表通りの裏通り

~珈琲とロックと道楽の日々~
ブルース・スプリングスティーンとスティーブ・マックィーンと渥美清さんが人生の師匠です。

『宮松と山下』

2022-11-21 16:04:15 | 映画
あの一件(僕は週刊誌の類を一切読まないので詳細は知らないし、知りたいとも思いませんが)以来、めっきりテレビで姿を見れなくなってしまった香川照之さん主演の『宮松と山下』を観てきました。

あの存在感の塊のような香川さんが、端役専門のエキストラの役者役。これだけでも観てみたくなるじゃないですか。多少のネタバレがあるかもしれないので、今からご覧になる方はスルーしてくださいね。

https://youtu.be/SEVEElj-R_g

観終わった結論から言うと、俳優・香川照之に圧倒されました。


オープニングに「これでもか!」と繋がる瓦の画。パンフレットによれば6カットらしいですが、観客は「これから一体何を見せられるんだろう?」と一気に画面に引き込まれてしまいます。

そこから香川さん演じる宮松のエキストラ役者の生活が淡々と描かれていくんですが、全く展開が読めません。『鎌田行進曲』のヤスは大部屋俳優だったので、生活のためにカタギの仕事を持つ宮松と単純に比較はできないけど、劇中(劇中劇)何度も斬られては死んで、違うシーンで衣装を少し変えてまた斬られる。たまにセリフのある役もほんの一言しゃべって「はい、お疲れ様でした」。実生活では、自分の出番のシーンだけ切り取れれた薄っぺらい台本を読みながらカップ焼きそばをすする毎日。なんかヤスと宮松って似た者同士っぽくないですか?

ま、役者の仕事だけ見ればヤスと変わらない(ヤスは銀ちゃんのお守りという、何よりも大切な大役を仰せつかっていましたけど)まさに端役専門。『カムカム』の松重さんが演じた伴虚無蔵は存在感あり過ぎでカッコ良すぎだったので、比較対象外です。

この役をあの香川さんが演じているんですよ!しかも何の違和感もなく。どうやってあの強烈な個性を消していたんでしょうか?淡々とした日々を綴っただけの展開で見せる、香川さんの細かい表情や(劇中劇ではなく)劇中のボソッとしゃべるセリフ。『半沢直樹』シリーズや『るろうに剣心』の武器商人武田、『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』の保安官etc...のような脂ぎった役とはまさに正反対。この振れ幅がスゴすぎてトリハダものです。

物語が動き出すのが半ばを過ぎる辺り。尾美としのりさん演じるある男が登場してから、一層話がどこに向かうのか分からなくなっていくのでした...。

もう一人の主要登場人物を演じた津田寛治さん(さすがの貫禄)、尾美さん、そして香川さん。みんな65年生まれの同い年というのは、制作人の意図があってのものなんでしょうか?この”タメ歳トライアングル”が奏でる静かな演技合戦も見応え十分でした。

そして何より、いつも自然体でナチュラルな魅力を放ち続ける中越典子さんが、この乾いた作品に潤いを与えてくれていたのが嬉しかったです。

ジャンルでいうと何系にハマるのかさえ上手く説明できない作品ですけど、不思議な後味を残してくれる映画です。


過去に香川さんがしでかしたことは(詳しく知らないけどテレビに出れないくらいだから)ダメなことなんだと思います。でもいつかは許されて、また脂こい香川さんが大暴れしている姿が見たい!と思うのは僕だけではないですよね。


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