見せた。

④ 4月中旬か下旬ころ、W公園で偶然A、B(共にX中学上級生男子生徒)と廣瀬さんが出会い、Bが一時その場を離れた間に、Aが廣瀬さんの身体を触ったことがあった。

⑤ 4月から5月にかけての連休中のある日、上記のメンバー4人で深夜3時ごろまでゲームLをしたことがあり、その中で、深夜を過ぎて補導されない時間になったから集まろうかというような話が出て、公園に集まる話になった。A、B、Cの3人(共にX中学上級生男子生徒)は結局外出しなかったが、誰もそのことを廣瀬さんに伝えなかった。廣瀬さんは、先輩であるAらとの約束を守るため、早朝自宅を出て行き、それに気付いた廣瀬さんの母親らが追いかけて引き止め、家に連れ戻した。

事実経過<2>廣瀬さんと上級生Dとの日常的なW公園での係わり

① X中学の上級生女子Dと廣瀬さんは、A、B、C(共にX中学上級生男子生徒)と一緒にゲームLをしたことで知り合い、2人ともW公園をよく訪れていたことから、W公園で会うことが多くなった。(X中学上級生女子)Dと廣瀬さんは、多いときは週に5日くらい、W公園で会って話をしたりしていた。

② 廣瀬さんは、塾に行く日、母親から飲み物や軽食を摂るためのお金を渡されていた。W公園で(X中学上級生女子)Dと一緒に居るとき、近くのコンビニ等へ2人で行って、菓子、飲み物、アイスクリーム等を買うことがあり、ほとんどの場合、廣瀬さんが(X中学上級生女子)Dの分まで代金を払っていた。W公園に小学生や(X中学上級生女子)Dの友人がいるときは、廣瀬さんがその子たちの分も買ってあげていた。回数、金額ははっきりしないが、5月中旬から6月中旬までの間、相当程度、頻繁にそのようなことがあったと考えられる。

事実経過<3>本人と上級生EとのLINEを通じての係わり

① Y中学の上級生男子Eは、(X中学上級生男子)Cと知り合いで、廣瀬さんとも面識があった。EはCから廣瀬さんがLINEのビデオ通話の中で性的行為の様子をAに見せたことがあるなどと聞いて、Cから教えてもらった廣瀬さんのLINEにメッセージを送ることにした。

② 6月3日(月)午後7時ころ、E(Y中学・上級生男子)から廣瀬さんへLINE登録の許可を求めるメッセージが送られ、廣瀬さんが許諾してLINEでのやり取りが始まった。この日の廣瀬さんとEのLINEのやり取りは4時間半ほどに及んでいるが、やり取りの内容はEが主導する性的な話題に終始している。Eはほぼ一貫して性的行為の動画送信を求めるメッセージを廣瀬さんに送り続けていて、その中には、動画が送信されない場合には、性行為をすることをにおわすような表現や、動画の拡散はしないことを告げるようなものも含まれていた。廣瀬さんはEからの動画送信の要求等を断り続けていたが、断り切れずに性的行為の様子を伝えたり、自分の下半身の画像を送信したりした。

③ 廣瀬さんからE(Y中学・上級生男子)に送られた画像は、その後、EからC(X中学上級生男子)、D(X中学上級生女子)、E、3人のLINEグループに送信されているが、この3人から更に拡散した事実は確認できない。ただし、Cは、6月23日(日)に、この画像をAとB(共にX中学の上級生)に見せている。

事実経過<4>6月15日(土)の出来事

① E(Y中学上級生男子)、F(上級生女子)、G(上級生女子)はY中学の同学年で、FとG(共にY中学上級生女子)の2人がEと遊ぶことはめったになかったが、この日は一緒に遊んでいた。同日、廣瀬さんが1人でW公園にいたところ、C(X中学校上級生男子)とD(X中学校上級生女子)が遊びに来て、そのすぐ後に、E(Y中学校上級生男子)、F(Y中学校上級生女子)、G(Y中学校上級生女子)の3人が合流する形になった。FとC、Dは面識があり、GとDは少し前に知り合った間柄であった。F、Gと廣瀬さんは初対面で、Dが廣瀬さんを紹介した。
 
