中国の習近平国家主席の来日(G20)に合わせて訪日を計画している亡命ウイグル人活動家に、政府がビザを発給したことが報じられた。
ビザが発給されたのはウイグル民族指導者ラビア・カーディル氏(米国亡命中)で、「自由インド太平洋連盟」会長とされている。自由インド太平洋連盟は昨年10月に発足し、本部は東京に置かれていると思っていたので、改めて同連盟を勉強した。連盟のHPでは、一般社団法人として東京都文京区に登録されており、会長はカーディル氏、構成員の出自はチベット、ウイグル、南モンゴル、インド、台湾等とされており、日本人も参加し事務局長をも務めていることを知った。活動内容や幹部以外の構成員数を知ることはできなかったが、各種団体と協調してG20開催に合わせて大阪で抗議集会を行うことが告知されていた。カーディル氏へのビザ発給については、中国大使館から発給反対の働きかけがあったとされているが、日本はG20議長国として人権保護の姿勢を示すためにも発給を決定したとされている。この決定は、対中外交としては久々の快挙であると「事なかれ外務省」にエールを送るものであるが、G20という虎の威がなければ果たしてどうなっていたのだろうか。連盟会長であるカーディル氏は、安倍首相の提唱する「自由で開かれたインド太平洋戦略」について、「中国の拡張主義に対する明確な答えだ」と高く評価していると伝えられているが、会長でありながら亡命先である米国在住のまま活動拠点の東京に居を移していないことの事情は不明であり、滞在ビザの発給を政府が躊躇している可能性も捨てきれないのだが。現在中国は、人権や経済で西側の白眼視に耐えている状態と思う。人権では100万人規模のウイグル人を教化施設(政治犯収容所)送りしている疑惑、天安門事件30年で再燃した反体制派弾圧、犯罪人引渡条例で引き起こされた香港の大規模デモ等々であり、経済的には、借金漬による膨張政策が露わになったことで反中とまではいかぬものの中国と距離を置こうとする周辺国の出現で一帯一路構想は鈍化し、対米関税戦争では局面打開のためにアメリカの保護主義を攻撃しようにもブーメランになることは必至で有効な反撃ができない状態である。
四面楚歌にも等しい中国であるが、国際的に唯一存在感と発言力を維持できるのが北朝鮮カードで、訪朝を終えた習近平主席が「北体制を断固支持する」と表明し国連決議による経済制裁破りも辞さない姿勢を見せている。また、中国には、中国人嫌いも、新植民地主義反発も、人権問題も、小さな実績を積み重ねつつ時間をかけて野望を達成すれば良しとする「百年河清を俟つ外交」の伝統があるので、今後起こるであろう中国の媚笑に騙されないことが肝心と思う。外務省も褌の紐を一層引き締めるよう望むところである。
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