NHK番組『インドの衝撃』から見る安倍教育再生・1

2007-03-27 10:01:07 | Weblog

 もう大分前のことで、視聴した人もいるだろうが、07年1月29日NHKスペシャル『インドの衝撃 第1回わき上がる頭脳パワー』。

 「インド・ビハール州」(テロップ)
 男性解説「インド北部のビハール州。インドの中で特に貧しいこの州で、大学の合格を目指し懸命に学ぶ若者たちがいます。(乗客で混雑する駅のコンコードかプラットフォーム、あるいは澁谷か新宿の最も人混みの多い時間帯のスクランブル交差点の人混みのみたいにスシ詰め状態になった生徒の映像)およそ1000人が吹きさらしの教室で毎日7時間勉強しています。貧困から脱け出し、成功へのキップを手にしようとしています(どの目も真剣に黒板に向けられている)。若者たちを駆り立てているのは頭脳を武器に世界中に活躍するインド人の存在です」

 (NASAの噴煙を噴き上げてロケットが宇宙に向けて打ち上げられていく瞬間の映像・「2003年6月」のテロップ)

 男性解説「4年前、アメリカのNASAが打ち上げた火星探査機。初めて火星(の表面の映像)に水が存在していたことを確認した歴史的プロジェクトを支えたのはインド人でした。NASAでは技術者の10人に一人がインド人です(飛行管制センターの中なのか、打ち上げの成功をだろう、白人女性と抱き合い大きく左手を振りながら喜び合う色の黒いインド人女性。)

 「アミーゴ・ゴーシュ博士 火星探査チーム」(テロップ)
 博士「私たちインド人は化学や物理では誰にも負けません」

 「WindowsVista」のテロップ。

 男性解説「明後日世界で同意発売される最新の基本ソフト。この開発にも大勢のインド人が関わっています。世界で最もソフトウエアエンジニアが多いのはインドです。その数160万人。今やインドの頭脳は世界をリードし始めています。

 (小学校教室風景)

 女教師「333333×333333は?」(数字を読み上げながら黒板に書いていく。黒板に
   33333×33333
  333333×333333 の文字。

 男性解説「優れた頭脳を生み出しているのは建国以来の頭脳立国戦略。(「頭脳立国戦略」のテロップ)子どもたちが算数を好きになるために様々な工夫がインドにはあります。」

 (小学生が席から立ち上がってまで競い合うように手を上げ、口々に答を言い合っている。次に大学キャンパスの映像。歩いている大学生の殆どがノートか教科書を持ち、見ながら歩いている大学生もいる。)

 男性解説「さらにインド最先端の理工系大学では60倍の競争率を勝ち抜いた学生たちに独自のエリート教育を行っています。インドが生み出す膨大な頭脳。今、世界を圧倒しようとしているのです」

 (「トーマス・フリードマンさん ジャーナリスト)のテロップ」
 アメリカ白人男性・フリードマン「国境が消え、時代が変わり、突然インドの頭脳が世界とつながり、爆発したのです」

 男性解説「広大な国土に11億人が暮らすインド。今、苦難の歴史を超え、21世紀最も成功する国と言われています。インドの衝撃。第1回は世界で台頭する頭脳パワーの秘密に迫ります」

 『第1回 わき上がる頭脳パワー』(テロップ)

 (近代的なショッピングモールの光景。客で混んでいる。列になった客を乗せて動くエスカレーター)

 男性解説「年率8%の高い成長率に湧くインド。街中のショッピングモールは商品を買い求める人々で賑わっています。(ファッショナブルな服装を身に纏った若いインド人女性がサンダルを選んだり、指輪を選んだりしている購買光景の映像)

 男性解説「2005年のインドのGDPは7885億ドル。およそ94兆円です。この20年間で3倍以上になりました。25年後には日本を超える経済大国となり、およそ40年後にはアメリカに迫ると言われています。(山積みされたハイカラなシャツの山の映像)この好景気を支えているのがI T産業です。(「バンガロール」のテロップ)その中心地ガルタカタナ州の中心都市バンガロール。国内で最もI T技術者が多く、インドのシリコンバレーと呼ばれています。この町だけでソフトウエアエンジニアが20万人もいます。今、バンガロールでは世界の企業が優秀な人材を求めて、研究開発の拠点を次々とつくっています」

 (DELL Microsoft の商標看板・社名看板をつけた建物の映像)