② そのとき、C(X中学校上級生男子)とE(Y中学校上級生男子)が廣瀬さんが性的行為をしている、A(X中学の上級生)やE(Y中学上級生男子)に性的行為の画像を送っているなどと発言し、D(X中学校上級生女子)、F(Y中学校上級生女子)、G(Y中学校上級生女子)は廣瀬さんにその場でやってみせてと言った。廣瀬さんは、ここではできないと答えたが、3人はやってやってと言い、そのとき近くにいたZ小学校の児童数名も、事情をどの程度理解していたか定かではないが、同じように言い立てた。C(X中学校上級生男子)とE(Y中学校上級生男子)は、それを止めようとしなかった。廣瀬さんは初めは嫌がっていたが、断り切れず、性的行為をすることを受け入れた。

③ D、F、G、C、Eと廣瀬さんの6人は、W公園奥のベンチへ移動し、小学生たちを遠ざけ、ベンチに座る廣瀬さんを囲むようにして立った。廣瀬さんは、腰に回していたパーカーを前に回して隠すようにして、性的行為を行った。

事実経過<5>6月22日(土)の出来事

① この日、廣瀬さんは、午前中からW公園にいた。午後4時ころには、D(X中学校上級生女子)やE(Y中学校上級生男)、Z小学校の児童5~6人もW公園に来て遊んでいた。

② そうしたところ、E(Y中学校上級生男子)が廣瀬さんの仕草などを真似てからかった(6月15日の性的行為の様子を真似た可能性もある)。廣瀬さんは真似しないでくださいと言ったが、Eが面白がって挑発するように真似を続け、Eが知っている廣瀬さんの秘密を、その場で大声で言うかのような発言をしたところ、廣瀬さんは、泣きそうな表情になって怒り出し、Eを握り拳で叩いたり蹴ったりするような状況となった。廣瀬さんは、誰もわかってくれないとか、もう死にたいとか、いろいろなことを大声で怒るように言い続けた。

③ やがて、廣瀬さんは、もう死にますと言ってW公園西側を流れている川の方に向かって歩き出した。D(X中学校上級生女子)は、廣瀬さんの死ぬという趣旨の発言に対して、死ぬ気もないのに死ぬとか言ってんじゃないよなどと言った。廣瀬さんは川の方に走って行って川岸の柵を乗り越えて土手を降りたあと、川の流れ近くの草むらに立ってX中学へ電話をかけた。廣瀬さんは、電話に出た教員らに、死にたいと繰り返した。教員らは廣瀬さんを落ち着かせ、廣瀬さんがW公園にいることを聞きだした。そのころD(X中学校上級生女子)は土手を降りて廣瀬さんのところへ行っていて、廣瀬さんと電話を代わって状況を説明した。すると、廣瀬さんは、雨で増水していた川の流れに入り、膝下まで水に浸かった。

④ その後、現場にやって来たX中学の教員2名が、膝下くらいまで川の流れに浸かっていた廣瀬さんを川岸の草むらに引き上げて座らせた。そのとき廣瀬さんは、死にたい、生きたくないと繰り返しパニックになっていた。廣瀬さんの傍らに付き添っていたDと後から到着した教員1名を加えた4名でいろいろと話していくうちに、廣瀬さんは次第に落ち着きを取り戻した。その後、廣瀬さんは、教員らとX中学に行って休息したりしてから、N病院を受診することになり、受診後そのまま入院することとなった。

【2】 第三者委員会が「いじめ」として取り上げる事実等

以下では、上記【1】の事実経過<1>~<5>の記載内容に沿って、当委員会が「いじめ」として取り上げる事実等を示す。

<Ⅰ>当委員会が「いじめ」として取り上げる事実は以下の通り

1.事実経過<1>② ③ ④記載の事実に関して
上級生A、B、C(共にX中学上級生男子生徒)(3名が揃っていない場面も含む)が、グループ通話等において年少女児である廣瀬さんがいる状況でも性的な話題を繰り返したこと、個別のLINE(Aとの関係)のやり取りにおいても性的なやり取りがなされたこと、A(X中学上級生男子)が廣瀬さんと性的な意味での身体接触を持ったことは「いじめ」にあたる。

