![]() | 功名が辻 1 (1)文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
出だしはどうなることかと思いましたが、さすが大石静女史、後半の盛り上がりは見応えがありました。
前半は、一豊の告白を巡り、どたばたする周辺の人々を描いたホームドラマ仕立てでした。千代が特別な存在故に、すべてを話さねば気が済まなかったとのたまう一豊殿。当日の様子を事細かに報告する姿には哀れみを覚えました。まさか、全部喋っちゃうなんて・・・と思ったら、さすがに小りんが間者だったことは秘密にしていましたね。それだけの配慮ができるのなら、もう少し「嘘も方便」てやつを使えよ、といいたくなりました。
しまいには女房に家出されておろおろし、新右衛門の娘達の失笑を買う始末。しっかりしてよ、旦那様・・・
その緩んだ空気を一転させたのが陣ぶれのほら貝の音。時に元亀元年六月、織田・徳川連合軍は近江姉川で、浅井・朝倉連合軍との戦いに臨んだ。世に名高き「姉川の戦い」です。このとき、数の上では劣勢であった浅井の精鋭部隊が織田13段の備えのうち11段までを打ち破る猛攻を見せたという説もあって、そこらあたりがどう描かれるのかな、と興味があったのですが、あっさりと一豊様が落馬してしまったため、合戦場面はそこで終わり。少々、物足りない感じがしました。
合戦後は、行方不明となった一豊を巡る、人々のそれぞれの思いが描かれていました。夫の出陣に間に合わなかった事を責める千代は出家する決意をし、新右衛門は殉死を考える。そんな中、主人秀吉の態度が気になりました。生死が定まらないうちに「一豊の弔いをしろ」というのは、中村一氏の言うように遺族の将来を思っての優しさか、それとも堀尾吉晴の感じたように冷たさなのか。秀吉という人物の一端が透けて見えたようでした。
まあ、何にしても、一豊も帰還してやれやれ、次に続きます。