玄文講

日記

光速を超えて

2004-12-02 20:34:36 | バカな話
(余談)
物理には光速度不変という原理がある。あらゆる物質は光速度を超えることができないという原理である。
しかしエネルギーや質量といった「情報」を伝えなければ、光速度を超える現象は許される。
例えばドブロイ波の位相速度は光速を超えるが、それは粒子速度ではないので許されるのである。


閑話休題


フィジカル・レビューやニュークリア・フィジィクスといった学術雑誌があるのだが、皆さんはこれの値段がいくらくらいかご存知だろうか。
その年間購読料は何と最低でも100万円を超える。年間200~300万円くらいが学術誌のために使われることもあるらしい。


もちろん広辞苑みたいに分厚い本が毎週送られてくるわけではない。月に一度薄い冊子が何冊かくるだけである。この値段の高さは単に需要と供給の問題でこうなっているのである。


ところが最近、ネットの発達により学術誌を購入しない研究室が増えている。例えばこのサイトはhepといって、ほとんどの理論物理学者は自分の書いた論文を学術誌に投稿する前にこのサイトにのせている。理論物理学の最近の動向はこのサイトを見ていれば雑誌を買わずとも把握できるのである。そしてこのサイトは無料で閲覧できる。

また論文だけではなく、自分の書いたテキストや講義録をここにのせる場合もある。下手な教科書よりもはるかに詳しいテキストが無料で手に入るのである。

他にも論文を無料で紹介しているサイトはいくらでもある。
http://www.yukawa.kyoto-u.ac.jp/spires/hep/

これに慌てた学術雑誌の出版社は色々と対策を立て雑誌の売り上げを維持しようとしているらしいが、無料と100万円ではあまりにも分が悪い戦いである。

このネット上にアップされる論文量は年々増加している。気楽にアップしたり訂正できるので、雑誌に投稿するほどでもない論文や、完成していない論文をのせる人も多いそうである。
ある人はこんなことを言った。

「もし今のペースで論文が増え続けるとしよう。するとネット上に出されている論文を全部印刷して積み上げていくと、10年後にはその山の上昇速度は光速を超えてしまう。しかしそれは物理的には何の矛盾もない。何故だか分かるかい?」

「何故なら、その論文は何の『情報』も持っていないからだよ」