2.事実経過<1>⑤記載の事実に関して 
上級生A、B、C(共にX中学上級生男子生徒)が、深夜(ないし未明)の時間帯に廣瀬さんを含めて公園に集ろうという趣旨の会話をグループ通話で行ったこと、それを実行していないにもかかわらず、それを廣瀬さんに伝えなかったことは「いじめ」にあたる。

3.事実経過<2>②記載の事実に関して
上級生D(X中学校女子生徒)が、廣瀬さんがDの分のお菓子等の代金を負担する行為(おごり行為)を繰り返し受けていたことは「いじめ」にあたる。

4.事実経過<3>②記載の事実に関して
上級生E(Y中学校男子生徒)が、廣瀬さんとのLINEでのやり取りにおいて、性的な話題を長時間にわたって続けたこと、性的な動画の送信要求を長時間にわたって続けたことは「いじめ」にあたる。

5.事実経過<4>②③記載の事実に関して
上級生C(X中学上級生男子)、D(X中学校上級生女子)、E(Y中学校上級生男)、F(Y中学校上級生女子)、G(Y中学校上級生女子)が、廣瀬さんに対して性的行為に関する会話を行ったこと、廣瀬さんに対して性的行為の実行を繰り返し求めたこと、性的行為の実行を求める発言に対して静観したこと、廣瀬さんが性的行為に及ぶ一連の状況を見ていたことは「いじめ」にあたる。

6.事実経過<5>②③③記載の事実に関して
上級生E(Y中学校男子生徒)が廣瀬さんをからかい、廣瀬さんが拒否的な反応を示した後もからかうような行動(廣瀬さんの秘密をその場で大声で言うかのような発言をしたことを含む)を続けたこと、パニックのような状態になった廣瀬さんに対して上級生D(X中学校上級生女子)が突き放すような不適切な発言をしたことは「いじめ」にあたる。

<Ⅱ>第三者委員会が「いじめ」と同様に考える事実は以下の通り

1.事実経過<3>③記載の事実に関して
E(Y中学校上級生男)がC(X中学上級生男子生徒)、D(X中学校上級生女子)、E(Y中学校男子生徒)のLINEグループに廣瀬さんの性的画像を送信したこと、Cがこの画像をAとBに見せたことは「いじめ」と同様に考える必要がある(廣瀬さんに認識がある場合は「いじめ」にあたる)

上記送信行為及び提示行為は、廣瀬さんが直接関与していない行為であるため、廣瀬さんがこれらを認識していなければ、法の定義における主観的要件を満たさないこととなり、形式的には「いじめ」に該当しないものと考えざるを得ない。ただし、法の趣旨を踏まえて「いじめ」と同様に考える必要がある。

 以上の内容から事実経過のみを振り返って、自分なりの解釈を試みることにする。最初に自殺した当該女子生徒の性格を考えてみる。若者の心理を理解するには年を取り過ぎている80歳を超えた老人だから見当違いそのものかもしれないが、他者に迷惑を掛けない範囲内の言論の自由を口実に敢えて解釈してみる。言論の自由を超えて、誹謗中傷にまでいかないと思う。

 この「中間報告書」には当該女子生徒の同級生、あるいはクラスメートといった類いの姿が一切見えない。見えるのは全て上級生との人間関係であり、その上級生も男子生徒との友達関係が初めにあり、後から女子生徒が加わっているが、男子生徒が主体の友達関係となっている。一般的には小学校の頃から親しい女子生徒がクラスにいたなら、その女子生徒と、いなくて他処のクラスにいたならその女子生徒と、あるいは新しくクラスメートとなった女子の中からか友達を作っていき、それらの女子の中から同性の友達の輪を広げていき、そこにクラスメートや同学年や上級生の男子が加わっていくのが普通の展開のように思えるが、そうはなっていない。勿論、一般とは異なるバリエーションもあるだろうが、中学入学早々の友達付き合いが上級生の男子であり、その男子との付き合いが友達関係の中心というのは「中間報告書」の説明がそうなっているだけのことかもしれない。

