another Beatle

フリースタイル、且つ、創造的。(これが、理想ですが--)

長距離ランナーの孤独/アラン・シリトー

2011-09-25 00:42:59 | Weblog

 

 

 

大分前に読んだこの小説をもう一度読みたいと思ったのは                 

去年アランシリトーが死去したというニュースを

新聞で見たからです。(もう大分前ですが)     

 

長距離ランナーの主人公が感化院でのレースで

最後に自ら一位になれる

可能性をすてて敢て優勝を避けるというストーリーが

ずっとこころの中に残っていて

もう一度小説の全体を確認したかったのです。

 

 

読み返してみて思ったのは主人公のランニングの最中の

心理描写が小説の半ば前に描かれていて

少し意外でもあり印象に残りました。

こんな場面もあったのだと。

 

時間を前後して小説では

主人公が感化院に入ったきっかけとなった事件が

描かれていました。

主人公とその友人が金を盗んで

主人公が警察ににらまれ

毎日のように警察が主人公の家に張り込み

主人公の母親が警察に

自分の息子は犯人じゃないと

毎日来る警察に訴える訳ですが、

ある日主人公が盗んで

雨樋の中に隠していた金が、

得意そうに自分の無実を

しゃべくりまくる主人公の前で、

雨で徐々に流されて出てきて

それが張り込みの刑事の目に留まり

捕まってしまい感化院に

入れられてしまうというのは

少し可笑しかったですね。

以前「地下室のメロデー」という映画で

次のようなラストシーンがありましたが、

もしかしたら、この小説からヒントを得たのでは?

と思えるようなシーンがありました。

 

主人公の二人が盗んで隠しておいたお金がーー。

 http://www.youtube.com/watch?v=aWJHXR_dmhI

 

 

ただ小説としては単純なストーリーだと思いました。

それでもマラソン大会で

感化院代表の主人公が感化院の

長の気持ちを知っていながら

敢てラストゴール前で立ち止まり

一位にならないというのは

どう考えてみても凄い反逆の行為なのでしょうね。

 

映画「長距離ランナーの孤独」での山場のシーンです。

 http://www.youtube.com/watch?v=2clycHxl3Mw&feature=related

 

小説で符号するのはこの箇所です。

今や観客席では紳士淑女連中が叫び、立ち上がって、おれに早くゴールへはいれと

さかんに手を振っているのが見える。「走れ!走れ!」ときざな声でわめいてやがる。

だがおれは、つんぼでめくらで白痴のようにその場に立ったきりだ。まだ口の中では木の皮を噛み、

赤んぼみたいにおいおい泣きながら立ちつくしていた。とうとう奴らをやっつけたことで、

嬉し泣きに泣けてきたのだ。

 

(集英社文庫・アラン・シリトー・長距離ランナーの孤独/丸谷才一・河野一郎 訳より 引用)

 

 

 この作家は小学校を出てすぐに工場労働者として働いていた

 貧しい人でしたが、小説の中の描写は飾りがなく、最も内面に近いところでの

正直な心理描写に、この人の強みを感じました。

 

 

 

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コメント (2)
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