麻生のリーダーシップのなさ・優柔不断を炙り出す麻生VS鳩山総務相バトル、今が見どころ

2009-06-10 13:58:24 | Weblog


 民営化した日本郵政の保養・宿泊施設「かんぽの宿」と社宅の計21施設の総務省独自の不動産鑑定評価額148億円を基に推計した250億円の販売評価額、及び日本郵政が公表した08年固定資産税評価額約857億円に対するオリックス不動産への109億円の安過ぎる一括売却予定に鳩山総務相が疑義申し立てを行い、売却は白紙撤回。さらに障害者団体向け割引制度の悪用による郵便法違反事件を見逃した責任を問い、5月の日本郵政取締役会指名委員会が西川善文社長の再任を決定したものの、民営化されたとはいえ、政府が全株100%を保有、6月末の株主総会で与謝野財務相が株主としての権限を行使、その承認を経て総務相が認可して決まる運びに反して、「日本郵政が正しいガバナンス(企業統治)の元で運営されているとは思えない」(日経ネット)として再任を拒否、西川社長の更迭を強硬に求めている問題――

 鳩山邦夫「財務相と総務相の判断基準は違う。判断は同じである方が望ましいが、一体のものではない。・・・・国が出資した財産が毀損されていないことを判断するのが財務相。私は郵政民営化が国民の信頼に応える形で進められているかどうか全体を見なければいけない」(毎日jp

 「首相からこういう方向で頼むとか、しなさいという指示は、まだ、そういう形ではいただいていない。首相と私の判断が食い違うことはないでしょう」(日テレNEWS24

 政府の大勢意見と異なるのだから、自民党内での鳩山総務相の強硬な態度に対する批判の声にしても大勢を占めることになるが、鳩山応援団がいないでもない。このことも問題を纏まる方向に収束させないでこじれさせている。

 太田前農林水産大臣「日本郵政の社長人事は所管大臣が決定することが会社のガバナンス上、正しい方法であり、鳩山大臣の選択に委ねるべきだ」(NHK

 だが、圧倒的に批判が多い。

 石原幹事長代理「この問題は、財務大臣、総務大臣、官房長官が期限までに適切に判断すると思う。西川社長は完ぺきだとは思わないが頑張っており、日本郵政の委員会も続投を支持している。いくら認可権があるとはいえ、一大臣が個人的な感覚で話すのは好ましくない」(同NHK

 中川泰宏衆議院議員「西川社長はきちんと計画どおり事業を進めている。西川氏を内閣が代えるなら、あす衆議院を解散し、国民の民意を問うべきだ。そうでなければ、鳩山大臣に辞めてもらう。どちらかを麻生総理大臣は決断すべきだ」(同NHK

 加藤紘一元幹事長「(鳩山氏も西川氏も)どっちもどっち。わたしたちの選挙に影響する。怒りをもってみている」(時事ドットコム

 河村建夫官房長官「麻生太郎首相は関係閣僚に調整を指示した。財務相を排除して物事が進むものでもない」(msn産経

 大島理森国対委員長「おれが正義で向こうは違うという言動は政治家として慎むべきだ」(同msn産経

 だが、いくら批判のボルテージを上げて、その声が圧倒的多数を占めようとも、鳩山総務相が頑として引き下がらなければ、柳に風、馬耳東風、暖簾に腕押し、カエルの面にショウベン、糠に釘で、再任拒否の膠着状態を打ち破ることはできない。

 そこで「麻生総理大臣の対応はぶれており、リーダーシップが欠如している」との野党からの批判もあり、自民党内から麻生総麻生太郎のどちらかに決着づける決断・リーダーシップを求める声が起こるのは自然の成り行きと言えば自然の成り行きと言えるが、我が辞書にリーダーシップなる文字は存在しないという人間にリーダーシップの発揮を期待すること自体が矛盾行為だと気づかない点を考慮すると、自然の成り行きとは言えなくなる。

