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「吉田証言」の従軍慰安婦強制連行が虚偽物語であったとしても、強制連行の構図自体は虚偽とは言えない

2014-10-21 09:23:13 | Weblog
 

 


      生活の党PR

       《10月20生活の党雇用安定化対策本部設置》    

      生活の党幹事会は10月20日、非正規雇用の正規化を推進するために小沢一郎代表を本部長とする「雇用安定化
      対策本部」を設置することを決定しました。今後、各界からのヒアリング等を進め、議員立法案をとりまとめ、他
      党の協力を得て国会提出を目指します。

 10月18日放送のラジオ日本の番組。

 安倍晋三(朝日新聞がいわゆる従軍慰安婦問題を巡る一部記事を取り消した問題について)「(強制連行があったという)間違った日本に対する誹謗、中傷があるのは事実だ。日本は毅然として反応していく」(YOMIURI ONLINE

 大使館などの在外公館を通じて外国メディアで慰安婦問題に関する正しい情報を発信していく考えを強調したという。

 要するに虚偽の事実を内容とした「吉田証言」に基いて、それを歴史的事実とした朝日新聞の報道によって従軍慰安婦強制連行が事実あったこととして世界に発信、日本は誹謗・中傷されることとなった。朝日新聞が事実としたことを誤報と認めた以上、強制連行はなかったという事実を世界に訴えて、日本の名誉を回復しなければならない点に於いて日本は毅然と対応していかなければならないと言っている。

 高市早苗にしても稲田朋美にしても菅官房長官にしても、戦前日本国家を肯定する同じ歴史修正仲間として同じ趣旨の主張をしている。
 
 「吉田証言」とはご存知のように「Wikipedia」にも紹介されているが、吉田清治なる人物が自らの体験談として戦時中に軍令に従って済州島などでアフリカの奴隷狩りのように若い朝鮮人女性を略取・誘拐して、いわば強制連行して慰安婦に仕立てたと告白証言を行い、1983年に『私の戦争犯罪』なる著書を刊行、慰安婦狩りを自らの戦争犯罪だと断罪した。

 但し全ての告白証言と自らに対する断罪が複数の識者の調査によって真偽不詳とされ、1995年になって本本人も証言が創作であることを認めた。

 この2年後の1997年3月31日、朝日新聞は「吉田証言」の真偽は確認できないと報道。2014年8月5日に「吉田証言」に基づいた従軍慰安婦強制連行を事実とした報道を誤報だったと認めた。

 朝日のこの誤報と認めたことをきっかけとして安倍晋三歴史修正主義一派の日本の名誉を傷つけたとする朝日攻撃が火を噴き、メディアへの信頼低下を招いた報道機関としての責任を厳しくバッシングした。まるで鬼の首でも獲ったかのように。

 だがである。歴史修正主義者たちは告白や証言、著述によって成り立たせた「吉田証言」が虚偽の事実に基づいていることを唯一の根拠として従軍慰安婦強制連行の歴史的事実は存在しなかったとし、歴史的事実であるとした朝日の誤報が世界に対して日本の名誉を貶めた元凶だと非難しているが、「吉田証言」が軍令に従って済州島などでアフリカの奴隷狩りのように若い朝鮮人女性を略取・誘拐して慰安婦に仕立てたとする従軍慰安婦強制連行の構図は何も「吉田証言」特有のものではなく、従軍慰安婦にされた女性の数々の証言が共有している構図である。

 例え「吉田証言」が虚偽の事実によって成り立っていたとしても、従軍慰安婦強制連行の構図自体に共通性を見い出し得るということは何を意味するのだろうか。

 吉田清治がどこでどのようにしてこの構図を学んだのかは分からないが、自らもこの構図に基いて従軍慰安婦強制連行の物語を紡いだとしか解釈しようがない。

 当然のこと、構図の共有は、歴史修正主義者たちは常に否定してきたが、歴史的事実とされてきた従軍慰安婦強制連行を虚偽とし、否定する理由として「吉田証言」が虚偽の事実に基づいていることを唯一の根拠として挙げることはできないということを意味する。

 だが、安倍晋三以下の歴史修正主義者たちは「吉田証言」が虚偽の物語であることのみを以ってバカの一つ覚えのように強制連行を否定し、朝日新聞を攻撃している。

 ここに安倍晋三や高市早苗、稲田朋美等々の右翼国家主義者及び歴史修正主義者の歴史認識に正当性を見い出すことができるのだろうか。

 正当性を認めるためには従軍慰安婦の強制連行を認めた「河野談話」作成時に日本政府が行った朝鮮人元従軍慰安婦16人の聞き取り調査に於ける各証言が従軍慰安婦強制連行の構図を非共有としていることを、先ず第一番に証明しなければならないはずだ。

