《小沢一郎代表 広島選挙区・佐藤こうじ候補応援演説》(2013年7月15日)
石破自民党幹事長のの発言を取り上げる前に小沢一郎生活の党代表の広島応援演説を紹介することにする。食い止めるべき暴走の具体的対象は安倍晋三の弱肉強食の政策そのものだからであり、小沢一郎の演説がこの点に触れているからである。
皆さんには大変お暑い中を、お休みの中を、こうして街頭にお出かけいただきまして本当にありがとうございます。まず皆さんのご厚意、ご支援に対しまして心から厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
ご承知のように参議院選挙もいよいよ後半戦に入っております。今日は私の古くからの友人であり、同志である、たどれば先代の佐藤守良(佐藤こうじ候補の父)先生以来、本当に苦しい時も厳しい時もお互いに力を合わせ、政治的行動を共にしてきた本当の同志である佐藤こうじ君が今回の選挙戦、大変厳しい状況の中で、戦っております。
どうか、皆様におかれましては何としても佐藤こうじ君を皆さんのお力でもう一度国会に送っていただきますよう今日はお願いに参りました。どうぞ宜しくお願いいたします。
今、政権は昨年の総選挙の結果、民主党政権の失敗によって、もちろんその責任の一端を私は回避するつもりはありませんが、自公の政権、安倍政権になってしまいました。
もちろん政治は、どの党であろうが国民皆さんにとって良い政治をすれば、どの党であろうがいいわけです。私も安倍さんが、自民党が国民皆さんのために良い政策を実行し、良い政治をしてくれるのならば、諸手を挙げて賛成いたします。
しかし、今日の安倍政権、自民党の政権運営の考え方を見てみますと、私ども、どうしても相容れない。受け入れられない政権運営のやり方があります。それは何かと言いますと、一言で言えば、今の政治の運営、政策の立て方はすべて強い者の味方、強い側に立ってやっているということであります。
昔から強気をくじき弱気を助けるという言葉がありますが、今は逆だ。強い者をどんどん強くする。そして彼(安倍氏)の言うには、競争力のある大きな企業をどんどん大きくしてそれらが儲けてくれればいい。その儲けを皆で配分すれば皆もよくなるのではないか。そういう理屈を言うわけでございます。
しかし皆さん、この話はいつか聞いたことのある話です。小泉さんも、そう言いました。自由競争、市場経済、自由な競争の中で、勝ち上がった者、強い者、生産性の高い産業をどんどん大きくすればいい。そう言いましたけれども、その結果、どうなったでしょうか。
確かに大企業はどんどん大きくなり、簡単に言えば(今や)大企業の貯金=懐(内部留保)は260兆円ものお金を持っていると言われている。260兆円と言っても想像がつきませんけれども、国の予算が90兆円前後なので、いかに莫大なお金かわかると思います。それだけ儲かったけれども、小泉さんの言うようには、儲かった分が国民皆さんに配分されることはなかった。
あれ以来、国民所得はどんどん減って、10パーセント以上、国民の所得・収入は減っております。したがいまして強い者をどんどん大きくして儲けさせたとすれば、そのおこぼれでもって国民生活もレベルアップするのだということは、全く事実と反することが既に証明されているわけであります。
ところが安倍さんはまた同じことを言っております。強い者をどんどん後押しして大きくするのだ。いずれ時間差はあるけれども、皆さんにも回ってくるに違いない。こういう無責任なことを言っております。
強者の論理、自由競争で勝ち残った者、負けた者はもう仕方がないのだと。企業も、地域も、弱い者を置いてきぼりにする以外にない。それでいいという考え方でございます。私たちは何としてもこの考え方を受け入れることができない。皆さんそうでしょう。自由競争、勝手に自由にやれ、それで勝った者が生き残ればいいのだと。これでは動物の世界、獣の世界と同じであります。
何のために政治はあるのか。政治は強い者だけを助けるのではありません。そうでなくて、弱い立場の人も皆が一定の生活をきちんとやってゆける政策を実行し制度を作る。それが政治の役割であります。
したがって私たちは国民の生活が第一という考え方で、党名も「生活の党」と名付けたわけであります。今アベノミクスとマスコミがもてはやしております。何か国民皆さんに良いことがあるのではないかという錯覚をお持ちになっている方もいるかもしれません。
しかし皆さん、超金融緩和で株が上がった。円が安くなった。これで一体得をした人は誰なのですか。株が上がっても、それは一部の方でしかありません。また円が安くなって一般の人たちが何か利益を得たでしょうか。
