安倍自民党の勝たせ過ぎは良くない 「原発安全神話」ならぬ「政治安全神話」の過ちを犯すことになる

2012-12-14 11:51:42 | Weblog

 この世に絶対は存在しない。政治にしても絶対ではない。安倍政治に於いても同じである。政治が絶対でないにも関わらず、数の絶対を与えた場合、絶対でない政治を絶対とすることになる。

 これは「政治安全神話」の打ち立てを行なうに等しい。原発が絶対安全ではないにも関わらず、「原発安全神話」を打ち立て、その安全神話の上にアグラをかいて必要な危機管理対策を疎かにしてきた。そのツケが福島原発事故で露わになった。

 絶対ではない政治を絶対とさせた場合、言ってみれば、大政翼賛会状況を作る出すことに手を貸すことになる。
 
 絶対とさせないために程々の議席で収まるよう、有権者は配慮すべきである。

 安倍晋三が打ち出した「無制限金融緩和」という大胆な金融政策を例に取って説明してみる。

 11月17日(2012年)熊本市内の講演。

 安倍晋三「やるべき公共投資をやり、建設国債をできれば日銀に全額買ってもらう。

 物価目標を達成するため、日銀は無制限にお札を刷って、資金供給を増やすべきだ」(MSN産経

 以降、同じような発言を繰返している。

 安倍晋三「無制限金融緩和」とは、赤字として残る紙切れの建設国債を買わせて、日銀からカネを引き出すのも、日銀が「無制限にお札を刷って、資金供給を増やす」のも、市中で無制限に使うカネに困らないようにしようという政策であろう。

 このように日銀が通貨供給量を大幅に増加させた場合、インフレが発生、物価が高くなって、商店や最終的には企業の利益を上昇させる。

 だが、日銀がいくら通貨供給量を無制限に増加させたとしても、直接自分の懐に入ってくるわけではないカネは消費者にとって宝の持ち腐れでしかなく、消費者自身の給与が増えて、モノが買えるようにならなければ、需要は増えないことになり、個人消費が伸びなければ、企業の利益も上がらず、設備投資等の民間部門の資金需要の伸びも期待できないことになり、デフレはデフレのまま続いて、商店や企業は安く売って満足には利益が生じない経営状態が続く。

 商店や企業の利益が生じなければ、従業員の給料を上げることができず、モノを買うカネも出てこない、結果モノが売れない悪循環が続くことになる。

 ましてや2014年に消費税増税が待ち構えている。収入が増えない中で増税に備えて国民の多くが財布の紐を締めるリスク回避行動に出た場合、なおさらにモノが売れず、企業の設備投資のカネとしても使われないことになって、無制限な金融緩和策だと言って日銀に放出させたカネは使われないカネとして残りかねない。

 だから、このような事態を恐れて安倍晋三は12月9日のフジテレビの報道番組で、消費税増税を3党合意していながら、増税の態度を明確にしなかったのだろう。

 安倍晋三「来年4~6月の経済の動向を見ながら判断する。その数値が出るのは8月だから、それを受けて秋に判断する」(時事ドットコム

 同じ12月9日のNHK報道番組。

 安倍晋三「来年の4月から6月の経済指標を見ながら、来年の秋に消費税率を引き上げるかどうか判断する。自民・公明両党で政権をとって景気を回復させ、デフレから脱却して円高を是正し、消費税を上げていきたい」(NHK NEWS WEB

 消費税増税法附則第18条、いわゆる景気条項が、「消費税率の引上げに当たっての措置」として、「経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる」と結果ではなく、あくまでも目標としているのに対して、安倍発言は「景気指標」に現れる景気の結果で判断すると、いわば景気が実質的に良くならなければ上げないという趣旨の、景気条項にも3党合意にも矛盾した発言となっている。

