安倍晋三の竹島政府主催祝典と尖閣公務員常駐は総選挙票集めのパフォーマンス

2012-12-23 10:55:12 | Weblog



 安倍晋三は竹島と尖閣の各問題で政権獲得の場合の公約を2012年総選挙用の『J-ファイル2012 自民党総合政策集』に次のように記している。 

 竹島

3. 領土・主権

129 領土・主権問題を担当する政府組織の設置

 民主党政権発足後、わが国の領土・主権問題に関わる周辺国の挑発行動が相次いでいます。この流れに歯止めをかけるべく領土政策の立て直しが急務です。そのため、国家として取り組みを強化するために、内閣府設置法を改正し「領土・主権問題対策本部(仮称)」を政府に設置します。不法占拠の続く北方領土と竹島の問題については、交渉を再活性化してわが国の強い意志を示します。

328 「 建国記念の日」、「主権回復の日」、 「竹島の日」を祝う式典の開催

 政府主催で、2 月11 日の建国記念の日、そして2 月22日を「竹島の日」、4 月28 日を「主権回復の日」として祝う式典を開催します。 

 

 尖閣

3. 領土・主権

132  尖閣諸島の実効支配強化と安定的な維持管理

 わが国の領土でありながら無人島政策を続ける尖閣諸島について政策を見直し、実効支配を強化します。島を守るための公務員の常駐や周辺漁業環境の整備や支援策を検討し、島及び海域の安定的な維持管理に努めます。

 要するに政権を獲得した場合は毎年2月22日に政府主催による「竹島の日」祝典を開催し、尖閣諸島には公務員の常駐を敢行、日本固有の領土としての強い領有意志を示すと1億2665万の国民に公約した。

 尤も国民の中には安倍公約に反対する者もいるだろうが、兎に角1億2665万の国民に向かって公約したことになる。

 また竹島に関しては北方領土と共に「交渉を再活性化してわが国の強い意志を示」す自国領土意思表示と政府主催「竹島の日」祝典開催の自国領土意思表示が対立事象とはならないことと認識していたことになる。

 いわば政府主催「竹島の日」祝典開催を強行しても、「交渉を再活性化してわが国の強い意志を示」すことのできる交渉のテーブル着席が対立することなく可能だと考えていた。

 このことは中国と尖閣で交渉することはないにしても、尖閣諸島公務員常駐を敢行しても、他の交渉や関係に関しての障害とはならないと見ていたことになる。

 ということは政府主催「竹島の日」祝典開催の自国領土意思表示は韓国の反対や抗議の無視を、尖閣諸島公務員常駐の自国領土意思表示は中国の反対や抗議の無視を予定行動と想定した上で祝典開催や公務員常駐といった自国領土意思表示を強硬に進めることを以って対韓・対中外交政策とし、これらのことが新たな障害を出来させる原因とはならないとしていた。

 韓国や中国の反対、もしくは抗議を当然の想定行為として、それを無視する覚悟でいた上に日本にとってどのような不都合な問題も生じないと洞察していなければ、上記公約は成り立たない。

 そして12月16日投票の2012年衆議院選挙で自民党が単独過半数を得て政権の座に就くことが決まったことは公約のストレートな履行の責任を負ったことを意味する。

 ストレートな履行でなければ、公約したことの意味を失う。

 ところが12月19日投票日の韓国大統領選で初の女性大統領朴槿恵(パククネ)女史当選の翌日の12月20日のことである。

 石破茂自民党自民党幹事長(「竹島の日」政府主催祝典公約に関して)「政権を担っている間に実現に向けた雰囲気を醸成していくのが先決だ」(東京都内で記者団に発言)

 要するに衆院4年間は雰囲気作りに専念すると言っている。開催できるような雰囲気を作ることと祝典開催とは中身を違えたことになる。雰囲気作りでは領有の直接的で強固な意志表示とはならない。

 さらに韓国の反対や抗議の無視を予定していたはずの当初の態度から、反対や抗議を考慮する態度への後退を物語ることになる。

 石破発言は安倍公約の色の塗替えに当たるのだから、個人プレーではなく、安倍晋三との連携プレーであろう。安倍自身の口から直接発言した場合の批判にワンクッション置いて和らげるために幹事長の石破が代理で公約違反の批判をなるべく避けて公約変更で済ますべく尤もらしい口実をつくり上げたといったところなのだろう。

 上記記事は山口公明党代表の同12月20日記者会見発言も伝えている。

 山口代表「慎重に考えた方がいい。今後の日韓関係の改善を妨げる要因となることは政府として避けるべきだ」

 既に触れたように「今後の日韓関係の改善を妨げる要因となる」ことは前以て想定し、それを無視する覚悟で公約としたはずだ。いわば関係改善よりも竹島を日本固有の領土であるとする自国領土意思表示の優先を公約としていた。

 だが、12月16日の政権復帰決定から竹島に関しては4日後の12月20日、尖閣に関しては6日後の12月22日の舌の根も乾かないうちに自国領土意思表示よりも関係改善を優先させる逆転現象を来した。