 男性解説「その数は100を超えます。殆どが欧米の大手企業です。アメリカのインテルもその一つです。(「インテル・インド」のテロップ。インテルの社名看板のついた建物の映像から社内にカメラがパン。無数のセクションで仕切られた一つ一つのコンパートメントでパソコンに向かっている社員)現在3000人の技術者がコンピューターの心臓部であるCPUを初め、最先端の技術の開発を行っています。インドに進出して7年。質の高い技術者を大勢採用してきたことで今や最も重要な研究開発の拠点の一つとなりました。

 (「フランク・ジョーンズさん インテル・インド社長」のテロップ)
 ジョーンズ「インドに進出した理由はインドにある莫大な人材の金脈を発掘するためでした。もはやインドの頭脳なくしてわが社は1日も成り立ちません」

 男性解説「このバンガロールの郊外(空から見た光景の映像)に近代的なビル群が建ち並ぶ一画があります。敷地面積32万平方メートル。インドを代表するI T企業・インフォシス・テクノロジーズの本社です(「インフォシス・テクノロジーズ)のテロップ。敷地内の一画にピラミッド型の青々とした建物の映像」。世界39箇所に拠点を広げ、急速な成長を続けています。この1年間の売り上げは3600億円に達する見込みです。従業員はおよそ7万人で、その94%がI T技術者です。平均年齢27歳。インドの若い頭脳が世界の企業を相手にソフトウエアを開発しています。明後日世界で同時発売されるマイクロソフトの次世代基本ソフト・ウインドウズビスタ。(「Winndowsvista」の商標映像)インフォシスはこの開発に深く関わっています。マイクロソフトとインフォシスの共同開発センターです(その光景映像)。両者は技術的な協力関係を結び、ソフトウエアの開発に当たってきました(社内風景)。ビスタの開発でこの会社が行ったのはシステムの詳細な検証です。従来よりも多機能になったこのソフトがスムーズに作動するかどうか確認し、その上で具体的な改善策を提案してきました。アメリカとインドにはおよそ半日の時差がありました。アメリカが夜の間はインフォシスの技術者たちがソフトウエアの開発に取り組みます。こうした開発が可能なのは高い技術力があるためです。インフォシスはこの技術力を武器に世界の500社とビジネスを展開しています」

 (「ナンダニ・ニレカニさん インフォシス社長」のテロップ) 
 ニレカニ「何より重要なのは頭脳なのです。優秀な頭脳がさらに最先端のテクノロジーを身につければ、非常に高い競争力を発揮できるのです。私たちはそうすることで、世界の中で誰にも負けない存在になるのです」

 男性解説「質が高く、豊富なインドのI T技術者たちは一体どこから生まれてくるのか。(「ムンバイ」のテロップ)インドでは毎年およそ40万人もの理工系の学生が卒業します。中でも最も優秀な学生を輩出するのがIIT(アイ・アイ・ティ)インド工科大学です。(大学キャンパス風景)ムンバイの他、ニューデリーやチェンナなど全国に7つのキャンパスがあります。学生はおよそ2万6千人です。(英語での授業風景)コンピューターサイエンスや都市工学、宇宙工学などについて高度な内容の授業や研究が行われています。IITには厳しい試験に合格した選りすぐりの学生たちがインド各地から集まってきます。(食堂内の映像)化学工学を専攻するジッタールター・ジョーシさん(男性)です。ジョーシさんはインド北部の町の出身です。町でIITに合格したのはジョーシさんが初めてでした。IITの競争率は60倍。世界で最も高い倍率です。毎年30万人が受験しますが、合格できるのは5000人です。インドのトップエリートとしての自覚が生まれます。

 (「ジッタールター・ジョーシさん IIT化学工学専攻」のテロップ)
 ジョーシ「IITに合格することは大きな喜びであり、達成感を与えてくれます。そして次はもっと大きなチャレンジをしたくなります。高い目標を定め、そこに向かって全力で頑張ろうと思うのです――」

 (授業風景)

 男性解説「IIT教育の特徴は、学生に徹底的に考えさせることです。授業では答に辿りつくまでの思考過程が最も重視されます。この日、ジョーシさんは化学工学の授業を受けました。教授は模範解答を覚えさせることはしません。常に答に辿りつく方法を自分で、しかも複数考えるように指導します。

 授業中の教授「みなさんがよく使う方程式の他にも、実は3種類の方程式があります。すべての場合について、自分で方程式を完成させて置いてください」

 男性解説「IITでは基礎的な実験が重視されます。(化学実験室の映像)ジョーシさんは実験で得られたデータをどのように応用すれば高度な問題を解くことができるか考えています。