 6月8日のぶら下がり記者会見で次のように答えている。

 〈Q:次です。公明党の太田代表がですね、政府与党(連絡会議)後に記者団に、日本郵政の西川社長の進退問題について、政府の中で十分話し合って決めてほしいというふうに苦言を呈されたんですが。あと、北側幹事長も、政府与党の中で、政府として決着を急いでもらいたいと述べられているんですが、こうした連立パートナーからの要望にはどうお答えになるんでしょうか。

A:これは基本的には、なんていうの、許認可権、仮にも民間会社ですから、許認可権は総務大臣。株主としての権限は財務大臣。で、これ確か人事は長官になってますんで、官房長官とこの3者で調整をしてもらわなくちゃいかんということに最終的になるんですが、今、時期的にいろいろな話がわんわん飛び交ってますんで、なんとなくそれが、なんだろうねえ、うーん、内閣の支持率になってみたり、政府の評判になってみたり、党の評判になってみたりするようなところはいかがなものかというご意見っていうのは、よく聞かれるのになってんだと思いますが、あの、このところは最終的に、今、調整をしなくちゃいかんところだとは思ってますけれども、ちょっといつやるかというのが、今がいいのか29日の株主総会の日がいいのか、いろいろ意見の分かれるところであろうと思ってますんで、そのうえ、よくよく聞いたうえで、最終的に判断せないかんでしょうね。《「首相VS記者団」 温暖化防止「交渉次第でどう変わるか分かりませんから」 6月8日午後7時5分~》毎日jp)/2009年6月8日)〉――

 「最終的に判断せないかんでしょうね」とは、何とまあ熱意の籠もっていない他人事な言い草か。各閣僚が持つ人事や許認可権に関わるそれぞれの権限と問題が引き起こしている状況等の表面的な説明で終わっていて、党内の解決が長引いているという印象を早く解消して欲しい、早いとこ決着をつけて欲しい、そのためにリーダ-シップを発揮してほしいという要請には何ら答を示していないところはさすがリーダーシップゼロの麻生太郎である。

 9日午後の参院総務委員会での鳩山総務相と西川社長の態度。

 鳩山邦夫総務相「法律では総務相独自の判断で(認可の可否判断を)やれとされている。私の考え、信念に基づいて権限を行使していきたい」(上記日経ネット

 西川社長「私自身至らぬ点もあるが、いったん引き受けた以上、民営化の土台をしっかり築くことが私の責務であり、果たすべき責任だ」(同日経ネット

 但し総務相が同社長の取締役再任を認めない場合は、

 「法律の決めたことだから法に従うまでだ」(時事ドットコム

 各武装勢力が乱立して銃撃戦を繰り広げる無政府状態さながらに麻生首相のリーダーシップ無政府状態をいいことに両者とも自らの主張を押し通して、妥協の気配すら見せない。

 鳩山「正しいことは正しい、正しくないことは正しくないと申し上げている。落としどころはあるわけない」(毎日jp

 鳩山「わたしは、落としどころということばは好きではない」(NHK

 要するに鳩山総務相は最後の最後まで西川再任は認めない、どんな妥協案も受け付けない。西川社長は総務相が再任拒否の職務権限を行使するまで社長を決して辞任しないという態度である。この状況を早期に打開するには麻生首相の決断・リーダーシップしかないのだが、「最終的に判断せないかんでしょうね」の“早期”が期待できない優柔不断状況にある。

 鳩山総務相は5日夜に麻生太郎首相と社長人事を話し合い、「首相と私の判断が食い違うことはない。今までの経緯からそう感じている」(毎日jp)と述べたということだが、話し合ったのが事実なら、首相との判断の一致を「今までの経緯からそう感じている」と推測で決めるのはおかしい。

