安倍晋三は選挙対策のためには自衛隊の活動まで利用する姑息ななり振りのなさを振りまわしている

2015-12-20 07:10:04 | Weblog


 安倍政権が安全保障関連法の来年春施行に先立って国会承認を目指していた自衛隊が米軍を後方支援する際の手続きを定めた「日米物品役務相互提供協定(ACSA)」の改定案の来年1月4日召集の通常国会への提出を見送る方針を固めたと「YOMIURI ONLINE」が報じていている。   

 記事は理由を、〈来年夏の参院選を控えた国会審議は与野党間の対決機運が高まるとみられ、安全保障問題が再び紛糾するのを避ける狙いがある。〉と解説している。

 さらに次のように解説している。〈今年9月に成立した安保関連法は、集団的自衛権の行使が可能となる「存立危機事態」や、従来の周辺事態を改めた「重要影響事態」などを創設し、弾薬の提供を解禁した。平時でも、〈1〉警戒監視・情報収集〈2〉弾道ミサイル発射への対処――など、米軍を後方支援できるケースを追加した。日米ACSAはこれらの変更点に合わせ、規定の修正・追加を行う必要がある。〉と。

 砕けた言い方をすると、安全保障関連法の新たな規定に添って対米軍後方支援という名で自衛隊を米軍へ人材派遣する場合の弾薬や薬品、飲料水、その他の物品の提供と人材派遣業務(=役務)の提供についての新規取り決めの国会承認というわけだが、参院選前に改定案を国会提出して審議を紛糾させて選挙に悪影響を与えることはあってはならないから見送ることにしたというわけである。

 つまり選挙対策。答は誰にでも分かる。

 来年2016年夏に参院選挙があると分かっていた。では、何のために安全保障環境の悪化を言い立てて、急ぎに急いで強行採決までして安全保障関連法案を国会採決したのだろうか。

 法律が施行されても、機能しない状態で置く矛盾よりも選挙対策を優先させる。国民をバカにする行動そのものである。

 まるで借金の返済日は半年後だが、カネを用意しておかないと安心できないからと半年前にカネを用意しておいて、そのカネを借金返済日まで銀行に預けておくようなものである。来年春に施行されたとしても、「ACSA」(アクサ)が国会承認されない以上、安全保障関連法の対米後方支援関連の規定は銀行に預けておくのと同じである。

 中国が南シナ海に人工島を構築、人工島周辺の海域と空域を自国の領海・領空と宣言した。アメリカは2015年10月26日夜(日本時間27日午前)、「航行の自由作戦」の名の下、人工島の12カイリ(約22キロ)以内にイージス駆逐艦を派遣して、人工島周辺の海域・空域を公海・公空であることのデモンストレーションを行った。

 勿論、中国はアメリカに激しく抗議した。

 安倍晋三はアメリカの行動を支持した。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議出席のためにフィリッピン・マニラを訪れていたオバマ米大統領と安倍晋三がその閉幕後、2015年11月19日夜(日本時間同)に首脳会談を行い、「現状を変更し、緊張を高める一方的行為」への反対で連携を確認したという。

 安倍晋三「南シナ海での自衛隊活動は、情勢が日本の安全保障に与える影響を注視しつつ検討する」(時事ドットコム)   

 安倍晋三は「航行の自由作戦」を支持した。そして安全保障関連法が対米後方支援を目的の一つとし、また領土・領海を国際法に反して一方的に拡大する中国の南シナ海人工島構築と尖閣諸島海域の日本の領海への中国公船の侵犯、同じく日本領空への中国軍機の侵犯は中国の「現状を変更し、緊張を高める一方的行為」として同一線上に置かなければならない重大事態であり、アメリカが尖閣諸島防衛を米国の対日防衛義務を規定した日米安保条約第5条の適用範囲としていることのバランスを考えると、前者の中国の一方的行為に対しても日米が連携する形でアメリカの「航行の自由作戦」のような具体的な示威行動を日本も示さなければならない問題であるはずである。

