――野田首相の中国反日デモ拡大、「想定は超えている」の矛盾と視点欠如の鈍感さ――
9月19日(2012年)夜のテレビ朝日番組発言だそうだ。
《首相 尖閣対応で特使派遣も検討》(NHK NEWS WEB/2012年9月20日 0時3分)
野田首相「もともと沖縄県の尖閣諸島を巡る領有権の問題は存在しないが、長期的に平穏かつ安定的に島を維持管理するために国有化するということを、再三、いろいろなルートを通じて中国側に説明してきた。ただ残念ながら十分理解されていなかったと思う。一定の摩擦は起こるだろうとは考えていたが、想定を越えている。
外交ルートでは局長級でやっており、外務副大臣も中国に行って説明した。外交ルート以外にも、さまざまなチャンネルを通じて政財界を含めて、コミュニケーションをちゃんと図っていきたいと思う。特使をどうするかも含めて検討したい」――
「領有権の問題は存在しない」が政府の態度であるなら、対外的にはどのような説明も必要とせず、日本政府の一存で決めることができる国有化のはずだが、「長期的に平穏かつ安定的に島を維持管理するために国有化するということを、再三、いろいろなルートを通じて中国側に説明してきた」こと自体が既に矛盾している。
「領有権の問題」を前提として取り得る対中国説明でなければならないはずだ。
中国が領有権を主張している以上、中国に尖閣諸島は日本固有の領土だと認めさせて初めて、「領有権の問題は存在しない」とすることができる。
だが、認めさせるべく、真正面から中国と向き合わない。
要するに「領有権の問題は存在しない」と主張することで、真正面から中国と向き合う面倒を避けている。
真正面から向き合ったなら、「領有権の問題は存在しない」の主張は崩れ去ってしまう。
この面倒回避意識が「領有権の問題は存在しない」と言いながら、中国に説明するという矛盾をつくり出している。
このような野田首相の事勿れな面倒回避姿勢と違って、「国民の生活が第一」小沢一郎代表は9月18日の記者会見で、この領土問題について次のように発言している。
小沢一郎「国民の生活が第一」代表「合意形成が難しいことは事実だが、日中両国が客観的に歴史的事実を検証して解決すべきだ」(47NEWS)
真正面から向き合うことを進めている小沢代表の方が判断能力に於いて遥かに合理性を備えている。
野田首相は中国に於ける反日デモの規模について、「一定の摩擦は起こるだろうとは考えていたが、想定を越えている」と言っているが、この視点欠如の鈍感さは如何ともし難い。
中国は尖閣諸島は中国固有の領土だと主張しているのである。中国側からしたら、中国固有の領土である尖閣諸島を、「長期的に平穏かつ安定的に島を維持管理するため」であろうと何であろうと、日本が国有化したとする視点に立つことは当然の反応であり、想定内としなければならなかったはずだ。
当然、中国領土の日本国有化は、日本から見た場合は理屈上であっても、中国側から見た場合、あくまでも日本の行動は主権侵害、あるいは領土侵略に相当する。
中国がそれ相応の対抗策を採ることは想定内としなければならない判断であろう。
だが、野田首相は判断力欠如から想定内とすることができなかった。想定外としたのは日本側の視点のみに立ち、中国側の視点を鈍感にも欠如させていたからだろう。
但し、「尖閣諸島は日本固有の領土である」、「尖閣諸島を巡る領有権の問題は存在しない」で政府の態度を厳格に首尾一貫させているなら、日本政府の一存で全て決まることであって、中国側の視点を欠如させた国有化であったとしても何ら問題はない。
中国が反発して、どのような規模の反日デモを展開しようとも、日本に対して如何なる経済制裁を課そうとも、想定外・想定内を問題とせずに、それぞれの規模に応じてそれぞれの被害を最小限に食い止める危機管理を以てして対処していくべき問題となるはずだ。
だが、日本政府の一存で決めるのではなく、中国に対して国有化の説明を「外交ルートでは局長級」で行い、「外務副大臣も中国に行って説明」では、国有化決定に尖閣諸島は中国固有の領土であると主張している中国の判断を求めていることになって、「尖閣諸島は日本固有の領土である」、「尖閣諸島を巡る領有権の問題は存在しない」の政府の態度を厳格に首尾一貫させていない矛盾を犯していることになる。
要するに口では「尖閣諸島は日本固有の領土である」、「尖閣諸島を巡る領有権の問題は存在しない」と毅然としたことを言いながら、中国側の視点からしたら中国領土の日本国有化である以上、反発は必至であって、そのことを想定内とする認識も持てずに願いどおりにいくはずもない中国の納得を得て平穏無事に事を進めようとする、毅然とは正反対の臆した態度が中国の反日デモや経済制裁等を含めて、決着のつかない平行線をつくり出すことになっているはずだ。
先ずは領有権問題の存在を認めて、「国民の生活が第一」の小沢代表が言っているように「日中両国が客観的に歴史的事実を検証して解決すべきだ」とする真正面から向き合う問題解決の時期がきていることを野田首相は、いくら認識能力を欠いていたとしても、悟るべきだろう。