日本郵政社長人事/麻生の説明責任は鳩山前総務相の言い分に答えるものであるべき

2009-06-14 01:03:45 | Weblog

 

 日本郵政の西川社長再任問題を巡って再任反対の鳩山総務相と再任支持の首相の意見が対立、鳩山邦夫総務相が一昨日12日、首相官邸で麻生首相に辞表を提出、辞任した。

 任命権者の首相が自らが任命した総務大臣に辞表を提出したなら面白い展開が見れたのだが、任命した者と任命された者の関係上、そうはいかず、常識的な辞任の流れで終わった。

 いずれにしても、任命された者が不適切発言とか不適切行動とかの不祥事を起こしたなら、辞任にとどまらず、説明責任が付随するが、主張が受け入れられないことからの辞任である以上、辞任させた任命権者側に自らの主張の正当性を明らかにする説明責任が生じたことになる。

 「NHK」インターネット記事《首相“鳩山氏は事実上更迭”》 (09年6月12日 19時11分)は辞任が題名どおりに「事実上更迭」だったことを伝えている。

 鳩山(午後2時過ぎの記者会見)「今、辞表を提出して参りました。と言うか、その場でサインしました」(NHK動画

 前以て辞表を用意して首相との話し合いの場に臨んだなら、サインはしてあっただろうから、首相の方から辞表を用意しておいて、そこにサインさせたと言うことだろう。

 いわば辞表提出の形を取った詰め腹――更迭だったと鳩山邦夫の言葉からも推測できる。

 麻生「民間の事業に対して、国が色々なことを介入したり、するということは、努めて避けるべきだと、私は基本的にはそう思って、おります。業務の改善等々、色々ありますけれども、そういった問題を法律と事実に基づいて、新しい大臣のもとに、その問題をどう解決していっていかれるか、その判断がきちんと出た上で、判断させていただきます」(同NHK動画

 「判断させていただきます」の「判断」とは、西川社長を“続投”の「判断」だと動画にテロップが入っていた。

 麻生の言っていることに例の如くにウソがある。

 先ず最初に「民間の事業に対して、国が色々なことを介入したり、するということは、努めて避けるべきだ」と言っている。日本郵政が5月の取締役会指名委員会で西川社長続投を既に決定していて、6月末の株主総会で総務相の認可を待つ段取りを踏んでいる以上、国のそこへの「介入」はないと言っているに等しい。

 つまり再任ありきなのである。再任を前提としていながら、総務省が日本郵政に対して出した業務改善命令の回答を「法律と事実に基づいて」精査した上で、続投か否かを最終決定すると、さも今後の展開が決定要因となるかのように言うのはウソの装いを凝らしているとしか言いようがない。

 その証拠が6月9日付「東京新聞」インターネット記事《スコープ 混乱深まる郵政『鳩の乱』 首相、勝算なく動けず》の中に示されている。

 「首相は西川氏を続投させる方向で、河村氏と与謝野馨財務相に調整を委ねている。河村氏らは、日本郵政が業務改善命令に対する報告書などで改革姿勢を示すことを条件に、鳩山氏に西川氏続投を容認させる構えだ」

 6月9日の時点で、首相から調整を任された河村官房長官が業務改善命令に対する日本郵政側の回答報告書で「改革姿勢を示すことを条件に、鳩山氏に西川氏続投を容認させる構え」を示していたのである。

 当然、麻生が言った「そういった問題を法律と事実に基づいて、新しい大臣のもとに」云々は取ってつけたウソの対応策に過ぎないことになる。

 6月13日の「YOMIURI ONLINE」記事《首相、当初は「西川交代」…竹中・小泉コンビが封じ込め》は 麻生首相は当初、日本郵政の西川社長を交代させる意向を持っていて、その意向を受けて鳩山総務相が動いたが、その動きを察知したのが竹中平蔵、親分の小泉元首相にご注進に及んで、その威光のもと、交代劇を封じ込めたと伝えているが、だとしても、人事の認可権限を握っているのは総務相なのだから、麻生太郎は自らの当初の交代意向を押し通してもいいはずだが、当初の意向に反して総務相辞任に持っていったのは小泉の党内への根回しに屈したと言うことなのだろう。

 なおさらのこと、「そういった問題を法律と事実に基づいて、新しい大臣のもとに」と云々するのは二重三重にも取ってつけた、答は既に見えている大ウソ八百と言うことになる。

