玉城デニーは普天間の辺野古移設阻止で安倍政権を踊らすことができるのか、阻止できないままに自身が踊るだけで終わることになるのか。
2018年10月30日、衆院本会議代表質問で旧民主党元総理の野田佳彦が登壇、消費税の引き上げを過去2回先送りした安倍晋三の責任を追及、「消費税引き上げの先送りや使途の変更を、突然、選挙の争点にするのは政争の具にしたと同じではないか」と糾弾。あるいは安倍晋三の任期が2019年11月に在職歴代1位となることに対して
「結果を何も残していない。『長きをもって貴しとせず』、この言葉を肝に銘じるべきだ」と安倍政権を酷評、その他北朝鮮問題や北方四島問題等の外交課題を取り上げて、解決に向けた能力不足を指摘した。
安倍晋三は元総理から声高に批判を浴びせられて頭に血が上ったのか、声高に対して声高で応じる如くのかなりヒートアップした答弁を行った。
ここでは北方四島問題の遣り取りだけを取り上げてみる。
2018年10月30日衆院本会議代表質問野田佳彦 野田佳彦「総理は戦後日本外交の総決算と高らかに宣言をしています。念頭にあるのは北方四島問題と拉致問題でしょう。国民の関心の高い外交課題を政権浮揚の道具にしたいのでしょうが、いずれも前進しているとは言えません。 9月12日、ロシアので開かれた東方経済フォーラムに於いてプーチン大統領は『平和条約を結ぼう。年末までに。前提条件なしで』と突然提案しました。北方四島の帰属問題の解決を前提とする日本の方針と真逆です。引き分け狙いを持った柔道家プーチン大統領と22回も会談を重ねて効果はなかったようで、習近平主席らの面前で意表を突く提案で技アリを取られ、直ちに反論できずに更に技アリを取られ、併せて1本負けではないですか。 反論があれば、お伺いを致します」 安倍晋三「北方四島についてお尋ねがありました。 ご指摘のプーチン大統領の発言の全体の中には様々なサインが含まれています。フォーラムという公開の場で交渉の一部となるような遣り取りを行われたことは適当ではないと考え、終了後直ちに私はプーチン大統領に対し領土問題を解決して平和条約を締結するのが引き続き我が国の基本的な立場であることを伝え、突っ込んだ遣り取りを行いました。 何れにせよ政府としては北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、引き続き取り組んでまいります」 |
2018年9月12日東方経済フォーラム2018全体会合は公開の場で開催され、壇上のテーブルにプーチンを初め、中国の習近平、日本の安倍晋三、その他モンゴルなどの各国首脳が3名、合計6名が居並んでいた。
プーチンの件(くだん)の発言はプーチン自身や我が安倍晋三、習近平中国国家主席のスピーチ後、司会者に求められて行ったものだという。先ず安倍晋三の「スピーチ」(総理官邸/2018年9月12日)の一部を取り上げてみる。
2018年9月12日東方経済フォーラム全体会合 安倍総理スピーチ 安倍晋三「そして、日露関係であります。日本にとって、21世紀におけるこの地域の平和と繁栄の礎を築くに当たり、日露関係は無限の可能性を秘めています。日露の間には、戦後70年以上の長きにわたり、平和条約が締結されていません。これは異常な状態であるとする思いにおいて私とプーチン大統領は一致しています。2016年12月、プーチン大統領を私の故郷(ふるさと)、長門(ながと)にお迎えし、2人で日露関係の将来についてじっくりと話し合い、北方四島において共同経済活動を行うための特別な制度に関する協議の開始、元島民の方々による自由な墓参の実現について約束しました。そして、長門の地で平和条約問題の解決に向けた真摯な決意を共有しました。聴衆の皆さん、この長門での約束は、着実に実施されつつあります。日露関係は今、かつてない加速度で前進し始めています。プーチン大統領と私が約束した両国協力のプランは、150以上に上ります。うち半数以上が、もう現実に動いているか、今正に動こうとしています。お見せするビデオが、そこを雄弁に教えてくれます。ではビデオを御覧いただきます。 いかがでしょうか。一本貫く太い流れをお感じいただけたでしょうか。8項目の協力プランの実現を通じて、ロシア住民の生活の質の向上が、皆様にも実感できるようになるのではないでしょうか。ロシアと日本は、今、ロシアの人々に向かって、ひいては世界に対して、確かな証拠を示しつつあります。ロシアと日本が力を合わせる時、ロシアの人々は健康になるのだというエビデンスです。ロシアの都市は快適になります。ロシアの中小企業はぐっと効率を良くします。ロシアの地下資源は、日本との協力によってなお一層効率よく世界市場に届きます。ここウラジオストクを始め、極東各地は、日露の協力によって、ヒト、モノ、資金が集まるゲートウェーになります。デジタル・ロシアの夢は、なお一層、早く果実を結ぶという、そんな証拠の数々を、今正に、日本とロシアは生み出しつつあります。 日本とロシアには、他の二国間に滅多にない可能性があるというのに、その十二分な開花を阻む障害が依然として残存しています。それこそは皆さん、繰り返します、両国がいまだに平和条約締結に至っていないという事実にほかなりません。今年の5月25日のことでした。場所はサンクトペテルブルクの国際経済フォーラムです。想像してみましょうと、私は聴衆を促しました。 日本とロシアに永続的な安定が生まれたあかつき、一帯はどうなるのか、希望と共に想像してほしいと呼びかけました。