籾井NHK会長は放送を「政府のスタンス」に合わせる意思欲求を疼かせた国家の下僕的精神の持ち主

2015-02-08 06:36:33 | 政治


 籾井勝人NHK会長が2月5日の定例記者会見質疑で戦後70年に当り従軍慰安婦問題について番組で取り上げるかを問われたという。その発言を次の記事から見てみる。


 《NHK会長「挑発的な質問やめて」 会見主なやりとり》asahi.com/2015年2月5日21時16分)
  
 NHKの籾井勝人会長の2月5日の定例会見の主なやりとりは次の通り。

 【戦後70年の番組について】

 記者「今年は戦後70年の節目。夏に特集番組や戦争に関するものをやると思うが、基本方針は」

 籾井勝人NHK会長「現場で検討してもらっている最中。そういう意味で私が基本方針がどういったものか承知しているわけではございません。戦後70年、前回は60年だったんですが、だんだん戦後が遠くなっている中で、戦争というものの悲惨さと同時に、やはり我々が戦争の廃墟(はいきょ)からどうやって立ち上がってきたのかという、こういう元気が出る番組も入れていただきたいと個人的には思っております。ただ全体としての方針は、まだ聞いておりません」

 記者「去年、朝日新聞の誤報問題で従軍慰安婦が脚光を浴びたが、従軍慰安婦問題を戦後70年の節目で取り上げる可能性は」

 籾井勝人NHK会長「なかなか難しい質問ですが、やはり従軍慰安婦の問題というのは正式に政府のスタンスというのがよくまだ見えませんよね。そういう意味において、やはり今これを取り上げてですね、我々が放送するということが本当に妥当かどうかということは本当に慎重に考えなければいけないと思っております。そういう意味で本当に夏にかけてどういう政府のきちっとした方針が分かるのか、この辺がポイントだろうと思います」

(別の質問のやりとりを挟んで)

 記者「先ほどの従軍慰安婦問題で、正式に政府のスタンスがよく見えないとおっしゃった。現時点では河野談話があり、現政府も踏襲すると言っている。それでも政府のスタンスがよく見えないというのは、河野談話について変わるべきだとか変わりうるとか言うことでおっしゃってるんでしょうか}

 籾井勝人NHK会長「その手の質問にはお答えを控えさせていただきます」

 記者「よく見えない」という認識は……」

 籾井勝人NHK会長「あの、どんな質問もお答えできかねます」

 記者「それはどうしてですか」

 籾井勝人NHK会長「しゃべったら、書いて大騒動になるじゃないですか」

 記者「大騒動になるようなお考えをお持ちなのですか」

 籾井勝人NHK会長「ありません。そんな挑発的な質問はやめてくださいよ」

 籾井勝人は戦後70年に関わる戦争番組は「現場で検討してもらっている最中」と言って、現場に主体性を持たせているが、事歴史認識に関わる放送は「政府のスタンス」に合わせる意向を示して現場の主体性を無視する矛盾した認識を示している。

 放送の編集権は会長にあると言っても、編集内容に関わる対外的な責任主体という意味で与えられた編集権であって、編集に関わるすべての権利を単独に与えられているわけではあるまい。

 後者なら、独裁となる。対内的には編集に関しては合議制であることによって放送に関わる番組編集は民主国家にふさわしい民主体制を取ることができる。

 また、NHKが公共放送であっても、対外的責任は履行対象を国家とするのではなく、国民としなければならないのは断るまでもない。いわばNHKは、他の民放も同じだが、国家の知る権利に応えるために存在するのではなく、国民の知る権利に応えるために存在する。

 国家の知る権利に応えるために存在するようになったら、国家の下僕(しもべ)に化したも同然となる。

 にも関わらず、放送内容を「政府のスタンス」に合わせて、国家の知る権利にマッチングさせようとする欲求を疼かせている。編集そのものの主体性、あるいは自律性を放棄して、国家に売り渡そうとすることに他ならない。

 自らを国家の下僕(しもべ)に位置させているかのようなこの精神からは会長としての人格、あるいは適格性を窺うことはできない。即刻退任すべきだろう。

 「政府のスタンス」に合わせようとする欲求はまた、国家の考えを正しいと規定して、それに無条件・無考えに追従しようとする欲求をイコールとしていることになる。

 例えば従軍慰安婦に関して言うと、安倍晋三や高市早苗、稲田朋美等のその一派は朝日新聞が事実に基づかない「吉田証言」に依拠した誤報記事によって日本の名誉を傷つけ、世界に広めたと非難、さも従軍慰安婦の強制性の事実が日本の歴史上、存在しないかのように触れ回っているが、「吉田証言」の従軍慰安婦強制連行が虚偽物語であったとしても、日本の軍隊が各占領地で未成年を含む若い女性を暴力的に拉致して軍慰安所に監禁、自由を奪い強制的に売春に従事させた事実は多くの国籍の元従軍慰安婦の多くが証言で伝えていて、その強制性を日本の歴史上存在しないとすることはできない。

 国家の考えを正しいと規定して、それに無条件・無考えに追従することは籾井勝人自身が国家権力無誤謬説、あるいは国家権力性善説に立っていることを意味する。戦前の日本ではこのことが一個人にとどまらずに国民に全体的に行き渡って、国家権力と一般国民が同じ関係性を取って国家を破滅させたことと照らし合わせると、従軍慰安婦の問題にとどまらず、そういった関係性を良としていること自体に非常に危険な思想を感じざるを得ない。

 どう見ても、籾井勝人からはNHKという公共放送の会長を務める資質を窺い知ることはできない。

 安倍晋三は情けない男を会長にすべく仕組んだものである。先ずは百田尚樹といった程度の低いお友達を会長選出に必要人数分を議席多数の力でどうにでもなる国会同意人事を経てNHK経営委員に送り込み、そのお友達の数で籾井勝人を会長に担ぎ上げた。

 同質の人間同士だから、お互い相手に情けなさを嗅ぎ合うこともなく、立派な人格者だと尊敬し合っているのかもしれない。

 いずれにしても「天下のNHK」と言われているが、籾井勝人のような国家の下僕(しもべ)的精神の持ち主をいつまでもその資格がないままに会長に頂いているようでは「天下」の名が泣く。

コメント (1)
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