 (「サンジャイ・マルジャニさん IIT科学部助教授」のテロップ)
 助教授「産業界は非常に複雑で、化学の知識がなければ解けない問題がたくさんあります。こうした複雑な問題を物理や化学や数学を用いてどのように解決するのかを身につけさせるのです」

 男性解説「この日ジョーシさんは期末試験に向かいました。試験にも特徴があります。短時間内に多くの問題を解くのではなく、一つ一つの問題を時間をかけて考えます。1科目につき3時間、この日の試験問題は10問。すべて技術式です。難しい問題でも最後まで考えることが重視されます。例え答を出せなくても、その過程が論理的で、独創性に富んでいれば評価されます」

 (夜、学生寮の外観)

 男性解説「IITでは学生たちは大学内の寮で暮らしています。(1人部屋の映像)部屋にはパソコンとベッド以外は何もありません。毎日出される膨大な課題。ジョーシさんはこの日も化学問題に関する課題と10時間向き合っていました。学生たちは互いに独創的な解き方を競い合います。(ジョーシの部屋に二人の学生が訪れている)自分一人では気づかない問題点が明かになり、新たな発想が生まれるといいます」

 学生1(ジョーシに)「この二つの気体は互いに影響し合うはずだ。他の条件も考える必要があるよ。反応があるかないかで違ってくるはずだ」
 学生2(ジョーシに)「君の解き方だと、ちょっと違うと僕は思うよ。気体を別々に分けて考えなければならないはずだ」
 ジョーシ「なる程、そういう方法もあるかもしれないね」

 男性解説「いつでも調べ物ができるよう、図書館は夜中の1時まで開いています。(図書館内の映像)授業料は寮費も含めて年間7万5千円。他の理工系大学の6分の1です。インド政府はIITに年間75億円を投じて、将来のインドを支えるエリートを育成しています。

 ジョーシ「私たちは自分や家族のためだけに勉強しているのではありません。誰もが国のために貢献したいと考えています。他の人たちが受けられない教育を受けているのですから。IITの出身者の名にふさわしい活躍をして、期待に応えたいと思っています」

 男性解説「IITが設立されたのは1951年、インドが独立してから4年後のことでした。最初にキャンパスが設置されたのは西ベンガル州のカラグプル。独立運動の盛んな地域でした。設立当初から教壇に立つサミュアル名誉教授は当時の教授や学生たちの意気込みをはっきりと覚えています。

 (「G.S.サミュアルさん IITカラグプル校名誉教授」の字幕)
 名誉教授「インドを発展させるためには私たちが頑張らなければ、一体誰がやるんだとみんなが思っていました」
 
 男性解説「IITが校舎として使ったのは植民地時代イギリスが政治犯を収容した刑務所の跡でした。収容されていたのは独立運動のために戦ったインドの知識人でした。ここにIITを設立することを決めたのはインドの初代首相ネールです。インド建国の父といわれるネール。(当時の映像。人力車が走る)200年に及ぶ植民地支配の間に大きく立ち遅れたインドを発展させなくてはならない。そのためには産業の基盤を一からつくり上げる技術エリートの養成が急務だと考えたのです。長年独立のために使ってきたエネルギーと優秀な頭を国家の発展のために生かして欲しい。(IIT第1回卒業式の記念写真。かなりの年齢に達しているネールが教授や学生に囲まれて正面に座っている)」

 男性解説「資金や設備も乏しい中で頭脳さえあれば成果をあげられる数学や化学に特化した教育が行われました。ネールからインドの将来を託されたIIT。頭脳によって国を興す。インドの頭脳立国戦略が始まりました」

 サミュアル名誉教授「自分の将来のためでなく、インドの未来を作るのだといつも励まし合ってきました。私たちはこの場所から世界のトップレベルを目指してきたのです」

 男性解説「この決意どおり、卒業生たちは世界中で活躍しています。NASAで火星探査に携わるアミタープ・ゴーシュ、(と次々と顔写真つきで照会されていく)企業向けコンピューター大手サンマイクロシステムズ創業者ビノット・コースラ、世界最大規模の携帯電話会社ボーダフォン最高経営責任者アルン・サリン、大手航空会社USエアウエイズ元社長、ラケシュ・ガングワールなど、その舞台は多岐に亘ります」

