昨日(2013年10月27日)の日曜討論で安倍内閣の経済政策に関する評価についての10月12日から15日にかけて行ったNHK世論調査を用いて、賃金が上がるかどうか質問していた。
先ずNHKの世論調査から。
安倍内閣の経済政策に対する評価
「大いに評価する」6%
「ある程度評価する」56%
「あまり評価しない」25%
「まったく評価しない」9%
安倍内閣の経済政策のもとでの労働者の賃金が上がる可能性
「上がる」11%
「上がらない」46%
「どちらともいえない」38%
この質問に対する各党の政策責任者である政務調査会長や会長代理の発言をNHKは記事で伝えているから、それを利用して、自民党と民主党と生活の党と共産党と社民党の発言のみを紹介することにする。
《賃上げや雇用の確保巡り各党議論》(NHK NEWS WEB/2013年10月27日 12時6分)
棚橋自民党政務調査会長代理「安倍政権が目指しているのは、経済界が潤うことではなく、ビジネスチャンスを広げて、ビジネスに対する投資を向上させることで賃上げが行われ、失業率が低くなることだ。大胆な規制改革などを行う『国家戦略特区』の構想を経済を成長させる起爆剤にして、ビジネスチャンスを広げることにより、雇用を増やし、労働者の待遇をよくしていく」
櫻井民主党政策調査会長「民主党政権のやり方に問題があったことは認めざるをえないが、今は株は上がっているものの、暮らしは何も変わっていないというのが多くの人たちの声だ。特に中小企業は、円安で原材料費が上がっても価格転嫁ができず、賃金を上げられない状態だ。政府は、賃上げに向け、地方や中小企業に目を向けるべきで、経団連頼みの政策では実現は難しい」
山下共産党書記局長代行「企業の内部留保270兆円を1%活用すれば8割の企業で月1万円の賃上げができるはずだ。賃金低下の最大の要因は非正規雇用であり、派遣労働や有期雇用を一層、拡大しようとする政府の姿勢は支離滅裂だ」
270兆円も溜め込む一方であるということは溜め込む方向への力学を1%取り崩す方向へ今まで一度も発動させなかった程に強固な力が働いていたということであって、賃上げが倍返しになる経済の保証――好景気が約束されない限り、その慣習は簡単には崩しはしないのではないだろうか。
玉城生活の党幹事長代理「賃金を上昇させるには、非正規雇用の人たちを正規雇用に変えた企業への減税を行うような政策が必要だ。アベノミクスの効果は地方にまでは至っておらず、今こそ地方に財源や主権を渡すべきだ」
吉川社民党政策審議会長代理「過去の経験から、企業の収益が増えても賃金には結びつかない。雇用分野での規制緩和も賃金を押し下げる圧力にしかならず、賃上げには労働側に有利になる規制の強化が求められる」――
安倍晋三が掲げる「国家戦略特区」を共産党が「解雇特区」と呼称したことに対して棚橋が「安倍晋三は成熟産業から成長産業への人材の移動を考えているので、できれば解雇特区と呼ばないで欲しい」と訴え、それに対して櫻井民主党政策調査会長が、「自民党は労働者派遣法改正の時も同じで、その人達の能力を生かすために他の産業にに移っていった方がいいのじゃないですかと言って派遣業を遣りやすくしただけのことで、今の惨状があるのではないか」と追及すると、棚橋は次のように発言している。
棚橋「つい最近の派遣事業の例の法案のとき、民主党さんがもう一度法案を出そうとしたときに労働者の方々の母が反対だったということは、ご記憶にあると思います。
『派遣労働を禁止したら、自分たちの職がなくなるだけで、自分たちは正社員になれるわけではない』というふうに、経済のパイが広がらない限りはそうはならないということは働いている方が一番よく分かっています」――
「例の法案」とは2010年10月の菅無能内閣が臨時国会に提出した製造業での派遣の原則禁止等を掲げた労働者派遣法改正案であって、民主・自民・公明3党で「製造派遣、登録型派遣の原則禁止」等を削除、いわば共同謀議による骨抜きを謀って自民党に政権が交代する9カ月前の民主党政権下の2012年3月8日に衆議院可決、3月28日参議院で可決、成立している。
派遣労働を禁止しても、必要な人材は雇用しないわけにはいかず、全員正社員という雇用の形を取ることになる。棚橋が言うように職がなくなるわけではない。
但し、企業はより安い人件費を求めて海外移転を加速させるか、従来の正社員の給与を抑えることで、派遣から正社員となった被雇用者の賃金を派遣時とほぼ変わらない金額で抑えるといった防御策に出るはずだ。
後者の場合、従来からの正社員と元派遣との賃金格差の縮小の可能性は期待できるかもしれないが、全体的賃金の低下は避けることができなくなる。
だが、右翼の軍国主義者安倍晋三はアベノミクスが謳う好循環を実現させるためには好循環の必要不可欠で最重要な条件である賃金上昇は実現させなければならない。
逆説するなら、賃金上昇の実現がなければ、アベノミクスの好循環は崩れ、経済政策そのものが崩壊する。いわば賃金上昇は安倍右翼内閣の経済政策に欠かすことのできない絶対的条件であり、一体的な位置を占めている。
にも関わらず、NHK世論調査では安倍内閣の経済政策に対して「大いに評価する」6%+「ある程度評価する」56%=62%も評価していながら、そのような経済政策のもとでの賃金上昇の可能性に関しては、「上がらない」が46%に対して「上がる」が11%の評価しか与えていない。
しかも「どちらともいえない」の半信半疑が38%も占めている。
賃金上昇が右翼の国家主義者の経済政策(=アベノミクス)に対する一体的条件である以上、経済政策そのものに評価を与えるなら、賃金上昇に関しても期待しなければならないはずだが、期待できずに疑っているということはその一体性を認めていないことになる。
当然、好循環の否定となる。賃金上昇のない好循環は逆説そのものである。
あるいは賃金上昇に関して期待不可なら、経済政策に対する評価も期待不可として初めて評価判断に一貫性を持たせ得る。
この一貫性のない相反する評価判断は国民の頭がどうかしたとしか思えない滑稽な大間違いでしかない。
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