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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

極度の貧困を学ぶ

2022年06月06日 | 社会・政治問題

 世界の食料価格が1%上昇するごとに、1千万人が「極度の貧困」に陥るとされていることを知った。

 極度の貧困とは1日1.9㌦(約250円)未満で暮らす場合を指しているらしく、報道された世界銀行の試算では極度の貧困層は7億人弱とされている。現在の世界人口は約80億人であることから、ほぼ1%が極度の貧困層に当ることになる。250円を日本で考えれば、コンビニのおにぎり2個に相当するので生命を維持するのも困難なように思えるが、貨幣価値の異なる国にあっては少し状況が違うのかもしれない。
 賃金と食費の関係を端的に示す場合、世界展開するマクドナルド価格を指標として利用する場合があるのでネットで調べてみると、1位スイス(804円)、33位日本(390円)、57位ロシア(201円)となっていた。このことから見ると、全世界一律に1.9㌦をボーダーとするのは無理があると思うので、もう少し調べてみた。
 前述の世界銀行の統計は、1990年に非政府研究グループと世界銀行が、世界各国の物価データを基に割り出した「購買力平価(PPP)」により設定するもので、1990年の設定時には1日1ドとされていたが、2005年に1日1.25㌦に、2015年からは1日1.90㌦にそれぞれ変更されている。
 また、国連開発計画(UNDP)も貧困を示す指標を持っており、こちらは「保健、教育、所得(生活水準)」という人間開発指数(HDI)の3つの要素を加味したもので「多次元貧困指数(MPI)」と呼ばれており、世界銀行の指数よりも、世帯レベルで複数の形態の貧困がどの程度重なり合っているかをより鮮明に表すとものされている。この多次元貧困指数で貧困とされているのは「MPI貧困層」と呼ばれ、現在では13億人で、ほぼ半数(6億6,300万人)は子供で、さらに4億2,800万人が10歳未満となっていた。
 日本でよく使用されるのは、国連開発計画の多次元貧困指数に近い「相対的貧困率で、総務省「全国消費実態調査」と厚生労働省「国民生活基礎調査」で示されているが、算出方法は難解でとても理解できるものでは無いと匙を投げた。大まかには、所得150万円未満の世帯割合は、国民生活基礎調査では12.8%、全国消費実態調査では7.2%という数字を見つけて納得することとした。

 日本政府は年収150万円未満を貧困のボーダーーとしているように思えるので、自分は何とか貧困層にはカウントされていないのかと安堵したが、よくよく考えてみると、税や各種保険の減免等を考えると、実質的には自分も貧困層と同程度の遣り繰り家計位置に立っていることに気付いた。
 「こりゃぁ、スロットやお絵描きなどにうつつを抜かしている場合ではないぞ」と愕然!。


救命浮舟と民度

2022年05月28日 | 社会・政治問題

 知床観光船の遭難について、国交相が国会で国の責任を認める答弁をした。

 国交相が国の責任とした範囲・内容はよく分からないものの、救命設備の装備や運航管理者の選任や業務に関する法整備とそれらへの監督・監査不備を念頭に置いたものであろうが、それらの全てを厳格に行うことは、云うに易く完全実施は中々に困難であろうと思う。
 救命設備の強化に関しては、最も有効であろうと思われるのは膨張式救命いかだ(以下、救命浮舟)の装備であるが、10人用で1基150万円、現有のFRFRP船体への装備工事費用を考えれば、今回の19トンの船体に2基搭載するためには一隻当たり500万円強の負担となる。また、船舶救命設備規則で救命浮舟は年1回の点検を義務付けられているとともに、数年で搭載品を更新する必要があるために、その負担も中小業者を圧迫すると思えるし、それらの全てが厳格に行われているかを現認調査するためには膨大なマン・パワーが必要となる。
 運航管理者の選任や業務実態についても、全ての事業者に対して国が現認調査を行うことは不可能に近く、救命設備の整備状況ともども書面審査に依らざるを得ないように思える。
 今回の事故の最大要因は、企業と経営者の順法精神欠落と利益優先の思考であると思っているので、それらの要因が改善されない限り法の厳格化のみでは同種事故を根絶することはできないように思える。
 これまで日本は、朝野を挙げて許認可廃止・規制緩和によって誰でも少額の資金で起業できる社会を目指していたが、それは日本国民の全てが「善人」で「責任を負う人」であることを前提に語られていたように思う。そのことから云えば、法の厳格化は初期費用と企業運営費を押し上げるために、新規参入の抑制と負担に耐えられない小規模事業者の淘汰に繋がって、目指していた社会とは方向を異にする一面があるようにも思えるが、善人で無い経営者が出現した以上、やむを得ないものであるかもしれない。