 (「IITボンベイ校学長 アショーク・ミシュラさん」字幕) 

 学長「IITでは何もないところから考えて、新しいアイデアを生み出せる人材、そしてリーダーにもなれる人材を育ててきました。だからこそ、卒業生たちは科学の分野は勿論、ビジネスの世界で成功し、トップに上り詰めることができるのです」


 男性解説「IITの学生を獲得しようと今、世界中の企業が殺到しています」

 教室での企業説明「今わが社はアジアで急速に業務を拡大しています。優秀なみなさんに是非とも来ていただきたいのです」

 男性解説「世界大手のI T企業から金融やコンサルティングの会社など(ヒューレッドパッカードやマイクロソフトの商標が映し出される)160社が今年求人の訪れました」

 (「ニシャド・カマートさん ヤフー技術責任者」の字幕)
 インド人らしき風貌のカマート「わが社なら、あなたの能力を十分に発揮できます。デザインの開発責任者として大いに活躍できます」

 男性解説「ジョーシさんも今年4年生。大手金融機関への就職を希望しています。欧米の企業の中には初任給1千万円を提示するところもありますが、しかし最近ではインド国内で就職したり、自分でビジネスを起こす学生が増えています。インド経済の活況を受け、これまで海外に流出していた卒業生たちもインドに戻り始めています」

 ジョーシ「IITで学んだあらゆる物事を深く考え、分析する姿勢はどんな分野でも役立ちます。社会に出てからも、それを大いに役立てたいと思います」

 男性解説「インド最大の資源である人材で国を興そうというネルーの頭脳立国戦略。世界が求める優秀な頭脳を次々と生み出しています」

 (「小学校の教室風景」

 女性解説「インドでは子どもたちが算数を好きになるような様々な工夫をしています。小学校では算数の授業は毎日必ずあります。3年生の授業では先生は黒板を使わずに口頭だけで計算問題を出しています」

 女教師「5505÷は?」

 女性解説「子どもたちはノートも鉛筆も一切使わずに頭の中だけで計算します」(日本の教科書が薄くなったは無意味と化す)

 子どもたちが一斉に「1101」と答える。

 女性解説「毎日10分間繰返すうちに桁数の多い数字でも頭の中で計算できるようになるといいます」

 (別の女教師、黒板に
     3×3=9
      33×33=1,089
     333×333=110,889
     3333×3333=1,110,889と書いた紙を張る。
 女性解説「こちらは5年生の教室です。算数に興味を持たせるための授業が行われていました。掛け算に現れる不思議な法則です」

 女教師「33×33は1,089です。よく見比べてみてください。法則がありますよ。333×333は110,889になりますねえ」

 女性解説「33×33の答1,089と333×333の答を比べると、1の前に1を、8の前に8を足せば答が出ることが分かります」

 女教師「それでは33万3333×33万3333はいくつになりますか?」

 女性解説「この法則さえ覚えれば、例え何桁になっても答を出すことができます。(子どもたちが手を上げ、椅子から立ち上がって口々に答をいう)子どもたちは他にも法則がないか競って計算するようになります」

 女子生徒「数字で遊べるから、とても楽しいの」
 男子生徒「簡単じゃないし、楽しくもないけど、算数は世界で一番素晴しいと思う」
 男子生徒「頭を鍛えてくれるし、算数ができれば他の教科は何でもできるから」

 チラグ・アガルワール女教師「子どもたちは自分で解き方を発見することもあります。考えることの面白さを知るのです」

 女性解説「インドでは学校から帰った後も、家庭で算数を愉しんでいます。小学校3年生のビドゥシちゃんの家で、家族団欒の時間にも算数は欠かせません。これはインドでは人気のゲームです。手持ちのコマで上下か左右に計算式を成り立たせるのがルールです」

 (両親に見守られながら、姉妹で対戦している。碁盤よりも一回り程度大きな升目のついた盤上に=(イコール)で挟んだ左右、あるいは上下の数式の答が同じになるように数字や記号を書き入れたコマを使って足し算や引き算、あるいは掛け算や割り算を複雑に組み合わせて数式を組み立てていく。組み合わせが多い程、升目を早く埋めていくことができる。そのようなゲームのようである)