 要するに鳩山総務相が問題としてきた「かんぽの宿」や社宅等79施設の総務省独自の不動産評定価格148億円を基にした売買評価額250億円に対して08年8月の日本郵政の鑑定額133億円。日本郵政が提出した79施設の固定資産税評価額857億円に対してオリックス不動産提示一括譲渡額109億円の余りにも開きがあり過ぎる叩き値を生じせしめた不透明な鑑定経緯、及び実体のない架空障害者団体が計画・実行し、厚労省職員や日本郵政職員までが手を貸し、大手通販や大手電気店、大手広告会社までが利用し、日本郵政から差額約49億円(そう、約49億円も不正に利益を上げていたのである。)を不正獲得したとして請求することとなった障害者団体向け割引郵便制度悪用の違法ダイレクトメール問題に関わる業務管理能力・人事管理能力を業務改善命令の回答で「改革姿勢を示すことを条件に」不問に付すということである。

 大体が回答報告書に「改革姿勢を示すこと」が「条件」となっているという業務改善命令とは何を意味するのだろうか。形式の自己目的化以外、何も意味しないだろう。

 勿論、鳩山総務相は不問に付さない姿勢を示していた。

 「代表的なのは『かんぽの宿』でございますけれども、ガバナンス全体のことを考えますと、立派な経済人であっても、日本郵政の社長としては、いかがなものかという思いを抱(いだ)いているということでございます」(NHK動画

 西川社長のガバナンス能力そのものに疑問符をつけ、業務改善命令の回答の内容を問題点としていない。 

 麻生も河村官房長官も、それ以外の西川社長続投支持の閣僚及び自民党議員、さらに小泉元首相も竹中平蔵も、「業務改善命令に対する報告書などで改革姿勢を示すことを条件」は形式で、社長再任を既定路線として「かんぽの宿」の叩き売りに近い不適切な売買価格設定や障害者団体向け郵便割引制度悪用問題に現れた業務上の不透明性、管理無能力を不問に付すというわけである。

 この経緯はブログで機会あるごとに書いていることだが、不適切発言や不適切行動を起こした閣僚等の責任を“職務の遂行”、あるいは“職務能力”に代えて免罪とする自民党が自らの歴史・伝統・文化としてきた内閣組織及び党組織の維持・保身に符合する。

 いわば業務改善命令に対する日本郵政側の回答報告書に改革姿勢を見ることができたとして西川社長の再任を最終的に認めさせることを以って完成させる自民党が自らの歴史・伝統・文化としてきた組織的保身を国民は追認するのか、「総額で約 2400億円をかけたとされるかんぽの宿など79施設で、売却額は約109億円」(asahi.com)のナゾ、不透明性、あるいは障害者団体所管役人と日本郵政職員も関わって差額約49億円の不当利益を供与するまで野放しにしてきた障害者団体向け郵便割引制度の悪用に関わる西川社長の民間企業トップとしての業務上、人事上のガバナンス(=管理能力)の是非を問うことを国民を求めるのか、どちらかの選択が必要となる。

 もし前者の選択なら、麻生のウソを並べ立てた保身術に任せておけばいい。後者なら、鳩山前総務相の西川社長再任拒否の言い分に対して自らを正しいとすることのできる説明を果たすことを麻生に求めなければならない。

 最後に与謝野財務相がマイクを手に握って言っていたことを取り上げてみる。

 与謝野「なかなか面白い話がないんで、大きく取り上げられておりますけれども、政府としては小さな問題ですから、ご心配なく」(NHK動画

 確かに「政府としては小さな問題」に違いない。不始末・失態を矮小化もしくは隠蔽して責任回避を専らとしている自民党政府代々の責任のルールからしたら、「小さな問題」とするのはごく自然な把え方である。

 だが、国民の側から見たら、果して「小さな問題」で済ますことができるだろうか。与野党問わない相当数の国会議員や大方のマスコミが首相のリーダーシップや内閣管理能力を問題にしたということは同じ目線に立つ国民も相当数いたことを示す。それを「小さな問題ですから」と言う。

 「かんぽの宿」等の叩き値でのオリックス不動産一括販売計画や障害者団体向け郵便割引制度の悪用への加担を批判したのは鳩山総務相やマスコミだけではなく、与野党議員も加わっていたし、勿論国民も多くが加わっていた批判だったのである。

 そういったことまで考えを及ぼすことができずに、「政府としては小さな問題ですから」と平気で言う。客観的・合理的な認識能力を持ち合わせていないから、そう言えるのだろうが、そういった単細胞人間が財務省と金融相と経済財政担当相の重要な三役を務めている。

 この倒錯的事実を解くとしたら、官僚に手を取って貰って各政策をこなしているとしか答えはないのではないだろうか。だから民主党から、官僚内閣制だと言われる。

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