 だが、安倍晋三は日米安全保障条約に於ける日本防衛のアメリカの片務性のみを言い立て、双務性を求めて安全保障関連法を成立させながら、「情勢が日本の安全保障に与える影響」が出なければ、連携して対処しなければならない中国の南シナ海の「現状を変更し、緊張を高める一方的行為」は連携して阻止できないとする姿勢を取った。

 この双務性を求めながら片務性の現状に甘えようとしている矛盾は、矛盾している以上、安全保障関連法の来春春施行後も自衛隊を安全運用して、安全運用しなかった場合に発生するかもしれない不測の事態が唯一障害となるのは参院選であり、その障害の回避を狙った選挙対策でなければならない。

 自衛隊の現状の運用からの脱皮、リスクが伴うかもしれない安全保障関連法下の新しい自衛隊の運用が選挙の障害になる危険性を孕んでいるかもしれない危機管理をそこにと見ないと、折角手に入れた双務性の機会を片務性のまま据え置く矛盾を解くことはできない。

 11月22日(2015年)午前、アフリカ・南スーダンへの自衛隊の国連平和維持活動(PKO)派遣部隊のうち、先発隊約100人が中部空港から日本を飛び立った。安全保障関連法成立後の初交代だそうだが、任期は約6カ月。安全保障関連法の施行後も駐留することになる。

 つまり、南スーダン自衛隊PKO部隊は来年春、安全保障関連法に基づいた新しい任務に切り替わることになる。その最も責任ある重要な任務は離れた場所にいる国連や民間NGOの職員、他国軍の兵士らが武装集団などに襲われた場合に助けに向かう、当然重大なリスクが伴う可能性も考慮しなければならない「駆けつけ警護」であろう。

 だが、中谷防衛大臣は11月の記者会見で、派遣期間中は「駆けつけ警護」等の施行後の新任務に切り替えずに、周到な準備をしてからだと、先延ばしにする発言をしたという。

 この措置にしても、マスコミ各紙は参院選対策だと指摘している。

 2015年10月18日の自衛隊観艦式での訓示。

 安倍晋三「日本は、皆さんの母国をはじめ、国際社会と手を携えながら、『自由で平和な海』を守るため、全力を尽くします。『積極的平和主義』の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄に、これまで以上に貢献していく決意であります。

    ・・・・・・・・・・・

 日本を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増しています。望むと望まざるとに関わらず、脅威は容易に国境を越えてくる。もはや、どの国も、一国のみでは対応できない時代です。

 そうした時代にあっても、国民の命と平和な暮らしは、断固として守り抜く。そのための法的基盤が、先般成立した平和安全法制であります。積極的な平和外交も、今後、一層強化してまいります」

 かく誓い、かく宣言している以上、来年春の平和安全法制の施行を首の長くして待ち、施行されたら、待ってましたとばかりに直ちに自衛隊の新しい任務を活用した「積極的平和主義」、「世界の平和と繁栄」に貢献してもよさそうなものだが、以上見てきた必要とされる新たな措置、あるいは新たな任務は待ってましたとは行わない。

 目的は参院選対策であるという同じ文脈で見ないと、すべての矛盾に整合性を与えることはできない。

 低所得者に1人3万円支給にしてもそうだが、全てが選挙対策で動いているように見える。

 次の参院選は来年の7月頃で、現在の衆院議員の任期は2018年12月半ばである。自衛隊の新たな活動が不測の事態を招く危険性の回避を狙ったそのような活動の先送りを参院選対策だとみると、参院選後の不測の事態が今度は衆院選に影響を与える可能性は否定できないことになって、一挙両得で不測の事態が発生しない前にダブル選に打って出る予想もできないことはない。

 一つ気をつけなければならないことは、こういった選挙のための自衛隊の不測の事態隠し=危険隠しは国民を欺く姑息な手だということである。



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