 明治維新以降の急速な洋風化・過度の利潤追求の世相に対して、士魂商才若しくは和魂商才なる造語で揺り戻しが図られたとされている。
 今回の経営者にとどまらず、大企業に課せられた負担を逃れるために中小企業に衣替えした毎日新聞、コロナ対策に異を唱えて提訴した大手外食産業・・を見ると、商才よりも重んじるべきとされた和魂、士魂の美風は失われてしまったように思える。
 国の責任を問うことは重要かつ簡単であるが、故石原慎太郎氏が常用した「民度」の涵養の方が、より急務に思えるのだが。


寒々しい話題

2022年05月21日 | 社会・政治問題

 北九州市でタバコのポイ捨てを繰り返した50代会社員が書類送検された。

 ニュースでは、検挙に貢献した清掃ボランティアの男性(74歳)に感謝状が贈られたことにスポットが当てられており、男性は3年間も道路の清掃活動をされているとされている。
 ところが、1年ほど前から同じ銘柄の吸い殻が同じ場所に大量に捨てられているのを発見した活動家が、手製看板や拾った吸い殻を集めたペットボトルを置いて注意喚起したものの、改善されないために警察と協力して「犯人」を特定したとされている。
 ボランティア活動家の行為は、将に美談でホッコリさせられるが、寒々しいのは送検された50代会社員がポイ捨てを続けた動機を「誰かが吸い殻を片付けていることを知ってから、(ポイ捨てに)開放感を感じた」と述べていることである。
 2002(平成14)年に東京都千代田区が、ポイ捨てを含む路上喫煙防止条例を施行したのを皮切りに、現在では、略全部の自治体で同種の条例が施行されているものと思っている。社会の底辺に生き、かつ禁煙2時間が限度の自分でも、外出時には公設の喫煙所を探したり、ホテルの喫煙所に駆け込んで凌いではいるものの、切羽詰まって禁煙区域以外で已む無く携帯灰皿に頼ったこともあるが、近頃は吸い殻を捨てようと思ったこともなく、ましてや清掃する人に「ざまァ見ろ」的な解放感を持つことはない。
 件の50代中年の動機からは、常人には理解できない闇が窺い知れるものであるが、余程のストレスに晒された日常を送っているのだろうと一部で同情を覚える反面、何とか直して「必死にルールを守っている喫煙者の顔に泥を塗らないで欲しい」と願うものである。

 ドクトル・マンボウ北杜夫氏は著作の中で、「原因不明の症状が出たら大学病院に行け。治療法は分からなくても病名だけは付けてくれる」と笑わしているので、50代会社員の行為も1種の病気で、それも大学病院で受診すべき病であるのかもしれない。
 一部のボランティアの独善や押し付けに鼻白むケースもあるが、暑熱・寒風を厭わずに奉仕される人に対しては、敬意を払うべきであろうと改めて思い知らされたニュースであった。


