another Beatle

フリースタイル、且つ、創造的。(これが、理想ですが--)

蹴りたい背中---綿矢りさ---芥川賞の作品やっと読みました。

2008-11-16 23:00:03 | Weblog
30年に一度くらいの大ヒットらしいです。石原慎太郎氏「太陽の季節」、村上龍氏「限りなく透明に近いブルー」それほどのベストセラーだそうです。

「インストール」を少し前に読みましたが、この作品も高校生が主人公です。学園物です。ただそれだけの枠には当然はまってない作品でした。状況が高校だけで、著者の視点はものすごいところにあるのでしょうね。大それたことは言えません。

正直言って、ラストを読み終えた時には、泣きたくなる位感動しました。
泣きたくなるような感動は、書籍の場合はあまりない気がします。
テレビなどでは、結構涙腺が緩みやすく、すぐ泣けたりすることはありますが、
本を読んだ後にというのは、まあ少ないですね。

誤解を恐れずにいうと、私の場合は「限りなく透明に近いブルー」のラストの章を読んだ時と同じ位の感動でした。こんな感動は、多分ショックに近い感動なんでしょうね。

「インストール」と同じく主人公の女子高生は内向的、幾分、環境にそぐわない性質、悲しいかな、アウトサイダー的な存在です。
悪く言えば、はみ出し者。かと言ってモラル的に常軌を逸してるわけでもありません。我々と同じ普通の人間です。普通の人間で、他の人間に交われきれない面があるので、共感を呼ぶのでしょうか?(ここも誤解を恐れずに言います。)

その主人公の、同じクラスの、少しオタク系の男子同級生とのcommunicationが、この小説の中に描かれています。

男子学生は某モデルの大ファンで、主人公の女子高生が昔そのモデルと会ったことがあるということだけで、その女子高生に近づいて行きます。

「インストール」でもこの作家のストリー作りの旨さが印象に残りましたが、今回も、この筋はナカナカなものだと思います。もちろんストーリの稀少さだけでは、いい小説は完成しないと思いますが、この骨組みには唸ってしまいます。

女主人公は本当にマニア的なこの男子同級生に半ば呆れ(この表現は的確ではありません。気になる人は小説を読んで下さい。)、ラジオ番組に出ているこのモデルに、現を抜かし、座り込んでラジオを聞き込んでいる彼の後ろ姿、背中を見て、蹴りたくなります。そして実際に足で蹴り飛ばします。
これが一回目の女高生のこの小説の中での蹴りです。

もうひとつの蹴りに至る(?)描写はラストの章です。
ラストの章を読んでいる時、村上龍氏の限りなく--のラストの章を思い出していました。
全然内容は違うのですが、夜から朝にかけての描写がとても印象的でした。
限りなく--もそうでしたが、夜から朝の描写が、ラストの章に盛り込まれていました。ただ同じ場所に同じような描写を持って来ても、それが必ず人の心を動かすとは、勿論思えません。著者の総合力のなせる業でしょう。

100万以上の本が売れたというのはやはり、この作品の良さの証明なのでしょう。龍氏の作品はセックス、ドラッグetc,アグレッシーブなアプローチでしたがこの小説はまるで反対、そんなもの一切なし。だから感動したなんて勿論言いませんが、感動のパタンは結構あるんでしょう。
コメント (7)
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