物価が上がるだけでありまして、利益を得たのは輸出をしている大企業だけであります。この輸出の大企業は消費税さえ払っていない。消費税はカットされるのです。ですからその意味において、このアベノミクスと呼ばれるものは、マスコミが作り上げたイメージであって国民の皆さんに何もプラスにもならないと、国民の皆さんもだんだん分かってきたと思います。私たちはそういう中で、直接国民生活に関することについて具体的な案を提案いたしております。
今TPPというアメリカとの交渉の問題も出てきていますが、TPPは、農林漁業、一次産業だけに大きな影響があるわけではありません。私は北国、岩手県の出身ですが、アメリカの言うとおり実行されたらどうなるか。そういう試算をいたしました。岩手県の農林水産物の生産高は半分になるという試算であります。
一次産業は致命的な影響を受けるのはその通りですけれども、アメリカの本当の狙いは農林漁業ではないのです。一番皆さんに身近なところを取り上げれば、医療の問題があります。
アメリカは国民皆保険ではありません。自分の収入に応じて自由に民間の会社と保険の契約を結びます。日本では皆保険を当たり前みたいに思っていますけれども、実はアメリカはそうではない。
それでアメリカ人の5000万人に近い人は保険に入れない。医療のサービスを受けられないのがアメリカ社会の実態なのです。そういうアメリカ流のルールを日本でも何とか広めたい。アメリカの大きな医療(保険)会社の後押しがあるだと思います。そういう考え方でTPP交渉が行われる。
ところが陰でアメリカから言われているのかもしれませんが、TPP交渉の前に政府は自分から先端的な医療あるいは非常に先端的な薬、こういうものについては保険の対象外にして自由診療の枠をどんどん広げようとしている。
TPP交渉にまだ入れてもらっていないでしょう。加入はしましたけれども、まだ議論はしていない。その前に政府自体が、安倍政権自体が混合診療、自由診療の枠をもっと拡大している。
皆さんそうなるとどうなりますか。結末はわかりきっています。いわゆる高度な先端技術、先端医療技術、あるいは高価な薬、それを手に入れられるのは一定の所得のある人しかいません。そうしますと、本当にその他の人はこれを受けられない。
そういう状況がどんどん広まってくれば、結局皆保険という制度を維持できなくなってしまう。当然でしょう。収入の多い人はそっちの方に行ってしまうわけですから。国民の健康、命にかかわる医療制度、日本の皆保険は、日本人の健康に関するセーフティーネットです。これさえもアメリカの言いなりにどんどん取り入れようとしているのが今の安倍内閣の実態であります。
また雇用の制度もそうです。安倍さんは雇用人口が増えたと言いますが、それは皆非正規(雇用)。非正規というとアルバイトみたいなもので、いつでも解雇できる。アメリカではレイオフと言って景気が悪くなり、企業の都合が悪くなれば、いつでも首を切れる。
この非正規社員が増えただけで、正規社員は13万人さらに減っているのが実情です。(現状は)38パーセントが非正規であるこの仕組みをどんどん(拡大)してしまうと、いつ首になるか分からないので、自分の人生設計ができなくなってしまいます。
もちろん日本の従来の終身雇用制については、プラスマイナスいろいろな議論はありましたが、少なくとも一所懸命働けば、その会社でずっと勤めることができるという意味で雇用のセーフティーネットでした。これも今崩れようとしている。それを政府自らが崩そうとしている。
今の自民党政権、安倍政権はまさに強い者の側に立つ、大企業の側に立った論理でもって政権運営、政治運営をしている。これは絶対許すことができません。私たちは何としても、そういう政治のやり方にストップをかけなければなりません。
昨年の総選挙において、自民党政権を誕生させてしまったことに私も責任を本当に感じております。何とかしてこの参議院選挙、国民皆さんの受け皿を作らなければいけない。そういう努力をして参りましたが、なかなかできずに選挙戦に突入してしまいました。
「自民党がこんなに勝ってしまったのでは、政権交代はもうとてもできない。」そう思っている方が私たちの仲間にもいますが、決してそんなことはありません。去年の総選挙、なるほど自公でもって3分の2の議席を取りました。しかし、これは小選挙区制度の一つの機能であり、自民党の得票率は全く増えておりません。
総選挙後の全国で色々な首長、市長選挙が行われてきましたが、ほとんど全ての市でもって非自民の候補者が自民の候補者を破っております。どういうことかというと、1対1の選挙戦となれば、国民は今なお、自民党ではなくて、もっと市民のサイド、国民サイドに立った人を、政党を選びたいという気持ちを持っているということです。