 1億2665万の国民に向けた公約である。口先では強いことを言って、実行が伴わないで片付ける訳にはいかない。

 2012年8月10日に李明博韓国大統領が竹島に上陸、多くの日本国民の反発を買った。

 さらに4日後の8月14日の天皇謝罪発言が日本国民の感情を反発を超えて憤慨へと高めた。

 李明博韓国大統領「独立運動で亡くなった方たちに、心から謝罪するのであれば訪問するように(日本側に)伝えた。

 (日本による韓国植民地支配は)加害者(日本)は忘れられるが被害者(韓国)は忘れられない。痛惜の念という言葉を言いに来るのであれば(天皇陛下は)来る必要はない」(MSN産経)――

 8月14日は日本の植民地支配からの解放を祝う「光復節」の前日だそうだ。

 日本人の反発は世論調査に表れている。

 《本社世論調査:対韓感情「悪化」50%…竹島上陸で》(毎日jp/2012年08月12日 22時45分)

 「韓国大統領の竹島上陸を受けて韓国に対する感じ方はどうなったか」

 「悪くなった」――50%
 「変わらない」――44%

 年代別

 20歳代
 「悪くなった」――25%
 「変わらない」――72%

 50歳代
 「悪くなった」――53%

 70歳代以上
 「悪くなった」――60%

 全体で見ると差は大してないが、年代が上がるにつれて感情悪化を伝えている。これは年令と共に保守的傾向を持つのに比例した現象であろう。

 NHKが8月10日~12日に行った世論調査では差はさらに広がっている。

 「韓国のイ・ミョンバク大統領が、日本政府が中止を求めるなか、島根県の竹島に上陸したことが日韓関係に与える影響を懸念しているかどうか」

▽「大いに懸念している」――44%
▽「ある程度懸念している」――31%
▽「あまり懸念していない」――14%
▽「まったく懸念していない」――5%

 では、《外交に関する世論調査》(内閣府/2012年11月21日)から日本人国民の対中感情・対韓感情を見てみる。

 「中国に対する親近感」

 「親しみを感じる」――18.0%(2011年10月前回調査26.3%)
 「親しみを感じない」――80.6%(2011年10月前回調査71.4%)

※「親しみを感じる」とする者の割合は20歳代で高く、「親しみを感じない」とする者の割合は70歳以上で高い。

 「韓国に対する親近感}
 
 「親しみを感じる」――39.2%(2011年10月前回調査62.2%)
 「親しみを感じない」――59.0%(2011年10月前回調査35.3%)

※「親しみを感じる」とする者の割合は20歳代、30歳代、50歳代で、「親しみを感じない」とする者の割合は70歳以上でそれぞれ高くなっている。

 当然のことではあるが、対中感情、対韓感情、共に悪化している。と同時にこの調査でも悪化感情は年齢が高くなるにつれて強まる保守的傾向に応じた反応となっている。

 断るまでもないが、政治が、特に外交政策で中国と韓国に対して融和策を取った場合、あるいは優柔不断策を示した場合、若年層の有権者から高年齢の有権者に向かって順次より多くの反発を買うことになり、年代に応じて票を失うことになりかねない。

 特に選挙となると、どの年代層からも一票でも多く獲得しなければならないから、どのような政策でも票を失わない手立てを講じなければならない上に、安倍晋三はより年代の上の有権者層と保守主義という点でより濃密に呼応し合う関係にあるから、何よりも年代層の高い有権者の票を取りこぼしの対象とするわけにはいかないはずだ。

 選挙に関わるこのような面での望ましくない事態を防ぐには尖閣諸島と竹島に関しては中国・韓国に対する日本人の国民感情に添う政策の打ち出しが最も効果的は方法となる。

 いわば竹島政府主催祝典と尖閣公務員常駐は総選挙票集めのパフォーマンスだったのではないのかということである。

 もしそうでなければ、新たな障害の出来を前提とせずに自国領土意思表示を公約とすることはできなかったろう。

 だが、前提とせずに公約とした。ここに無理が存在することになるが、パフォーマンスであるなら、国民に対してはある程度の不都合は生じても、対中・対韓関係に関しては何の不都合も生じないことになる。

 国民に対する不都合は様々な口実を設けて言葉巧みに誤魔化すということなのだろう。石破の「政権を担っている間に実現に向けた雰囲気醸成」といった言葉がこれに当たる。

 大体がどの政党が政権を担当しようともスケジュールに前以て優先事項として書き留めて置かなければならない対中・対韓関係改善であり、それを後出しすることはなかったろう。

 安倍晋三にとっては選挙に勝ち、政権復帰を果たすことによって前回果たすことのできなかった自らの政治の全てが始まる。選挙に負けたなら、何も始まらない。

 勝つために手段を選ばなかったことが対中・対韓に対する強硬な外交姿勢――尖閣公務員常駐・政府主催「竹島の日」祝典開催のパフォーマンスということだったはずだ。

 選挙が勝利で終われば必要なくなる。公約を公約として維持していたなら、却って外交の障害となる。

 もし選挙に負けて野党のままなら、国民の歓心を買うために政府に対して強硬姿勢を求める。

 選挙で権謀術数を用いながらも、対中関係改善・対韓関係改善の功名心に走っているようだが、決して正々堂々とした態度とは言えない。

 このようなゴマ化しこそが足をつまずかせる障害とならない保証はない。

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