過去2日に亘ってトランプ大統領のG7拡大の観測気球を考えたが、肝心の日本政府の対応と政界の反応に触れていない。
触れていないと云うよりも、公式な見解を知らないと云うのが実情である。政府の対応としては、官房長官が定例記者会見で「G7の重要性を強調」するにとどめ、茂木外相がTV番組で「アウトリーチ(招待国)の形で招いて議論をするのは意味があるが、G7の枠組みをどうするかは全く別」と否定的に述べたことが伝えられている程度である。一方の野党にあっても、諸事に一家言(無駄口?)ある蓮舫議員を始めとする重鎮も口を噤んでいるようで、野党の反応は窺い知れないが、朝鮮日報のダイジェストで「日本の野党議員、G7は韓・豪を追加してG9に拡大すべき」とする記事を見つけた。野党議員とは、立憲民主党の政務調査会長代理・外交部会会長で衆院外務委員会委員である山内康一議員で、記事を要約すれば、①重要な隣人である韓国とオーストラリアがG9に参加することは日本の国益にとっても良い、➁韓国は経済規模面と人口でG7メンバーのカナダを上回り資格十分、③民主主義や経済発展具合が違うロシアとインドが加われば現在のG20のように利害関係が一致しにくくなる、④今や国力が強まった中国に各国が1対1で対処するのは難しくなっており、民主主義と経済体制を共有するG9として対抗すべき、と主張し、日本の提案により韓国がG9に含まれれば、韓日関係に肯定的な影響を与え、民主主義を共有するG9国が日韓関係の保証人になれば、現在のように両国が合意したのに争うようなことが繰り返されはしないだろうと結んでいる。さらに、「G7に韓国とオーストラリアを追加してG9に拡大するという自身の構想を近く日本の国会で公論化する計画を持っている」ともしており、配信元が朝鮮日報であることを割り引いても相当な力の入れようである。また、記事は、山内議員は「かねてから南北統一は日本経済にも活路となるので積極的に支持している」とも紹介されている。立憲民主党は現在、持続化給付金事業の契約事務と第2次補正予算案の10兆円予備費を最大の争点としており、山内議員の主張が立憲民主党の「公論」にまで昇格することは無いだろうが、韓国を重要な隣人、南北統一を支持、大統領の任期でそれまでの積み重ねを一挙に覆す政体をG7諸国並み、と考える山内議員の外交感覚には大きな不安を感じるものである。
政治の世界では「外交と防衛は票にならない」と云われているためか、与野党ともにG7拡大に対する議論は低調過ぎるように思える。日本の政治・経済は一貫して「G5~G7」の枠組みを軸に構築・発展したのは紛れもない事実であり、その変化を論じることは小さ過ぎるようには思えない。中国コロナ終息後にあっては、中国を世界の工場(下請け)とする産業構造変革の必要性と中華覇権の阻止が西側社会の急務であることを思えば、反中国トラストの必要性は理解できるものの、包囲網に二股外交を国是とする国が加わってはならないように思える。