野田内閣の朝鮮半島有事想定の危機管理に手落ちはないか

2011-12-26 09:04:56 | Weblog

 政府が金正日がくたばったのを受けて、金正恩がくたばれば北朝鮮国民にとって最大のプレゼントになると思うのだが、世の中は非情でそうは問屋で降ろさないと言うわけか、朝鮮半島有事を想定、北朝鮮からの大量難民流入と韓国在留邦人保護の検討に入ったという。

 《北朝鮮の難民保護に自治体協力 政府検討、米と連携も》47NEWS/2011/12/25 02:05 【共同通信】)

 いつも感心するのだが、民主党は非常に対応が素早い。独裁者金正日がくたばったとの放送は12月19日正午。検討を政府関係者が明らかにしたのは12月24日。1週間も経たないうちの素早い対応だから、感心しないわけにはいかない。

 先ず日本政府の北朝鮮情勢分析。

 「現時点で特異な事象はない」

 だが、権力継承が安定的に進む保証はなく、野田佳彦首相が19日に「不測の事態に備えた万全の態勢整備」を指示

 関係府省庁は直ちに1994年に金日成主席が死去した際に作成された緊急事態に関するシナリオを参照し練り直しに入った。

 野田首相の場合はくたばり放送のあったその日に直ちに反応したのだから、ニュートリノ並みの素早い対応で、感心する暇もないくらいだ。

 検討の内容。

 〈難民の一時保護などで日本海側の自治体の協力を得るため事前協議を進め、受け入れが可能な施設を選定。朝鮮半島が不安定化した場合の韓国在留邦人輸送に備え、米軍との連携緊密化を図る。〉
 
 政府は北朝鮮難民保護だけではなく、北朝鮮と韓国との万が一の軍事衝突をも視野に入れた。

 流石である。ドジョウと言えども、手抜かりはないところを見せたといったところか。

 だがである。手抜かりはない野田首相と手抜かりのない民主党にケチはつけたくないが、一言言わざるを得ない。2010年12月17日の当ブログ記事――《視野狭窄な菅首相の視野狭窄な事例 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》でも触れているが、2010年11月23日午後2時過ぎ、韓国領延坪島(よんぴょんとう)に北朝鮮が謂れのない砲撃を加え、韓国海兵隊員2名、民間人2名の死者を出した1カ月後の2010年12月10日、当時の菅無能首相が拉致被害者家族会と面会、党内で議論し、案として纏めたわけでもなく、次のように挨拶している。

菅首相「北朝鮮による砲撃があり、アメリカ軍も含めた一触即発の状況も生まれてきている。万一のときに、北朝鮮にいる拉致被害者をどうすれば救出できるか、準備や心構えなどいろいろなことを考えておかなければならない。

 救出に自衛隊が出て行って、韓国を通って行動できるかどうかというルールはきちんと決まっていない」

 朝鮮半島有事を想定した発言だが、自衛隊出動となれば、北朝鮮が日本の自衛隊機には攻撃を加えないと保証してくれればいいが、その保証の保証は皆無なのは目に見えていることで、憲法9条の武力不行使の規定との兼ね合いで、その非現実的な実現性に野党から批判され、またかつて植民地宗主国であった日本の自衛隊機の韓国領内への着陸に韓国内の拒絶感を考えない発言であったため、韓国からも、「現実性のある話ではない。深く考えて述べたものではないだろう」(大統領府関係者)と軽く見られる始末だった。

 だとしても、延坪島砲撃事件を受けて一旦は朝鮮半島有事を想定したのである。その時点で実現性のある現実的な韓国在留邦人保護の方法、北朝鮮難民の保護、米軍との連携緊密化策を計画立てていていいはずだった。

 だが、1年を超えて、大量北朝鮮難民流入と韓国在留邦人保護の検討に入った。

 何と素早い危機管理だろうか。

 また、次のことも危機管理のうちに入れて置かなけれならない問題であろう。

 父子世襲権力継承の金正恩が子どもだった20年前の1991年前後に他人名義の偽のパスポートを使って複数回、日本に極秘に入国し、東京ディズニーランドなどを訪れていたと、《子ども時代 極秘に複数回入国》NHK NEWS WEB/2011年12月22日 19時5分)が公安当局からの情報として伝えている。

 パスポート上の年齢は8歳。兄のジョンチョル氏とみられる人物もパスポート上の年齢10歳で同時に入国。正恩の母親の大阪出身のコ・ヨンヒも数日後に入国、日本国内で子供たちと合流。

 公安当局が当時、北朝鮮関係者が不法に入国したという情報を得て行動確認に乗り出したが、正恩らは入国から10日後の5月22日に既に出国していた。

 2001年に長男の金正男が密入国、入国管理局が身柄を拘束。政府は3日後に中国に強制送還している。

 金正男の場合は拘束できたが、正恩は複数回密入国、母親も拘束された場合、大問題になることが予想されていながら、密入国を成功させている。

 このことは彼らは日本密入国をリスクある賭けとは見ていなかったことを物語っている。金正日が工作員を日本に密入国させ、日本人を拉致までさせていた自由自在な振舞いの延長上の不法行為と看做すことができる。

 このような事態を裏返すと、日本は密入国に対する危機管理がなっていなかったことになる。金正男拘束から判断すると、この手の危機管理は上達したと見ることもできるが、相手としたら、それを上回る密入国の方法を開発していないと否定はできまい。

 金正日とて、自身の独裁体制が何らかの事情で破綻した場合の朝鮮半島有事を常に想定していたはずだ。だからこそのミサイル開発であり、核兵器開発だったろう。

 朝鮮半島有事となれば、在韓米軍のみならず、在日米軍の出動も計算に入れているだろうから、そのことの備えとして、ほぼ自由に日本に密入国できることから日本国内を撹乱するために日本人になりすました北朝鮮人工作員を既に多数密入国させている危険性も考慮しなければならないはずだ。

 彼らがもし日本国内撹乱のために密入国しているとしたら、最適の武器は隠しやすく目立たないサリン等の神経ガス、あるいは細菌兵器の類ではないだろうか。

 このような危険性がゼロなら構わないが、想定できる危険性である以上、その危険性に備えるのが危機管理である。

 だが、今回政府が検討を開始するという朝鮮半島有事の際の北朝鮮難民と韓国在留邦人保護の危機管理のうちには危険性として否定できない北朝鮮工作員の密入国とその武器についての対策の検討が入っていない。

 実際は入れているが、秘密工作の部類に入っていて、密かに捜索しているということなのだろうか。それとも今回の検討があまりにも素早い対応であり過ぎたためについ漏れてしまったということなのだろうか。


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