そのあかつき、私たちは、北半球と東半球の一角に平和の柱を打ち立てている。それは頼もしくも地域と世界を支える太い柱となっているはずなのであります。 北極海からベーリング海、北太平洋、日本海は、平和と繁栄の海の幹線道路になることだろう。対立の原因をなした島々は物流の拠点として明るい可能性を見いだし、日露協力の象徴へと転化するだろうし、日本海も恐らく物流のハイウェイとして一変しているだろう。 そしてその先には、中国、韓国、モンゴル、そしてインド・太平洋の国へとつながる、大きくて自由で公正なルールに支配された、平和と繁栄、ダイナミズムに満ちた地域が登場するであろう。 プーチン大統領、もう一度ここで、たくさんの聴衆を証人として、私たちの意思を確かめ合おうではありませんか。今やらないで、いつやるのか、我々がやらないで、他の誰がやるのか、と問いながら、歩んでいきましょう。 ・・・・・・・・ プーチン大統領と私は、今度で会うのが22回目となりました。これからも機会をとらえて、幾度となく会談を続けていきます。平和条約締結に向かう私たちの歩みをどうか御支援を皆さん、頂きたいと思います。力強い拍手を、聴衆の皆さんに求めたいと思います。ありがとうございました」 |
8項目の協力プランの実現を通してロシアと日本が力を合わせれば、ロシア住民の生活の質が向上し、ロシアの人々が健康になる根拠となり、ロシアの都市は快適になって、ロシアの中小企業は格段に効率性を獲得、ロシアの地下資源は日本との協力によってなお一層効率よく世界市場に届くようになる。
さらに日ロの協力によって両国間はヒト、モノ、資金が集まるゲートウェー化し、その結果、(プーチンによって2016年末作成のコンピュータを使った各種情報処理技術駆使をベースとした「デジタル経済推進プログラム」の到達点である)「デジタル・ロシア」の夢は、なお一層、早く果実を結ぶという、そんな証拠の数々を、今正に、日本とロシアは生み出しつつあるだけではなく、中国、韓国、モンゴル、そしてインド・太平洋の国へとつながる、大きくて自由で公正なルールに支配された平和と繁栄、ダイナミズムに満ちた地域が登場することになる。
そして「プーチン大統領、もう一度ここで、たくさんの聴衆を証人として、私たちの意思を確かめ合おうではありませんか」と北方四島の帰属問題解決を出発点とした平和条約締結を迫っている。「今やらないで、いつやるのか、我々がやらないで、他の誰がやるのか、と問いながら、歩んでいきましょう。」と。
発言に効果を持たせるために要所要所で適宜間を置き、要所要所で顔を右に左に動かしてプーチンを見たり、習近平を見たり、あるいは聴衆に目を向け、手をジェスチャーたっぷりに横に差し出したりして得々となって喋る安倍晋三の様子が浮かんでくる。
だが、自身がこのように口にしたロシアの繁栄は全て北方四島帰属の解決と平和条約締結にかかっていて、それなくして実現しない絶対的要因であるかのように位置づけ、このようなロシアの繁栄構築だけではなく、中国、韓国、モンゴル、そしてインド・太平洋の国へとつながる、大きくて自由で公正なルールに支配された平和と繁栄、ダイナミズムに満ちた太平洋地域構築の主導者として自身・日本をロシア、さらに中国やその他の太平洋の国々の上に置いている物言いとなっている。
日本や自身に対するこの万能化の思い上がりは凄い。
では、プーチンの発言を見てみる。
プーチン(戦後70年以上、日ロ間で北方領土問題が解決できずにいることに触れた上で)「今思いついた。まず平和条約を締結しよう。今すぐにとは言わないが、ことしの年末までに。いかなる前提条件も付けずに。
(会場から拍手)拍手をお願いしたわけではないが、支持してくれてありがとう。その後、この平和条約をもとに、友人として、すべての係争中の問題について話し合いを続けよう。そうすれば70年間、克服できていない、あらゆる問題の解決がたやすくなるだろう」
多分、プーチンは日本や安倍晋三の主導なくしてロシアの繁栄はないといった安倍晋三の思い上がった物言いにカチンと来たはずだ。その結果、領土の帰属問題の解決は時間がかかる、その解決は抜きに平和条約を締結して、お前さんが言うロシアの繁栄、太平洋地域の繁栄を早いとこ見せてくれといった思いが反発の形で内心に渦巻いた結果、このような要求になったと見ることはできる。
但し安倍晋三に対する反発が言わせた前提条件なしの平和条約締結要求であったとしても、プーチンと22回の首脳会談を重ねながら、平和条約締結の前提となる北方四島の帰属問題の交渉が何ら進展していない、ゼロそのものであることに変わりはない。
なぜなら、安倍晋三自身が首脳会談という場ではない経済フォーラムの場に領土の帰属問題と平和条約締結問題を持ち出して、「今やらないで、いつやるのか、我々がやらないで、他の誰がやるのか」などとわざわざ迫らなければならなかったということは、首脳会談の場で何ら進展がないからで、進展していない「エビデンス」(根拠・証拠)としかならない。
もし安倍晋三が習近平やその他の国の首脳、さらには経済フォーラムの聴衆を領土の帰属問題と平和条約締結を前に進める証人にしようする目的をスピーチに隠していたなら、そのこと自体も何ら進展がない「エビデンス」(根拠・証拠)としかならない。
進展ゼロだから、首脳会談の外に持ち出さなければならなかったのであって、少しでも進展していたなら、首脳会談で積み重ねていかなければならない問題である。