 「中間報告書」から見えてくる友達関係だけと見て、そのような選択となる可能性としての一例について考えてみる。相手が同級生であれ、上級生であれ、たまに下級生からということもあるだろうが、一般的にはいきなりイジメの支配と被支配の関係から始まるわけではなく、そのような関係が徐々に形成されていくことを考えると、当該女子生徒が中学に入って最初に持った親しい友達関係が男子上級生を対象としていた場合の考えられる理由は彼女にとって女子生徒の自分を後輩の位置に置いて、男子生徒を先輩とした上下関係がより心地よい友達関係であったということが考えられる。このような上下関係には自身を後輩として上級生である先輩の庇護を求めたい欲求(年上の先輩に庇って貰いたい欲求)が往々にして隠されているはずである。

 先輩に庇護されていると十分に感じ取ることができたとき、同級生に対して男子の上級生と良好な関係を持てていることに誇らしさを持つこともあるだろうが、下の関係に位置する者が庇護を望む姿勢を当たり前としていると、自身を自分からは働きかけない非主体的存在、いわば受け身の存在とすることになり、逆に上の関係に位置する者が庇護する姿勢を日常化させてしまうと、その日常化がいい意味でも悪い意味でも支配という形を取りやくすくなる。いわば支配と従属という上下関係に進むこともありうる。支配と従属とは好きに言い聞かせる上と好きに言い聞かせられる下という関係であると言い換え可能で、支配が万が一にも下の関係に位置する者の意思を無視するところまで進むと、イジメという何らかの形を取るケースが生じることもありうる。

 当該女子生徒が同級生やクラスメートの女子との人間関係を築いていたとしても、あくまでもメインの人間関係は先輩男子との上下関係であり、上が下の庇護を求めて「先輩、先輩」と呼びかけて近づいてくる態度をいいことにその意思を自分たちの思い通りに操るようになることも可能性としてはある。良好な関係にあった間は、「先輩、先輩」と嬉々として呼びかけることになるだろう。

 後輩が何かと言うと親しみを込めて「先輩、先輩」と呼びかけることは先輩を常日頃から立てているからであって、相手を立てる心理には同時に自分を相手の影響下に置く心理が働くことになる。相手の影響下に自分を置かなければ、相手を立てたことにはならない。相手を立て、相手の影響下に自分を置くことによって、自分を庇護される存在に置くことができる。

 後輩として自身を下に置く関係が当たり前になったとき、自分が庇護されるためにも先輩の意向に従属することとイコールの行為となり、自身の務めとしがちとなる。例えその意向が少しぐらいの無理難題を含んでいたとしても、無理難題に対するためらいを振り払って潔く従うことが後輩の役目とすることもありうる。先輩が命じる部活の体罰でしかない、無理難題そのものの過酷なハードトレーニングに勇んで従うような現象を例として挙げることができる。無理難題が肉体と精神の限界を超えたとき、体罰死に至る事例がしばしば発生する。

 当該女子生徒はX中学に入学後まもなくに同校の上級生である男子生徒AとBとCと知り合い、LINEの登録を行い、オンライゲームをするようになった。AとBとCが3人でオンライゲームをするときには習慣的な話題としていたのだろう〈卑猥な「下ネタ」〉を当該女子生徒がゲームに加わっている際も口にした。どのような「下ネタ」なのか、明らかにされていないが、のちに彼女に性的行為――自慰行為なのだろう、させているところを見ると、ふざけながらだろうが、露骨なきらいのある「下ネタ」だったことが予想される。それも最初は小出しにして、相手の反応を窺いながら次第にエスカレートさせていったはずだ。