 女性解説「1年生の妹とこのゲームをするのが日課になっています。ゲームに勝つためにビドゥシちゃんと妹は競って計算します。4×3=12-0」

 ビドゥシちゃん「18×3=8+16-2・・・・」

 女性解説「ビドゥシちゃんはまだ学校で習っていない掛け算と足し算を組合わせた計算ができるようになりました」

 母親「下の子もまだ掛け算を習っていないのに3×4は12だと、ゲームで自然に覚えてしまいました」
 父親「興味を持って楽しみながらやるのが一番なので、どんどん新しい計算の仕方を身につけていきますからね」

 (「インフォシス25周年記念式典 去年78月」の字幕)

 男性解説「インドの頭脳立国戦略は今、企業にまで広がっています。優秀な頭脳をさらに磨き上げて成長を続けているのがインドのI T企業インフォシスです。創業者のエレカニ社長、ムルティ名誉会長。二人は共にIITの卒業生です。1981年、二人はIITの卒業生の仲間と共にソフトウエア会社を立ち上げました。元手は借金して集めた250ドル。当時の金額で5万円程でした」

 ムルティ名誉会長「インドでは長年紙とペンだけで考えるしかありませんでした。だから、物理や数学には自信があったのです。幸いにしてソフトウエアの開発なら、多額の投資は要りません。必要なのは頭脳だけです。それならいくらでもありましたからね」

 男性解説「頭脳の重要性を知る創業者たちは人材戦略に大きな力を入れてきました。5年前総工費360億円をかけて巨大な研究センターを造りました。(インフォシス研究センターを空から俯瞰した映像)70万平方メートル。この研究センターでは一度に6千人が学ぶことができます。ここには様々な設備が整えられています。スポーツジムからビリヤード、ボーリングやロッククライミングの練習場(ロッククライミングをしている社員の映像)まであります。能力を最大に発揮させるにはゆとりある環境も必要だという考えからです。この日は採用されたばかりの新入社員の研修が行われていました。研修は16週間に及びます。大学で身につけた専門知識をビジネスの現場でどう生かすかが教え込まれます」

 女性研修教師「私たちインド人によくありますが、会話の途中に少しでも間があると、すぐに話し始めます」

 男性解説「顧客が抱えている問題を聞き出すための訓練です。ここでも考える姿勢が重視されます。相手の表情や声の調子、契約内容まで様々な情報を分析し、顧客にとって最適な解決策を考え出します」

 同女性研修教師(新入社員に)「相手の話を積極的に聞いてください。そしてしっかりと理解することです。行間も読まなければなりません。相手が言わないことまで想像力を働かせてください。口に出して言うことよりも、言わないことの方が大事なこともあるからです」

 男性解説「頭脳こそが競争力の要だとするこの会社では、新入社員に限らず、頻繁に研修が行われます。人材育成に投じられる費用は年170億円。最新の情報とテクノロジーを吸収していくためには欠かせないといいます」

 ニレカ・インフォシス社長「わが社ではアウトソーシングの受け手だけはなく、世界規模で変革を起こすためのパートナーになりたいと考えています。私たちはテクノロジーの分野で何が起きているか分かっていますが、本当の挑戦はその知識を生かして、最高の解決策を生み出すことなのです」

 男性解説「インフォシスでは社員の専門性を高めることにも力を入れています。社員は航空・運輸・金融・エネルギーなど業種別に17の分野に分かれ(「航空・運輸・自動車・金融・流通・通信・エネルギー・保険・生命科学など」のテロップ)、担当を変えることは殆どありません。専門知識を蓄えることで、より高度な仕事ができるようにするのが狙いです。その成功例の一つが最新鋭の航空機エアバスA380(空飛ぶ映像)です。世界初の総2階建て。ヨーロッパが威信をかけて造り上げた超大型機。中でも重要な主翼の設計にインフォシスは関わりました。A380を担当したチームは航空機の構造に関する専門知識を持つ技術者で構成されています。その高い分析力とシュミレーションソフトを組み合わせることで殆どの工程をコンピューター上で検証できるようにしたのです。これは翼構造の内部構造です(その映像)。様々なパーツを複雑に組み合わせるため、従来は試作品をつくり何度もテストを繰返さなければなりませんでした。しかし、シュミレーションによってその回数を大幅に減らし、製品開発の在り方を大きく変えました。画面の赤い部分は強い圧力がかかっていることを示します。それぞれの部部にかかる圧力を高度や速度など様々な条件に応じて詳しく分析し、設計することができます」

(「NHK番組『インドの衝撃』から見る安倍教育再生・2」に続く)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 臨界事故隠しを石原DNA論で読... | トップ | NHK番組『インドの衝撃』から... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事