僕の家内は招き猫が好き

個人的なエッセイ?

「ウイズ・アウト・ユー」 星降る街

2021年06月01日 | Wish
五月のある夜。

夕食を終えて食後のお茶を飲んでいた時のことです。
家内の携帯に一本の電話がかかりました。

人付き合いの悪い私と違って、
社交的な家内にはいつも電話がかかってきます。

うらやましい。
そう思うときがありますが、自業自得です。

性格だから仕方がありません。

誰だろう?

親しそうに、
それでいて気を使いながらの会話。

時折聞こえる家内の驚いた声。
なんだか重い内容みたい。

私は席を外しました。

しばらくして家内が私の部屋にやってきました。
その表情には、悲し気な感情が浮かんでいました。

「〇〇さんの奥さんからの電話・・・。
〇〇さんが亡くなったって」

一瞬、私は何のことが理解できませんでした。

それでも・・・

もしかして九州の〇〇さんのこと?

「そうよ」

身体が動かない。
何も考えられない。

信じたくない。

いろいろな感情が湧き上がってきました。

彼は私が九州にいた時、とても仲良くしてくれた友だちです。
何事にも一生懸命頑張っていました。

器用でスポーツ万能。
私にとって、うらやましい存在でした。

子供が幼いころ、
お盆が終わると一緒に食事会をしていました。

ボーリングに行ったり、魚釣りをしたり。
子供たちにおもちゃも買ってくれました。

船の上から魚を釣りあげた時の歓声。
子供たちのあんな明るい顔を見たことがなかったよ。

親の僕より親らしい。
なぜだ・・・? 嫉妬してしまう。

了見が狭いい私は真剣に悩んだものです。

別れ際の子供たちのさみしそうな顔ときたら。
その光景を、今も忘れることができません。

そんな彼にも悩みがありました。
奥様と家内の会話から漏れ聞こえる言葉。

家族のこと。健康のこと。
そして将来のこと。

柔らかな笑顔の陰に隠されたもの。

僕には何もできなかった。
ごめんね。

お酒を飲むと、歌を歌ってくれたね。

ニルソンの「ウイズ・アウト・ユー」。
あなたなしでは生きていけない。

甘い歌声が今にも聞こえてくるようだ。

「これからも『星降る街』を送ってね。
私が主人の代わりに読むから」

その言葉に甘えて毎月「星降る街」を送ります。
相変わらずバカやってるよ、と笑っておくれ。

小さかった子供たちもいつの間にか大きくなり、
社会人として頑張っています。

子供たちの胸の中にも、君の面影があることでしょう。

これからも僕は生きていく。
あなたの分まで生きていく。

今は亡き、たくさんの友だちの分まで生きていく。

あがいて、嘆いて。時には笑って歩いていきます。

たいした人生じゃないかもしれない。
それでも、もう少し頑張ってみるよ。

今までありがとう。
そしてまた会える日を楽しみに・・・。

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