 だが、当時から現在に至っても非公開としている。非公開としたまま、「吉田証言」の虚偽物語のみを根拠として、従軍慰安婦の強制連行を否定している。

 これは正当な態度と言うことができるだろうか。

 今までブログに日本軍占領下のインドネシアでインドネシア人の未成年を含む若い女性が軍トラックに乗ってやってきた十数人の日本軍兵士に略取・誘拐の形でトラックに乗せられて強制連行され、慰安婦とされた証言や同じくインドネシアで民間人収容所に収容されていた未成年を含む若いオランダ人女性が軍の威圧に抵抗しきれずにトラックで連行されて性の慰みとされた証言を書物やインターネット記事を参考に書いてきたが、1941年に旧オランダ領東インド(現インドネシア)に生まれ、日本軍占領下に幼児期を過ごして戦後オランダに帰国した女性が日本軍に強制的に従軍慰安婦とされたオランダ人女性たちからの聞き取り証言を綴った、『折られた花』(副題〈日本軍「慰安婦」とされたオランダ人女性たちの声〉)から今までブログには取り上げなかった、従軍慰安婦強制連行の構図を共有する証言を一つ紹介したいと思う。

 ここに出てくるノールチェはインドネシア人とオランダ人の混血児で、若くしてオランダ人と結婚。夫はオランダ王国軍に召集されたが、日本軍の捕虜となり、泰緬鉄道建設のためにタイに連行されことからノールチェは実家のあるに戻って、同じオランダ人との混血児である母親と暮らしていた。

 〈少女たちの徴用

 1943年のある日のこと、トラックがに停まった。兵士数人を連れた日本軍将校が車から降り立った。将校は、女性は全員集合すべしと大声で命令した。イナとノールチェは日本人が何のために若い女性たちを求めているのか見当がついたので、一目散に家に逃げ帰り、小さい男の子と3人で箱に隠れた。その間、日本兵たちは女目当てに中をまわった。

 彼らがノールチェの母の家に来たとき、近所の誰かがノールチェの母親を指しながら、「彼女には娘が二人いますよ」と兵士たちに告げた。将校は、全員家から出てこないと懲罰を加えると怒鳴った。ノールチェとイナはとても不安になったが、母親に迷惑をかけてはいけないと思って隠れ場所から出てきた。ノールチェは小さい男の子を連れて出て、イナもあとからついてきた。ノールチェの母はパニックに陥り、イナをひっぱって将校の前に差し出して言った。

 「この子なら大丈夫です。もう一人は母親になりたてで、小さい男の子の世話をしないといけません」

 将校はイナを眺めてから、笑い飛ばした。

 「これは駄目だ、あんまり痩せとる」

 それからサーベルをノールチェの方に向けて、「これ、お前。車に乗れ。乗らんと首が飛ぶぞ」という仕草を見せた。ノールチェは息子の手を放し、すぐさま出発できる状態のトラックに恐る恐る乗り込んだ。そこにはわなわな震えているの娘たちが乗せられていた。ノールチェの母には、すぐに娘の着替えを詰めよとの命令が出た。しばらくして、そのトランクが車に投げ込まれた。

 こうして徴用された少女たちはスラバヤの将校用ホテルに連行され、そこで仕事に就かされた。彼女たちは初めのうち、せいぜい食堂で日本人将校たちに食事を出したりバーで給仕したりするぐらいだろうと願っていた。しかしほどなく、彼女たちは日本の軍人たちの性的な世話もさせられることがわかった。ホテルは四方厳重に監視されていたから、逃げ出せるはずもなかった。周囲には大きな公園があり、武装した警備兵が四六時中行き来していた。〉――

 日本軍は絶対君主的存在であり、絶対君主的に行動した。誰も逆らうことはできなかっただろう。

 強制連行の構図自体は強制性の強弱以外「吉田証言」と何ら変わりはない。そして他の元慰安婦の証言と共有する構図でもある。

 安倍晋三は「党首に問う いま政治がすべきことは」をテーマとした9月14日のNHK「日曜討論」に出演、次のように発言している。

 安倍晋三「日本兵が人攫(ひとさら)いのように人の家に入っていき、子どもを攫って慰安婦にしたという(朝日新聞の)記事を見れば、皆、怒る。間違っていたというファクトを、朝日新聞自体がもっと努力して伝える必要もある。それを韓国との関係改善に生かしていくことができればいいし、如何に事実でないことを国際的に明らかにするかを我々もよく考えなければいけない」(NHK NEWS WEB)――

 安倍晋三のこの発言を正当化するためには河野談話作成時の16人の元従軍慰安婦聞き取り調査の各証言を公開して、従軍慰安婦強制連行の構図を共有していないことを先ず証明しなければならない。

 その上で、日本軍兵士に従軍慰安婦にされた(西欧諸国が言う「セックススレイブ」にされた)オランダ人女性やインドネシア人、その他フィリッピンや台湾人の女性たちの証言が同じ性格のものとして共有している従軍慰安婦強制連行の構図が「吉田証言」と同様に虚偽の物語によって成り立たせたものであることを証明しなければならないはずだ。

 果して元従軍慰安婦たちの証言のリアルさを崩すことができるだろうか。安倍晋三の口先だけの政策よりもはるかにリアルである。


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