 この答は6月9日の「日テレNEWS24」記事が出している。

 〈鳩山総務相は、5日に麻生首相と協議した際、西川社長の続投を認めない考えを伝えたものの、麻生首相からの指示はなかったことを明らかにした。〉――

 我が辞書にリーダーシップなる文字は存在しない人間らしく、自らの判断を述べて、それに従わせるべく説得する内閣を率いる者としての責任の片鱗すら示さなかった。

 だから、「今までの経緯からそう感じている」と意見の一致を推測するしかなかった。

 我が辞書にリーダーシップなる文字は存在しない優柔不断な人間は必然の勢いとして、他力本願を性格とする。鳩山首相が以心伝心で大勢意見を汲んで妥協してくれることを望んでいたが、妥協しそうにもない。そこで、〈首相周辺では「首相は西川氏の自発的辞任を望んでいる」との見方も出ている。〉(asahi.com 2009年6月3日21時14分)といった他力本願頼みの状況が生じる。

 いわば自分で決めかねるから、相手がこちらの苦衷を察して問題解決となる動きをしてくれることを願う。

 だが、いくら麻生がリーダーシップ欠如の反対給付として他力本願の性格を強く持っていたとしても、あるいはかんぽの宿売却の不適切価格設定と障害者団体向け割引制度悪用の郵便法違反事件の責任追及を目的に、「私自身至らぬ点もあるが、いったん引き受けた以上、民営化の土台をしっかり築くことが私の責務であり、果たすべき責任だ」としている西川社長に自発的辞任を期待することも、あるいは職務権限で辞任させることもできないことに二人とも気づいていない。

 自殺した松岡元農水相が事務所費架空計上問題でその責任を追及された当時、任命権者である安倍首相は「政策分野について、相当の見識がある。今後とも職責を果たすことで、国民の信頼を得る努力をしてもらいたい」と、職責(=職務上の責任)を果たすことを以ってして事務所費架空計上問題に関わる責任の免罪を図っている。

 政府税制調査会の本間正明会長が東京・原宿の国家公務員官舎に妻ではない女性と不法入居していた問題でも、安倍晋三は「見識を生かして、あるべき税制の姿を作っていく、議論していくことによってですね、まとめていただくことによって職責を果たしていただき、責任を果たしてもらいたいと思っています」と、職責(=職務上の責任)を果たすことを以ってして女性不倫問題と不正入居問題の責任を不問に付そうとした。

 麻生首相にしても、今年2月の「7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)」後記者会見で泥酔した醜態を世界に動画発信させしめた我が日本の誇る中川昭一財務大臣の責任を自発的辞任、あるいは更迭を以って応えるのではなく、「財務・金融にも明るく、金融に明るい、という意味で、私は適任であると考えを、考えて、任命をさせていただきました」、「本人の健康管理に関してはあるかもしれないが、任命責任については極めてこれまで確実にいろいろ仕事をやってもらったと思って感謝している」、「体調をしっかり管理して職務に専念してほしい」と「職務の遂行」を以ってして責任に代えている。

 かくかように自民党内閣は閣僚及び党役員、あるいは所属国会議員の不祥事、不正行為等の責任を「職務の遂行」を以って代えることを歴史とし、伝統・文化としてきているのである。

 西川社長の「・・・民営化の土台をしっかり築くことが私の責務であり、果たすべき責任だ」にしても、「職務の遂行」を他の責任に優先する責任解決方法だとする自民党の歴史・伝統・文化に合致した責任論であって、その点に於いてどこにも不都合はない。

 もし麻生相にしても鳩山総務相にしても、自民党内閣が歴史・伝統・文化としている責任制度から西川社長だけを除外した場合、二重基準を犯すことになる。自己都合のためにはそんなこと問題にしないか。

 いずれにしても、ますますリーダーシップのなさを曝け出すことになる麻生首相と、政権党の敗北が囁かれている総選挙という微妙な時期に来て麻生首相のリーダーシップの欠如を補おうともしない、麻生応援団長であるはずの鳩山総務相とのこのバトル、今が見所なのは間違いない

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