安倍晋三の「日本を取り戻す」とは第189回国会施政方針演説で戦前迄の軍国日本のことだと間接白状した

2015-02-13 07:34:22 | 政治


 昨日2月12日(2015年)、安倍晋三が衆議院本会議で施政方針演説を行った。冒頭、2邦人殺害事件に触れて2人に対して哀悼の意を述べ、例の如くに常套句となっている「日本がテロに屈することは決してありません」を繰り返した。

 但し「国内外の日本人の安全確保に、万全を期してまいります」とは言うものの、アルジェリア人質・日本人10人犠牲事件でもそうだったが、こういったケースに迫られた場合の邦人保護はどういう対策で応じるかの説明が一切ない。これまでもなかったし、多分、今後もないだろう。今まで通りに政府は解放に全力を尽くしていると言葉で言い、そういった姿勢を見せるだけで終わるに違いない。

 本題に入っていきなり 「日本を取り戻す」と、静かな声ではあったが、確信に満ちた断言口調で宣言した。

 アベノミクスによって取り戻すのは日本の経済であって、日本の全体的な国力・地位を取り戻すのはその国家主義や歴史認識等を基盤とした安倍政治全般に亘る力によってであるのは断るまでもない。

 続いて総選挙に勝利して民意を得たこと、取り組む政策を述べた後、

 安倍晋三「明治国家の礎を築いた岩倉具視は、近代化が進んだ欧米列強の姿を目の当たりにした後、このように述べています。

 『日本は小さい国かもしれないが、国民みんなが心を一つにして、国力を盛んにするならば、世界で活躍する国になることも決して困難ではない。』

 明治の日本人に出来て、今の日本人に出来ない訳はありません。今こそ、国民と共に、この道を、前に向かって、再び歩み出す時です。皆さん、『戦後以来の大改革』に、力強く踏み出そうではありませんか」・・・・・

 安倍晋三が言う「日本を取り戻す」とは明治から戦前迄の日本を取り戻すことだと間接的に白状したのである。いわば安倍晋三は「明治の日本人に出来て、今の日本人に出来ない訳はありません」からと、明治から戦前迄の日本を自らの国造りのモデルに据えようとしている。

 日本が日露戦争(1904年(明治37年)2月8日~1905年(明治38年))の勝利による朝鮮半島と満州の権益確保や日韓併合植民地化(1910年(明治43年)8月29日)等によって国際的な発言力をつけていったのは、明治に入ってからその備えはしていただろうが、実際には明治末期のことで、その後の中国領土一部侵奪の1932年(昭和7年)から1945年(昭和20年)までの植民地満州国経営、さらに中国侵略後の1937年(昭和12年)からの日中戦争によってさらに国際的な発言力を高めていった。

 いわば明治末期から始まって大正・戦前昭和に向かって進行させていったアジア大陸への進出・侵略が日本の国際的地歩を確固とする原動力となっていったのであり、その集大成は戦前昭和に凝縮されていた。

 と言うことは、岩倉具視が言う「世界で活躍する国」は明治時代のみで成り立ったわけではなく、特に戦前昭和を舞台として成り立たせていた。しかも戦争や侵略を手段として。

 当然、岩倉具視が描いた言葉の実現は正確には戦争と侵略で「世界で活躍する国になった」としなければならない。

 その他に日本に国際的発言力を確保できる手段があったと言うのだろうか。

 元々資源があるわけではない資源小国であり、そのために資源を求めて中国に侵略したのであり、南方の国々を次の侵略の標的としたのだが、戦前の日本は石油、鉄類、機械類等を70%近くから70%以上を特にアメリカからの輸入に依存していた。

 1936年~1937年の個人消費額は日本98ドル、アメリカ473ドルという統計もあり、1940年の実質国内総生産(GDP)は日本2017億6600万ドル、アメリカ4.6倍の9308億2800万ドル、総合的国力は約20倍の格差があったと言われている。

 また明治維新後の日本の主要輸出品は生糸、茶、米、水産物、石炭等の1次産品であり、その1位の座を占めていた生糸が機械設備や軍艦などを購入する外貨獲得の主力になっていたと言う。

 戦争と侵略以外に日本の国際的発言力の有力な後ろ盾を見い出すことはできない。まさに戦争と侵略を手段として世界で活躍したのである。

 安倍晋三は明治の初期に活躍し、明治16年に57歳で没した岩倉具視の「日本は小さい国かもしれないが、国民みんなが心を一つにして、国力を盛んにするならば、世界で活躍する国になることも決して困難ではない」という言葉を紹介することで、世界で活躍するために、安倍晋三自身の言葉を借りると、「世界の真ん中で輝く」ために取り戻す「日本」のモデルを、間接的な物言いながら、明治から戦前昭和迄の軍国日本としたのである。

 戦前日本が戦争と侵略を背景に国際的地位を獲得したということは本人は考えもせず、またそうした認識は元々ないままに件(くだん)の発言をしたのだろうが、軍事力でも国際的地位を高めたいと欲していて、その手始めが集団的自衛権の一内閣の憲法解釈による行使容認に置いている国家主義者であり、右翼の軍国主義者でもあるのだから、戦争と侵略を可能とした戦前の日本の世界に冠たる軍事力を意識下に置いた岩倉具視の「世界で活躍する国」という言葉と見なければならない。

 安倍晋三の「日本を取り戻す」の「日本」は否応もなしに明治から戦前昭和までの軍国日本が浮かび上がってくる。

 当然、「日本は変えられる」の項目で述べた「憲法改正に向けた国民的な議論を深めていこうではありませんか」にしても、戦前の大日本帝国を理想の国家像に据え、民主主義の装いを纏わせた日本の憲法の改正を目指していることになる。

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