日本維新の会の橋下徹代表代行は12月4日の衆院選挙公示後もインターネットを利用した選挙運動を認めていない公職選挙法の規定に反して、自身のツイッターで「日本未来の党」の原発政策を批判する選挙活動を行なっていた。
既に当ブログに一度利用したが、再度掲載。
橋下徹「僕はエネルギー供給体制を転換させたいと思っている。しかしそれをやるには具体的な計画を作って方針を宣言する。10年後に原発0!と叫ぶのは、10年後に火星に行くぞ!と叫ぶのと同じレベル。具体的な計画を作って、本当に可能となれば、それは立派。その時点で評価すべき。今は叫んでいるだけ」――
ところがたったの1日経過の12月5日になって、ツイッター上でツイッターを使った選挙活動の自粛宣言を出した。
《橋下氏「バカらしいが…」 ツイッター控える方針》(TOKYO Web/2012年12月5日 夕刊)
橋下徹「公選法での文書制限があり、ネットも文書に当たるとの総務省見解があるので、バカらしいがそれを踏まえる。嫌ならルールを変えればいいわけだから」
記事は公示後の自身のツイッター発言が選挙運動であることを自身も認めていた発言例も紹介している。
橋下徹「前回の衆院選では350億円が既存の政党の広告費宣伝費に使われた現実があるのに、僕のツイッターでの選挙運動が禁止とは日本はどうなっているんだ」(以上)――
橋下氏はネット上での選挙運動についてツイッターで次のように呟いている。
橋下徹「日本維新の会は、僕のこのせこいツイッターが唯一のツール。もちろん、ダイレクトに投票呼びかけ行為はしないけどね。公選法が文書の配布に制限をかけたのは、金のある者がバンバン文書を出して、金のあるなしで選挙が不公平にならないようにとの趣旨」
橋下徹「ところが官僚組織は面白い。こういう趣旨はそっちのけで、ネットが文書にあたるかどうかだけを吟味する。そしてネットは文書だから公選法の制限がかかると。やれやれ」
橋下徹「もともと金のあるなしで不公平にならないように、という法の趣旨なのに、法の趣旨はどうでも良くなっちゃう。ネットは文書かどうかだけに焦点を当てる。担当者になるとそうなるんだろうね。そしてネットは文書→金のない者の唯一のツールを奪う→政党交付金を莫大に受けている既存の政党だけが有利」
橋下徹「結局、ネットでの選挙運動を制限することによって、公選法のもともとの趣旨である、金のあるなしで選挙運動が不公平にならないようにということが完全に反故にされる。面白いでしょ?これが官僚制度の特徴の一つ。担当者がルールをその領域で完璧に守ろうとするから、結局法の趣旨を害することになる」
私自身は公示後のネット利用の選挙運動には賛成である。賛成の立場であることからも、橋下徹が資金力不足の日本維新の会の選挙運動――政策の訴えや、他党の政策を批判しているのだから、対立政党の政策批判をも含めてだろう、それら選挙に関わる諸々の活動は「僕のこのせこいツイッターが唯一のツール」だと、そこに信頼性を置いていることからも、公職選挙法違反に当たるのを承知の確信犯として、最悪の場合、逮捕覚悟でツイッター上で徒手空拳の選挙活動をし、投票日前日まで強行して、旧態依然の選挙慣習を自ら打ち破ろうとしていたのだと思っていた。
こういった個人的な過激性こそが、若者受けの理由の一つであるはずだ。
ところが16日の投票日前日どころか、公示日1日経っただけで断念してしまった。公職選挙法に逆らう形で「僕のこのせこいツイッターが唯一のツール」だと断言したのは何のためだったのだろうか。
もし投票日まで続けて投票日以後に逮捕されたなら、あるいは悪質だとして投票日まで待たずに逮捕されたとしても、ネット上で大きな反響を呼び、ネットの選挙活動に風穴を開けたはずだが、確信犯でも何でもなかったから、そこまでは想定していたはずはなく、確信犯だと期待した者は尻切れトンボもいいとこではないかの印象を受けたに違いない。
但しツイッターを続けてはいるが、選挙活動ではなく、選挙に於けるネット利用の是非とか政策は政治家が方向性を決めて、官僚が制度設計し、工程表を決める役割分担となっているとする、これまでの主張の繰返しを呟いているに過ぎない。
敢えて続けることによって名誉の確信犯となることができる、対立政党の政策を批判する過激な呟きはすっかりと影を潜めている。
橋下徹が最初は周囲に期待を持たせる新奇な発言を行なって尻切れトンボになることはこれが初めてではない。
近いところでは大飯原発再稼働を最初は反対していたが、反対姿勢を長続きさせることができずに1カ月半かそこらで再稼働容認に変節する尻切れトンボを見せている。
古くは、これもブログで何度か取り上げているが、2009年11月30日に普天間飛行場の移設先として関西国際空港への受入れを検討することを表明していながら、1週間程で「(防衛政策は)国の権限。僕が動くことではない」とトンボの尻尾切りで終わらせている。
ところがである、翌年2010年5月27日の全国知事会議で同じ問題を再度持ち出している。
橋下徹大阪府知事「沖縄県などの犠牲の上に、大阪府民は安全をタダ乗りしている。普天間問題がクローズアップされ、チャンスだ。小学校の子どもですら、この問題を考えるようになった。ただ、自治体が動いても、米国からダメだと言われると動けない。2006年の米軍再編のロードマップを履行し、政府が第2段階の基地負担軽減というときに話を振ってもらえれば、できる限りのことはする。必要があれば、沖縄のみなさんにお願いをしに行き、大阪府民として申し訳ございませんと言いたい」(asahi.com)――
今度は沖縄米軍の訓練を関空で引き受けてもいいという発言である。「小学校の子どもですら、この問題を考えるようになった」と子どもまで持ち出して、責任分担の必要性を主張している。
そして半年後の11月30日の記者会見。
橋下府知事「政治状況は日々刻々と変わっている。残念ながら関空が基地負担軽減の受け皿になることはない」(MSN産経)
この前日に仲井真沖縄県知事が橋下徹当時大阪府知事に期待していたにも関わらず、見事期待を裏切った。
仲井真知事「本土の方が(沖縄より)空間が広いのでむしろ可能性がある。橋下(徹・大阪府)知事が『関空はどうか』と言っているので一度見てきたい」YOMIURI ONLINE)
期待の尻切れトンボである。
橋下徹の「残念ながら関空が基地負担軽減の受け皿になることはない」は仲井真沖縄県知事が「一度見てきたい」と言ったことに対する「見に来なくてもいいよ」の回答だったのかもしれない。
こう見てくると、多弁・多言を操って人をなる程と思わせるのは言葉の名人だが、実際には言葉が軽くできていることが分かる。言葉が軽いから、長続きしない尻切れトンボを演ずることになる。