政府が尖閣諸島を国有化に向けて地権者と約20億5千万円の購入で合意したと9月5日、マスコミが伝えている。
東京都が尖閣諸島の土地資産価値調査の上陸許可申請書を政府に提出したのは8月17日。
石原都知事は政府の不許可を見通してのことなのだろう、8月24日の記者会見で次のように発言している。
石原都知事「10月にも再調査を実施します。私も行きます。逮捕されるなら、それで結構ですけど」(YOMIURI ONLINE)
不許可でも逮捕を覚悟で強行上陸し、調査を決行するとしている。
この3日後の8月27日午後、政府は上陸不許可の回答を東京都に回答。
東京都は政府の上陸不許可をものとせず、調査続行の意志表示のためだと思うが、取り敢えず海上からの調査を9月2日に決行。チャーターした約2500トンの民間海難救助船を母船として、小型船やゴムボートで沿岸まで接近、海水の採取や水深の測定を行ったという。
東京都が上陸申請理由の主たる一つとした土地資産価値算定の実地調査は上陸を欠かすことはできない。
だが、政府が東京都に対して上陸不許可を回答した8月27日から9日後の9月5日に政府が地権者と20億5千万円の土地購入で合意したとマスコミが伝えた。
この間、政府が尖閣諸島に上陸して、土地資産価値算定の実地調査を行ったという情報はマスコミのどの社も伝えていない。
この20億5千万円の土地購入金額の算定は何を根拠に計算されたものだろうか。
当然、根拠の正当性を地権者と購入契約前に国民に対して説明責任を負うはずだ。
この20億5千万円の算定に関する憶測記事がある。《【尖閣国有化】地権者の負債が売却の原因か》(MSN産経/2012.9.6 01:29)
石原都知事(はこれまでの定例会見の発言として)「地権者には親族が失敗したりして、借財もあるんでしょうが、どういう財政事情か知りませんが、石原さんになら売ってよいとおっしゃっていただいた」
〈関係者や登記簿によると、ある金融機関は地権者の不動産に極度額20億円以上の根抵当を設定。負債が売却の原因になった可能性もうかがえる。〉・・・・・
関係者「必要な金があり、議会を通すという都の手続きは待てないということか。政府は地権者が必要な金額を調べ、その額を提示したのだろう。20億円ではなく、20億5千万円という額が物語っている」――
もしこの情報が憶測ではなく、事実であり、政府の算定根拠が借金の肩代わりであったとしても、その方法を直ちに不明朗・不当だと断じることはできない。
20億5千万円で借金の肩代わりする形で尖閣諸島の土地を購入、国有化によって、その金額をものとしない日本国家及び日本国民に寄与する利益は何か、国益上のメリットを提示して、国民に納得を得るという条件付きで借金肩代わりの土地購入額算定の正当性を得ることができるはずだ。
当然、金額算定の経緯は勿論のこと、国益上のメリットを国民に説明し、納得を得る責任を負うことになる。
だが、国民に対して一切の説明がないままに進められ、金額が決められた。
このことこそが不明朗であり、不当だと言わざるを得ない。
政府は東京都の上陸許可申請を尖閣諸島の賃借目的とした、「島の平穏かつ安定的な維持管理」が損なわれる恐れがあるとして不許可にしたそうだが、それが中国を刺激しないための「平穏かつ安定的な維持管理」であるなら、政府が「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土である」と常日頃から言っていることと、あるいは「尖閣諸島に領土問題は存在しない」と言っていることと矛盾するお題目となる。
いわば東京都が尖閣諸島を所有すると中国との関係がこじれる恐れが出る、中国との関係を平穏無事に維持することが国有化の目的であり、中国との平穏無事な関係を以って国益上のメリットだとするなら、政治の無能・無策を20億5千万円で穴埋めするようなものだろう。
関係のこじれを生じさせないためだけの日本固有の領土など、意味をなさない。