 この矛盾は消費税増税前後に景気が悪化する前例に習ったものであろう。

 要するに安倍晋三の「無制限金融緩和」にしても絶対ではないということである。

 また、1090年代中盤の経済低迷期以降、日銀は基本的に金融緩和策を取り、さらに進んで1999年2月にゼロ金利政策を採用、当時としては積極的な金融緩和策の実施に踏み込んだものの、モノが売れず、民間部門の資金需要は伸びなかったとする説がWeb記事やインターネット上の主張からも数多く見受けることができる。

 このことも安倍晋三の「無制限金融緩和」が絶対ではないことを証明している。

 では、自信たっぷりに発言している公共投資にしても、果たして絶対なのか見てみる。

 建設国債を日銀に全額買わせて捻り出したカネは政策的に公共工事をつくり出せば、使うに困ることにならないだろうが、いつかは返済しなければならない赤字国債として残る。

 かつては公共工事で道路を造れば、それが政治家の地元利益誘導からの経済効果を無視した公共工事でなければ、そこに物流や街の活性化が生じて経済効果を継続的に生んでいったが、道路や橋といったインフラ(社会基盤)やインフラに応じた物流が成熟した日本社会では企業活動の活発化を前提としない新規の道路や橋の建設はかつてと同じようような経済効果を継続的に引き出すことはできないはずだ。

 いわば優先順位は公共事業よりも企業活動の活発化による景気回復が先だということになる。

 自民党は公共事業に10年間で200兆円を投資する「国土強靱化策」を主張、公明党は10年間で100兆円規模のインフラ整備策「防災・減災ニューディール」の推進を主張、共に東日本大震災や直近では笹子トンネルの天井崩落事故を教訓にした既設公共施設の事前防災事業を主張している。

 12月7日の愛媛県鬼北町街頭演説。

 安倍晋三「国が率先してお金を使い、公共投資をしていく。やるべき公共投資はたくさんある。(笹子トンネル事故に触れて)耐用年数を超えたトンネルや橋や道路、しっかりと補強していく」(YOMIURI ONLINE

 12月12日の広島市街頭演説。

 山口公明党代表「きのう東日本大震災の余震と見られる地震があり、南海トラフ付近で起きる巨大地震や首都直下地震も懸念されている。老朽化した橋やトンネルなどを改修し、災害に耐えられる強いものに替えていくべきだ。野田総理大臣は『公共事業はバラマキだ』と言うが、命を守る防災・減災対策をやらなくてもいいのか」(NHK NEWS WEB)――

 だが、既設の社会基盤に対する公共工事は経済効果が既に固定化していて、工事が終了すれば工事自体が生み出していた経済効果も工事と共に終わって継続性がなく、赤字国債がほぼ残ることになりかねない。

 笹子トンネルの天井板をカネをかけて全て撤去して通行の危険を取り去ったとしても、当初は珍しがって通行してみる者もいるだろうが、その撤去工事によって個人消費の継続的な増加や民間需要の伸びが期待できるわけではない。

 防災・減災公共事業では継続的に生み出すことができない経済効果を他の新規公共事業の経済効果か、景気回復よる税収の伸びで補ってプラスとすることができなければ、赤字は減らない。

 他の新規公共事業が企業活動の活発化を前提としなければ継続的な経済効果は望めないということなら、やはり優先順位は景気回復でなければならない。

 そのためには規制緩和や税制改革等を行なうことで企業活動を刺激する必要性を説く識者が数多くいる。

 このことも安倍「無制限金融緩和」が絶対ではないことの証明であろう。

 絶対ではない政治であるにも関わらず、自公に衆議院3分の2以上の議席を与えた場合、参院否決の法案も衆院3分2賛成で再可決・成立可能な「政治安全神話」を打ち立てて政治の全てを絶対とさせることになり、危険極まりないことになる。

 特に安倍晋三は国民よりも国家を優先させる国家主義者であることに注意しなければならない。安倍政治を絶対とさせないためには程々の議席で収まるよう、有権者は配慮すべきである。

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