A Moveable Feast

移動祝祭日。写真とムービーのたのしみ。

江戸前島東岸突端

2005年12月09日 | 江戸から東京へ
 家康入府以前の江戸は、日比谷の入り江と江戸湊を分かつようにして、半島状の江戸前島が突き出していたが、その西岸突端が、例の静岡新聞ビルで、何と丹下健三の設計であった。この建築家が江戸前島ということを理解していたのかどうか知らないが、仮に意識していなかったとしたら、それでも半島の突端の海風を切り分けて立つ塔のようなデザインになっているところがすごい。どこかから地の霊が湧き出していて、建築家はそれを汲み取っていたのではなかろうか。こういう偶然は、特異な才能を持ったアーティストにはしばしば見られる現象である。
 一方、江戸前島東岸突端は、三井ガーデンホテルで、下階はRICOH本社である。こっちは地の霊を感じさせるデザインではない。
 姉歯建築士というのは、資本主義社会の中で、地の霊を感じ取る能力を枯渇させた職業人の典型である。建築家がその能力を失ったら、抜け殻となるのは当たり前。最近、社会の中核をなすべき職業人がさまざまな犯罪や失敗を繰り返しているのは、こういうところにも理由がある。
 彼のカツラは、地から切り離された建物、自然から切り離された職業人の象徴であろう。

 明日は大阪出張。

RICOH by GRD