阿武町誤送金と「ten minute standby」

2022年05月19日 | 社会・政治問題

 山口県阿武町の新型コロナ給付金4,630万円の誤振込み事件で、返金しなかったT氏が逮捕された。

 世の中の大勢は逮捕されたT氏を糾弾しているが、誰でも市役所から5千万近い金が振り込まれたら一瞬「生涯で二度と起こらないであろう。自分のものにできないか」と考えるに違いないと思っている。
 確かに、10日間のうちにネットカジノで全額使い果たしたとするT氏の行動は犯罪であろうが、恬として被害者然と振舞う町長・役場幹部にも『?』を感じる。
 これまでのT氏の素行・性向については報道以上のことは知らないが、誤振込みが無ければ、T氏が逮捕されることも残りの人生に汚点を残すこともなかった可能性がある。そう考えれば、町役場は5千万円の公金を失う以上に、1人の善良な町民を犯罪者に貶めるとともに残りの人生を奪ったことになり、公費の損失挽回の責任以上の道義的責任を表に出してもらいたいと思う。
 補給艦で米軍艦船に燃料の洋上補給をした。
 自衛艦への給油は、各艦からの請求量が極めて正確であるために請求量の全量を補給艦が主導して給油するが、米艦の請求は大雑把で7~8割方給油した時点で受給終了を告げられることも茶飯事であった。そんなこともあってか、米軍では海自と異なり受給艦が給油作業をコントロールする遣り方である。給油終了時の予告については海自艦には補給艦から「送油終了〇分前」と予告するが、米艦では受給艦が「ten minute standby」と予告してくる。勿論、大雑把な米艦であれば10分前ではなく予告直後に「ポンプ停止・受給終了」とされる場合も度々で、予告の真意は「そろそろ給油を止める準備をしろ」であると理解していた。

 今回の阿武町の誤振込みの原因は、役場の会計担当者が振込手続きをミスしたことは明らかとされている。今後、町役場で再発防止のルール作りや手続きの見直しが行われると思うが、各担当者が一連の書式を整え終え「enter」キーを押す前に、「ten minute standby」と自分に予令・予告することを心掛けてはいかがだろうか。
 「作業の終末に来ているが、間違いはないか?。指示された内容に合致しているか?。」を自問し見直しを促す標語として、「ten minute standby」は洒落たフレーズであるように思えるが。さて


沖縄復帰50年に思う

2022年05月15日 | 社会・政治問題

 今朝のフジテレビで在沖米軍基地に関する討論があった。

 番組の冒頭で、「在沖米軍基地縮小のために本土も米軍基地を負担すべきか否か」でdボタン投票を求めたが、賛成(負担すべき)との意見は70%を超えた。
 以前にも、
・在沖米軍基地を最低でも国内移転と公約した民主党が多くの支持を得て政権の座に就いたものの、受け入れを打診した全ての自治体から拒否され基地移転は霧散してしまった。
・艦載機の夜間離発着訓練(タッチ&ゴー)の騒音に悩む厚木市民の有志が移転候補地の三宅島住民に、受け入れを懇願する映像が報じられた。
・新屋演習場へのイージス・アショア設置計画については、秋田県知事以下の声高な反対で、計画は白紙撤回に追い込まれた。
 米軍・自衛隊基地に関する他にも、火葬場、ごみ焼却場、・・・の建設計画に対しては、住民の反対で頓挫することも珍しくない。
 反対する自治体・住民共に、計画・施策の意義と必要性は理解しているものの、自分の近くには反対とする、いわゆる「総論賛成・各論反対」が現実であるように思う。
 この歴史と現実を見ると、番組冒頭のdボタンで賛成した人も、「では貴方の住む地域に米軍基地は?」と問いかけられたら、別の数字が出ることは確実であるように思える。

 沖縄が返還されて75年が経過したが、若干の改善はあったものの依然として沖縄は戦後を引きずったままである。さらに「地球語の通じない中国の横暴」から在沖米軍の軍事力・抑止力はこれまで以上に重みを増している。
 歴史に「If」は有り得ないが、もし政府指導者が「自衛隊は戦力に当らない」・「非核3原則」」等のまやかしの政治決着(政治的取引)をせず、国民が憲法改正を含めた国防について真正面から真剣に討議・結論していたら、日本と沖縄の現状は大分違ったものになったであろうと思わざるを得ない。
 ロシア軍は既に精密誘導兵器を使い果たし、着弾(散布)範囲100m内外の旧式ロケット弾を多用しているとされるのでウクライナ市民の被害は更に拡大することが懸念されている。
 いま、漸く「専守防衛は本土が戦場」、「侵略国はハーグ条約など顧慮しない」ことが理解されつつあるものの、未だ世界中の国と対話共生できるとの信じる人も多いが、日本の将来を真剣に考える時期に来ていると思う。