 当該女子生徒が〈卑猥な「下ネタ」〉を聞かされたとき、一見すると、拒絶反応を示さなかったように見えるが、同級生の女子とLINEのグループを作っていたなら、上級生男子とのLINEグループを抜け出していたかもしれない。だが、同級生女子とLINEグループを作っていたようには見えないし、男子先輩との上下関係を学校生活に於ける自身のふさわしい友達関係としていたとしたら、この関係を壊したくないために先輩の意向を立て、何でもない振りを装ったのかもしれないし、あるいは中高生女子を読者対象とした、スマホでも手軽に読むことのできる少女漫画に触れていたことがあったかして、登場人物の中高生男女が交わす性行為に関わる際どいセリフへの慣れもあり、〈卑猥な「下ネタ」〉に左程の抵抗感を持たなかったかもしれない。

 あるとき、X中学の上級生男子生徒のAとBとCと一緒に「下ネタ」を話題に交えながらオンラインゲームを深夜3時頃までしたのちにAのみとLINEの遣り取りが始まり、どういった受け答えの結果かは明らかにされていないが、下着を着けている胸の画像をAに送り、LINEのビデオ通話を使って自慰行為を見せた。オンラインゲーム時の「下ネタ」の続きとしてある下着を着けた胸の画像送信と自慰行為の動画送信だから、「下ネタ」は自慰をしたことがあるのか、ないのかといった話題も混じっていたと思われる。尤もそのときが初めての自慰についての話題だったかどうかははっきりしないが、性の知識について強がりたい年頃だから、漫画やネットの知識に基づいて自慰を小学生の頃から男女共に誰れもがしている行為だという結論を共有することになっていたのかもしれない。当該女子生徒にしても経験があるなしに関係なく自分の秘密にしておくべきことを勢い子どもではないところを見せたくて経験があると答えていたとも想像できる。

 そのような前提がなければ、いきなり自慰して見せてくれとなかなか切り出すことはできないはずだ。Aは自慰を次の段階に置いて、そこに進むためのステップとして最初に下着を着けた胸の画像を送らせたと思われるが、当該女子生徒を名字で呼んだか、名前で読んだか、あるいは「お前」という言葉を使って、「お前のだから、見たいんだ。ほかの子なら、見たいと思わない」といった言葉遣いで好きという感情から出た要求であるかのように装ったのかもしれない。実際には恋愛感情を持たない相手にであっても、男はそういった態度を取るのが大方の相場となっている。

 当該女子生徒は好きだという感情を仄めかされ、先輩の意向に添いたい気持ちも手伝って、自慰の経験があれば、経験どおりに、なければ、小学生の頃から男女共に誰れもがしている行為だという固定観念を力に誰でもの中の一人に自分も入るだけだといった意識で見せてしまったのかもしれない。ただ、何がしかの恋愛感情を示されて自分事として秘密で行うべきことを誰かに見せてしまったとき、その露出は相手の共有を前提とすることになる。いわば2人だけの秘密にする暗黙の契約を前提とすることになる。

 もしこういった経緯を取ったとしたら、当該女子生徒がAに恋愛感情をいだいたとしても不思議ではない。あるいは元々Aに先輩として好もしく感じていて、好きという感情を見せられて、要求に応じてしまったという可能性もありうる。

 その後、オンラインゲーム終了後の公園で当該女子生徒は同じ中学の上級生男子生徒A、B、Cの3人と会う約束をして、3人にすっぽかされた。Aは行くつもりだったかもしれないが、B、Cに引きづられてすっぽかしてしまった可能性も否定できない。だが、アルファベットで仮名をつける順位が最初の文字Aとなっているのは3人の中で主導的立場にいるからだと考えると、Aの意思が多分に入った、あるいはAが主導したすっぽかしと考えられなくもなく、すっぽかしはAが好きという感情から当該女子生徒の裸に興味を持ったわけではなく、単なる性的興味から裸を覗いてみたかっただけだったということになる。当該女子生徒からしたら、自分の秘密を見せたAにすっぽかされたことは相当にショックだったに違いない。