先日、小泉さんの地元である横須賀で小泉親父さんと進次郎さんの親子でもって一生懸命に自民党候補を推しましたが、横須賀の市民は自民党でない市長を選んだ。
ですから私は、この広島であれ、どこであれ全国皆そうできるのだと思います。私どもは何としても自民党に代わる本当に国民サイドに立った政権をもう一度打ち立てなければならない。それが今なお国民皆さんの願いであると思っております。
そのためにも、この参議院の選挙戦、何としても、もう1度の政権交代の第一のステップとして、皆さんのお力で我々は一定のきちんとした勢力を維持しなくてはなりません。
どうかそういう大きな背景をもったこの参議院選挙でございます。皆さんのお力で国民のための政権、この火を絶対消さないでいただきたい。そのためにも、佐藤こうじ君を皆さんの代表として是非とも参議院にもう一度送っていただきたい。それが私の皆さんへのお願いでございます。
本当に今日は太田町の皆様、地域の皆様、お忙しい中、こうして大勢ご参加いただきまして誠にありがとうございました。重ねてお願い申し上げましてご挨拶といたします。ありがとうございました。
7月17日、埼玉県県所沢市で山口公明党代表と共に街頭演説を行い、そうのたまわったそうだ。《石破幹事長 公明と連立で暴走ありえない》(NHK NEWS WEB/2013年7月17日 20時27分)
多分、それが最も説得力ある言葉遣いだと思っているらしく、目ン玉を上目遣いにして、一語一語を引きずるような独特の言い回しで尤もらしげに話したのだろう。
石破自民党幹事長「自民・公明両党は、これまで自衛隊のイラク派遣などいろいろなことを議論してきた。『自民党が参議院選挙で勝つと暴走する』という人がいるが、公明党と連立を組んでいるかぎり、自民党が暴走することはありえない」
山口公明党代表「自民・公明両党は、10年以上、連立政権を組んできた経験がある。時々、意見が違うこともあるが、国民が納得する道は何かということを、とことん議論を尽くして結論を出してきた。公明党の持ち味と自民党の力を合わせて国民の期待に応えていくことが大事だ」――
石破茂は東大出だから、自分が何を喋ったか十分に理解しているはずだ。
「公明党と連立を組んでいるかぎり、自民党が暴走することはありえない」・・・・・・・・
つまり、公明党が連立を離脱した場合、つまり、つまり、自民党が単独政権の場合は暴走があり得ると言ったことになる。「自民党が暴走することはありえない」のは、「公明党と連立を組んでいるかぎり」という条件付きなのだから。
このことを裏返すと、自民党は単独政権の場合は暴走しかねない党だと言ったことにもなる。
この場合、つまり公明党が連立を離脱しても自民党が参院で単独過半数の議席を獲得していたなら、石破茂が自民党は暴走を党の体質としていると言っている以上、暴走の条件は維持できることになる。
と言うことは、この参院選で公明党の議席無しで自民党が単独過半数以下の議席しか獲得できず、公明党と組むことでしか参院で過半数を維持できない状況に立たされたとき、自民党は自らが暴走した場合の公明党の政権離脱を恐れて、暴走を抑え、慎重に政権運営することになる。
公明党にしても、「10年以上、連立政権を組」もうと、20年以上組もうと、自民党の体質としている暴走を食い止めるには、既に衆議院では自民党が単独過半数以上の議席を獲得していて、実質的には公明党の議席を必要としていない以上、参議院で公明党の議席無しでは自民党が単独で過半数以上の議席を獲得できない状況の方が自民党暴走の最も効果的なブレーキ役としての力を発揮できることになる。
特に憲法改正問題で、安倍晋三が望んでいて公明党が消極的である憲法改正の各議院総議員の3分の2以上賛成と定めた発議要件を2分の1とする96条改正問題や公明党が反対している集団的自衛権を行使できる国防軍の創設を可能とさせる目的の9条改正は自民党が衆参両院とも単独過半数を獲得していたなら、憲法改正を公約としている野党の協力を必要として両院共に3分の2以上の勢力を確保しなければならないが、反対する連立政党は障害以外の何ものでもなくなって、公明党は自民党暴走のブレーキ役足り得なくなる。
やはり石破茂が望むように、大量議席を獲得した場合の自民党が体質としている暴走を前以て予測し、その食い止めに備えるには参議院選挙で自民党単独では過半数の議席を獲得できない程度に投票する危機管理が国民の側には必要ということになる。
「公明党と連立を組んでいるかぎり、自民党が暴走することはありえない」という天下の自民党幹事長石破茂の折角の条件付けである。その条件を叶えてやろうではないか。