A Moveable Feast

移動祝祭日。写真とムービーのたのしみ。

「希望」という名のカメラ

2006年12月31日 | 8×10を始めよう
 パリのサンジェルマン通りに、「出発」という名のカフェがあって、一杯のコーヒーで長居をしたことがあった。東京の王子に「希望」という名のカメラがあるのを知ったのは、10年以上前だ。むろんタチハラ製作所のフィールドカメラに付けられた名前がそれだが、およそカメラの名に相応しくない、そのHOPEというネーミングが好きだった。

 8×10スーパーワイドが昨日できあがったという連絡があり、もう年末のお休みに入ってらしゃるということだったが、どうぞ取りにいらっしゃいとのことなので、今日王子にピックアップに出かけてきた。注文からちょうど1ヶ月だ。立原さんは、ブラック・ダリアならぬ、ブラック・ローズの、少しエキセントリックな顔のカメラを、作業台の上に置いて、詳しく操作を説明してくれた。
 
 ワイド専用機なわけであるが、レンズの対応範囲が、当初の話より広がっていて、120mmから290mmとなっていたのも、ありがたかった。最初はまったくロゴも付いていない、まる裸のカメラだったので、お願いして、HOPEのラベルを貼ってもらった。

「立原さんは自分では撮らないんですか」と聞くと、「忙しいからねえ、今は撮らないねえ。プロが分らないことを聞きに来たりするんで、あれこれ、のうがきだけは云うんだけど。」

 立原さんも話好きでいろいろ世間話をしていると、奥さんが降りてきて、カメラを包装し、紙の手提げにまとめてくださった。帰りには、「奥さんへのおみやげ」と言って、サランラップを手提げにいれてくれるのだ。 ご夫婦ともに、下町らしい感じ。

 徒歩で王子駅まで行き、待ちきれないので、早速撮影しに行った。240mmのニッコールに、GITZOの3段の三脚である。タチハラSWは、3.5kgくらいだそうだが、その他を含めるとやはり、10kgを超えている。重い、重い。人気のない中央図書館(旧王子野戦病院)を撮影。ニッコールは、イメージサークルに余裕がないのだけれど、少しだけライズをしてみる。

大晦日の今晩は、王子稲荷に初詣でする狐の行列があるそうだ。


「風の柩」

2006年12月28日 | 越中八尾 おわら風の盆
 ブックオフは、探している本は、決して見つからないくせに、思いも寄らない本には出くわすことがあるという所だ。だから年1.2回郵送で本を売ったり、期待しないで、立ち寄るとそういうのが、つきあい方のコツだと思う。そういうわけで、五木寛之さんの初期短編集を見つけて買って帰った。

 「風の柩」は、おわら風の盆が舞台になっている。1971年11月発表とあり、風の盆を題材にした小説としては、一番早い時期のものになりそうだ。今度読み返してみて、70年代に読んだことがあったのを思い出した。五木さんは、当時、ある非人間的な過去を持った人間が、美しい音楽を演奏することができて、それが人を深く感動させるという場合、その感動とはいったい何なのだろうかという二律背反をテーマにして、いくつかの小説を書いていた。「風の柩」は、そのひとつの変奏である。

 結末が取って付けたようにあからさまで、成功した短編とは言い難いが、八尾を知ってから読むと、地形やちょっと昔の風の盆の雰囲気がすこし感じ取れる。71年は、まだ社会が熱く流動的に動いている感じとシラケというムードと相半ばしていて、どちらに自分が向いているのかまだ分からないという時代だったように思う。そういう時期に、風の盆に視点を見つけるというのは、五木寛之の目が、当時非常に冴えていたということだろう。

 だれかちゃんと風の盆の小説を書かないかな。トラベルミステリーでも、不倫小説でもなく、八尾の人が主人公の小説。「青春の門」のような、大人も子供も出てくる青春小説、ビルディングス・ロマンがいいかもしれない。もちろん八尾出身者が書くべき。

 1月のアサヒカメラの投稿欄に、八尾の石垣でふたりの女子高生を撮影したエロい写真が入賞していた。地元の子なのか、演出写真なのか不明だが、撮影者の欲望のみあからさまで、後味のいいものではない。

8×10の準備

2006年12月24日 | 8×10を始めよう
8×10フィルムフォルダーはとりあえず、TOYO製のものが、3枚手に入った。フィルムは、ACROS20枚入りのものを用意してある。三脚は、大型三脚でなければ無理という人がほとんどで、その方が筋が通っているが、容易に10kgや、15kgという荷物になってしまい、それだけは避けたい。それで、今持っている、中型三脚を、まず試してみるつもり。とにかく最軽量で行きたい。
カメラだけがまだできあがって来ない。昨日タチハラへ電話してみたら、注文が立て込んでいて、この連休も休みをつぶして、仕事なさっているそうだ。わたしが注文した、8×10スーパーワイドは、部品の塗りが上がったところなので、来週組み立てられるでしょうとのこと。
立原さんは、とても丁寧で、的確な東京言葉だ。話しぶりが、誰かに似ている気がするのだけれど、一体誰だろうと考えていた。ふと気がついた。音楽評論家の吉田秀和さんの話しぶりに似ているのだ。

北区上十条3

2006年12月24日 | 街の底で
頂上に登ってみると、もちろん富士は見えない。
その上、新しく、ビルが建設中で、これが完成すれば、永久に富士は見えない富士神社になるのであろう。