 但し他記事によると、当該女子生徒は家を出たものの、母親に止められて公園に行かなかった。すっぽかしを知ったのは部屋に戻って、最初にAにだろう、スマホを掛けるかして知ったはずだ。

 性的興味に過ぎなかったことは画像と動画の送信の事実をAがCに漏らしていたことからも判断できる。そしてその事実はCからY中学上級生男子Eに伝えられ、Eに「じゃあ俺も」と思わせたところをみると、AはCに手柄話として話したのだろう。Eは性的興味を満足させると同時に自分も手柄にしたくなった。EはCから教えてもらった当該女子生徒のLINEにメッセージを送り、二人はLINEを通じて会話するようになった。Eは性的な画像と動画配信に持っていく前準備としてだろう、当該女子生徒が興奮してくると考えたのか、性的なことしか口にしなかった。多分、頃合いを見計らって自慰行為の動画配信を求めた。当該女子生徒は最初は断っていたと言うから、EはAには下着を着けている胸の画像を配信し、自慰行為を動画配信で見せたではないか、そのことをAがCに話し、Cから聞いたといったことを伝えて、こういった場合の男の一般的態度として当該女子生徒がEに見せることの正当性、Eが見せられることの正当性の口実としたと思われる。

 当該女子生徒がAに見せたのは好きという感情を示されてのことだとしたら、AがB、Cと共に公園での待ち合わせをすっぽかしたことを知った時点でそれがニセの感情だということに既に気づいていたはずだし、見せたことがAの口から漏れてEにまで伝わっていることを知って、Aが好きという感情から自分の秘密を覗いてみたいと思ったのではないことをなおさらに気づかされただろうから、最初は断っていたものの最後はどうなってもいいという捨鉢な気持ちから見せてしまったという心理はありうる。

 Eに自慰行為の様子を伝えたり、下半身の画像を送信したりしたということだが、前者は実際に局部に指を這わせたかどうかは不明だが、声を喘がせたりして自慰行為を声で表現して聞かせたのかもしれない。画像の方は送信を受けたE本人とX中学校上級生男子、X中学校上級生女子の3人でグループを組んでいるLINE上に送信され、拡散されることになったということはEもAと同様に性的興味からの行為だったことを示すことになる。

 LINEを通じた性的な遣り取りはこの2人のみのようだが、当該女子生徒の自慰行為と画像の送信の事実は本人と上級生男女5人が居合わせたW公園で見せた一人のY中学校上級生のE本人とX中学校上級生Aが漏らした同中学校上級生CからX中学校とY中学校の上級生女子の3人に言い触らされることになった。Aの共有で止めておかなければならない秘密のAから始まった一連の暴露は当該女子生徒の存在を軽んじた行為、人格を無視した行為そのもので、当該女子生徒が知らないでいたなら、何ら問題は起きないが、もし知ることになったなら、その時点で心理的な攻撃の意味合いを取り、イジメの範疇にいれなければならない。

 心理的な攻撃にはあざけりの気持ちが多分に含まれることになるが、言い触らすこと自体があざける気持ちがなければできないことで、聞かされた女子上級生にその場で、多分、面白半分を装いながら、男子生徒と同じようにあざける気持ちを内心に抱えていたはずで、巧妙に隠して「やって見せてよ」と上級生の立場から要求したのだろう。この上級生の優越的立場からの下級生に対する要求はイジメと判断される事例となっている。

 言い触らされた上に見せてくれと言われて、彼女にしても感情の生きものである以上、恥ずかかっただろうし、怒りも込み上げてきたはずだが、ある意味、Aに裏切られ、Eに裏切られて、気に入れられ、良好な関係にあると思っていただろう上級生女子からもあざけりを混じえた理不尽な要求をされ、内心はパニックに陥って、頭の中は混乱が渦巻いていたことも考えられる。「中間報告書」は調査して得た事実だけを述べて、感情の働きやそのときどきの心の在り様には一切触れていないが、当該女子生徒が既に死亡していて、聞き取り対象とし得なかった限界かもしれないが、当該女子生徒は上級生女子にやって見せてと言われて、何の感情も持たずに「ここではできない」と答えたわけではないだろう。応ずることの恐れを持ちながら、先輩に従属する関係に慣らされていたとしたら、気持ちとは反対にその場の状況に合わせてしまって、結果的に自分で自分を追い詰めてしまうということもあり得る。

 結局、W公園奥のベンチに移動、そこに座って、周囲から見えないように全員して壁になって囲んだ中で自慰行為を行った。腰に回していたパーカーを前に回して隠すようにして行ったとしているから、局部は満足には見えなかったはずで、顔の表情や声や息の洩らし方で自慰行為を表現したのかもしれない。

 ところが、1週間後の同じ土曜日のW公園で当該女子生徒に対して彼女と2度目にLINEを通じて性的な遣り取りをしたY中学校上級生男子Eが本人の自慰行為の仕草を真似てからかった。「中間報告書」は1週間前の「性的行為の様子を真似た可能性もある」と書いているが、パーカーで隠すようにして行っているのだから、手を股間に持っていって動かしている仕草を真似するよりも顔の表情や声、息の仕方を真似した方がからかいの仕草としてはより効果的だったはずである。当該女子生徒は怒り、「誰もわかってくれない、もう死にます」と言ってW公園西側を流れている川の方に向かって歩き出した。X中学校上級生女子Dが「死ぬ気もないのに死ぬとか言ってんじゃないよな」と当該女子生徒の意志をウソと見る言葉を発した。実際の語尾は「言ってんじゃないよな」ではなく、昔はチンピラを真似て不良学生しか使わなかったと思うが、今では多くの若者が使う、強がり言葉と言うか、今はやりの「ねえよな」を語尾につけて「言ってんじゃねえよな」という言葉遣いをしたのではないだろうか。

 死ぬ気もなかった単なる演技だったかもしれない。そうだとしても、本人は亡くなって、もはや解き明かされることはないが、当該女子生徒なりに様々な感情が渦巻いていたはずだ。「もう死にます」という言葉だけを捉えて、それをウソと見たことで、引くに引けない気持ちにさせた可能性は否定できない。川に入る前に学校に電話を掛け、教師らに死にたいと繰り返した。X中学校上級生女子Dが当該女子生徒に代わって状況を説明している間に雨で増水していた川の流れに入り、膝下まで浸かった。現場に駆けつけた教師らが彼女を岸まで引き上げたが、パニック状態で「死にたい、生きたくない」繰り返した。色々と事情を聞いたり宥めたりしたのだろう、落ち着きを取り戻した彼女を学校に連れて行って休息させてから、N病院に行き、受診、そのまま入院することになった。

 ここまでが「中間報告」の事実経過である。X中学校に戻ることなく引っ越し、Z中学校に転校、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、入院や通院を繰り返して不登校状態だったという。2021年2月に自宅を出た後、行方不明となり、2021年3月に凍死体で発見された。2度目の死は失敗したら、みんなにバカにされると思い、確実な死を決行したということも考えられる。人が確実な死を決行するとき、深い孤独を抱えながら死に向かうように思える。勿論、当該女子生徒がそのような経過を取ったのかどうかは本人しか知る由もない。

 2019年6月末の川への入水未遂で学校は当該女子生徒の周囲で起きた出来事をどのような事態として把握し、深刻度のレベルをどの程度に置いて、それぞれの理解に応じてどのような対応を取っていたのかを以下の記事から見てみる。


  (2)旭川女子中学生イジメ自死に見る学校教育者ではない人間の学校社会でののさばりと教育評論家尾木直樹のイジメ防止に役立たずな解説
 《「NHKクローズアップ現代+」記事の母親の証言から見る学校の対応と教育評論家尾木直樹の役立たずな解説》
 (3)旭川女子中学生イジメ自死に見る学校教育者ではない人間の学校社会でののさばりと教育評論家尾木直樹のイジメ防止に役立たずな解説
 《「文春オンライン」記事に見る校長の教育者としての姿とイジメの定義変更のススメ》
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